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我々が『戦術動作』に目を向けるべき理由

ご存知の通り、近年トレーニングの方法は溢れかえっている。
トレーニングに関心のある方なら分かると思うが、SNSに少し目をやれば毎日膨大な数のトレーニング方法が投稿されている。
(中でも日本のメジャースポーツであるサッカーと野球は”発信者”が多い)

皆さんはこの状況をどのように感じているだろうか。
特に選手や指導者の方々。

「こうすれば〇〇ができるようになる」
「サッカー選手が身に着けるべき正しい走り方」
このようなタイトルのついたトレーニングで本当にそれが実現できただろうか。




トレーニング方法の氾濫時代における振る舞い

無料でたくさんのトレーニング方法が知ることができて助かっている、または以前よりもよりトレーニング効果が向上したと言えるだろうか。無料で公開されている程度のトレーニング方法にどれほど”効果”が期待できるだろうか。

とにかく無料で方法だけ知ることができれば良い、今の傾向に何の違和感もないと言い切れる方はこの先を読み進める必要は全くない。

誰でも『トレーニング方法』を発信できて情報が溢れかえっている状況に嫌気が差している、危機感を持っている、違和感がある、どのトレーニングをやれば良いか分からない、何を誰を信じたらいいかわからなくなっている、そんな方には絶対に読み進めていただきたい。
*ボディメイク系のトレーニングではなくパフォーマンス向上のためのトレーニングを対象とした考察であることを前提とする



まず数年前と比較してトレーニングの『方法』に関するSNS投稿は明らかに増えた。
具体的な数値はここでは特に重要ではないから調査まではしていないが、ここに異論のある方はほぼいないだろう。とにかく、、増えた。



かく言う私自身も2017年ごろからインスタでトレーニング動画の投稿、最近ではYouTubeでのトレーニングの発信者ゆえ、これらは私にも当てはまる。
当初から文言には非常に注意を払ってきたつもりではあるが、やはりトレーニング動画の氾濫の一部であることは否定できない。
なので下記の考察は自分自身も含めたものである。(もちろん解決策も提示する)
動画いや”方法氾濫時代”における問題は読者各々が感じていると思われるので全体としての網羅はしないが、私自身が感じている問題をいくつか考察しようと思う。




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方法依存の末路

方法が過剰に供給される状況では、「何をやればいいのか分からない」という問題を生み出す。その先に起こるのが「誰を信じたらいいのか問題」。これはすでに起こっている。
誰もが発信者であり考案者になることが可能である前提において最も危惧されるのがこの部分である。
この点に関しては非常によく相談を受ける。(私も含めて誰も信じるな、自分で考え抜いて納得できる方法を選ぶように伝えている)
発信者の全員が「これが正しい方法だ」と言えてしまうし発信者自身は本当にそう思っている。
ちなみに私のこれまでの経験上、「正しい」を安易に使う人物は要注意である。
「正しい」を定義しないトレーニングの危険性



「正しい」は立場や思想、時代などの前提条件次第で常に変わり得る。
本当に正しいのかは常に繊細かつ慎重に議論されなければならないし、正しいを作ることによって必然的に生まれる「間違い」は本当に排除されるべき事柄なのかも同様である。




みんなが方法を追い求める。
それに反応するように方法の供給量が増える。
媒体(SNS)の拡大によりクオリティ(信頼性)低下と過剰供給が起こる。
誰でも“サッカー選手が絶対やるべきトレーニング”を発信できてしまう。
選手からしたらたまったもんでない。




トレーニング方法の膨大化は、決してスポーツ界の良い成長には繋がらない。むしろトレーニング界とスポーツ界の乖離を生む。
10年近く前にJARTAを作った頃からの危惧がどんどん現実になってきている。
多くの人が『方法』に目を奪われてきたことがこの状況を生んでいる。
多くのメディアが方法の紹介に重きを置き、多くの人がそれに”反応”してきた。
我々はまだ方法に目を奪われることを続けるのだろうか。
”方法依存”をまだ続けるのだろうか。
私はそろそろ方法から『選択能力の向上』にシフトチェンジする必要があると考える。

