スポーツドクター向け身体操作の講義@横浜市大医学部
10月8日、横浜市大医学部にてスポーツドクター向けの講義を実施した。
約30名のスポーツドクターが参加してくださり、姿勢の崩れや運動構造の話を実技を交えて2部構成での3時間。
私のバックグラウンドは理学療法士なので、ドクターからレクチャーを受けることはこれまでも多々あったが、こちらが正式に講義する立場になることは非常に稀だったので、今回のような機会は自分自身にとっても非常に貴重なものとなった。
スポーツドクターとトレーナーそしてフィジカルコーチの連携は、スポーツ選手の身体面をサポートする上で欠かせない。
一言で連携といっても単なる情報や知識の共有では、実はそれは真に選手を支えるサポートにはならない。
本当の意味で連携をするには、お互いが”自分の領域”では理解が不十分な部分すなわち自分ではできないこと、そして相手にできることを理解することが前提となる。
そういう意味で、今回の講義内容とした『競技/運動構造』という観点の提案は一石を投じるものとなったのではないかと感じている。
『構造』とは私が選手のパフォーマンス向上をサポートする上で重要な武器となっている観点である。
→構造をスポーツに活かすための講義やります
構造という観点を紐解いていく上での対象競技として、サッカーの競技構造を(一部ではあるが)解説し、ハムストリングス肉離れからの競技復帰と再発における問題点を提示した。
肉離れの再発(しかも複数回)は、サッカー界で長らく問題となり続けている。
防止方法は論文などでも数多く提案されているにも関わらず、である。
こういう時は方法ではなく『全体としての構図』に問題があることが多い。
つまり「肉離れ発生」「リハビリ」「競技復帰指標」「再発」という”単体”で考えるのではなく、それぞれの影響関係そのものを対象とする必要があるということを意味している。
私はこのようなケースで悩む選手たちへの身体操作サポートを通じて、この”再発スパイラル”から脱出してもらえた経験を少なからず持つため、その際に用いたロジックを交えて解説した。
怪我をした選手に対してドクターが診察をする際、画像所見など様々な指標を用いる。
その際に『サッカーの競技構造』および『サッカーの競技動作の運動構造』を理解していることで、どのような動きのパターンが要求される中で(それができずに)受傷したのが見抜けるようになる。
競技復帰の判断に際しても、各種指標に加えてどのような『動き』を獲得(詰まり受傷前以上の動作改善)する必要があるのかを”知っている”ことは、必ず再発防止に役立つ。
これらの視点へのスポーツドクターたちからの理解が進むことで、怪我やその再発に悩む選手が少しでも減ることに貢献できると信じている。
そしてスポーツ界全体としてこのような観点が一般的になることの一助になればと思う。
今回の講義を進める中で、これまで以上にはっきり認識できたことは、
スポーツドクターや理学療法士(メディカル領域)とスポーツ現場を結ぶ『動きの再学習を専門的に行う場』が圧倒的に不足していることだ。
怪我からの競技復帰後の再発を防ぐためには、”怪我前の状態”に戻ることがゴールでは不十分だ。
怪我からの復帰に際して再発の可能性を極限まで抑えていくためには、競技復帰の時点で『怪我前よりも良い動き』ができていることが必要である。
スポーツドクターが介入できる部分ではないことは承知の上だが、『再学習の必要がある』という指示は是非ともやっていてだきたいと思っている。
最後に。
今回の講義を企画してくださった横浜市大の川端ドクター、片山ドクター、そして3年前に急逝された今井ドクターに心より感謝いたします。
生前の今井ドクターの想いに報いるためにもこれからも頑張ります。
ありがとうございました。
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