その必要があると思える人に向けてこの記事を書いている。




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選択肢が多いことによって生じる責任

選択肢が少ないフェーズでは選択肢が少ないことそのものが問題点であり、選択肢を増やそうという努力が行われる。
それは正常な発展ベクトルであり選択肢を増やしていく中で優れた選択肢が発生してくる。つまり進化にも寄与する。
それは一定期間は”正の変化”であるため、選択肢を増やすことに主な努力が置かれることは良しとされ結果選択肢は増え続ける。
選択肢つまり『方法』が増え続け、”適正量”を超えた時、大きな転換が生じる。
これはトレーニングを提供する側、実施する側の両者にとって生じる変化である。


その変化とは”選択能力への依存度が増える”ことである。
数ある方法の中から、何をどんな理由で選ぶのか。優先順位や組み合わせは?
それらを目的に合わせて最適化するのが『選択能力』である。
これがメリットになる指導者や選手もいるだろう。しかしそういった”感覚”や知識を持たない方にとってこれは甚大な影響をもたらすデメリットである。


要素(選択肢)が多すぎると人は思考を放棄するようになる。
つまり自分で選ばなくなる。自覚なしにだ。

有名な選手がやっているから。
強豪チームが導入しているから。
テレビや書籍で紹介されていたから。
最新のトレンドだから。
海外で流行っているから。
”専門家”が「正しい方法」と言っているから。


これらは全て”選んだ理由”として成立しているように見える。
しかしこれらは自分で選んだと感じるかもしれないが、本質的には全て他者依存である。他者の選択に追従しているだけだ。
大切な選手たちの努力の方向性を決定づける根拠として本当にそれで足りているか。

専門家でなくとも少なくとも提示されたトレーニング方法が目的に合致しているかどうかの大枠程度は判断できるようになるのが選手に対する責任ではなかろうか。



戦術動作インスタ/note用2.005

方法依存からの脱却

私はそろそろ『選択能力の向上』にシフトチェンジする必要があると考える。
トレーニング方法をたくさん集めるのではなく、選択できる能力を養う。
方法依存からの脱却。
今の社会の状況は間違いなく選択能力の向上へのシフトチェンジを要求している。
数多ある方法の中から、目的に到達するための『自分の選択』ができる能力を養う。
特に指導者側にそんなシフトチェンジが必要ではなかろうか。
それを叶えるために私が提案したいのは『動きの構造』について学ぶことである。
戦術を実行するために必要となる動きのことを『戦術動作』と名づけ、戦術動作を通して動きの構造を学んでいただける講義プログラムを作ったので、選択能力へのシフトチェンジの重要性に共感していただいた方はぜひご参加いただきたい。



戦術動作インスタ/note用.001

サッカー戦術動作アプローチ

https://jarta.jp/soccer-approach/https://jarta.jp/soccer-approach/
チームとして実現すべき戦術を実行するための動作構造を『戦術動作』と名づけ、戦術動作の理解を通して戦術実行レベルの向上につなげるための学習プログラム。トレーニングの方法はほぼ出てこない。大半の人が方法を求める風潮の中、どれだけこの意味が理解されるのか分からないが。。
指導者は、選手を守るために、選手の努力を守るために、”専門家”以上にあなたの戦術における身体の動きの構造に詳しくなる決意をしなければならない。
これはサッカー指導者のための『フィジカルの取り扱いマップ』である。



問題をいくつか考察すると書いたが、長くなったのでまた次回。

次回:全体とパーツの”一方通行な”関係



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全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 
YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:https://twitter.com/nakanobodysync

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1980年生
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
株式会社JARTA international 代表取締役

JARTA
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