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日本人がやるサッカーは西洋人力士の相撲

私が前提条件を重視する理由は、「スタートラインの位置」を教えてくれるからだ。

それぞれの持つ前提の違いによって、スタートラインは変わる。
スタートラインがすでに相手より後ろにあるのに、相手と同じことをしていては勝てるわけがない。誰でもわかることなのに、前提に目を向けない限り、このことに気付きにくい。

 ***

さて改めて前提条件。

これは試合で本来のパフォーマンスを発揮したり、パフォーマンスを上げていくために非常に重要だ。これを外すもしくは軽視すると、せっかくの努力が成果につながらない”大きな理由”になってしまう。

例えば、初めての試合会場のピッチの状態を考慮しないチームと考慮して準備したチームでは、試合で発揮できる”本来の力”は大きな差が生まれる。

前提条件は大きく分けて2つある。

1つは変動前提。
上記の、試合のピッチなどは、試合会場よって変わる前提条件だ。
パフォーマンスに影響を与えるけれど、変動する、つまりその都度確認しなければならない前提のこと。こちらはよく知られていると思う。

 2つ目は不変前提。
どこで試合をやろうが、誰と試合をやろうが変わらない前提を意味する。
誰がその競技を作ったのか、その国の文化の特徴、誰が作った競技を誰がやるのかなどだ。

日本人は、重心の高い西洋人が力士になるために相撲部屋に入って低重心の動きを身につける景色に違和感をもたないと思う。

「相撲だから重心下げるの当たり前よね」
「重心下げないと相撲強くなれないよね」

そして、その力士が弱かったら、

「やっぱりまだ重心が高いわ。いくら体重あって筋力あっても相撲は重心高いと勝てないよね。」
「そもそも重心高いから大変だろうな。」

などの感想をもつ。

なのに。

自分たちが高重心スポーツであるサッカーをやるとき「サッカーだから高重心作るの当たり前よね。だって俺ら基本が低重心だから高重心はめっちゃ念入りに作り込まないとね。」

とはなってこなかった。

高重心の西洋人力士が低重心習得に苦労するのと同じように、我々日本人が高重心を獲得するのにはかなりの苦労を要する。
そしてそれと同時に、「日本人がやるサッカー」が「腰高の西洋人力士の相撲」から抜け出すために不可欠な要素だ。

日本人は技術があるからそれで勝負。
日本人は俊敏性があるから習慣的な間合いやフットワークで勝負。

一面としてはそうかもしれない。
しかしこれらは「低重心の世界」での話。

サッカーに関わらず、高重心スポーツの全ての技術は「高重心を前提として」形成および体系化されている。それらの体系の中に「低重心の選手を高重心にする」というシステムはない。

いくら技術があっても、その直後の動きや対人という状況、視野など考えると、全て高重心が前提にないとうまくいかない。そういう意味では「日本人は技術がある」は実はサッカーの構造から逸脱した話になる。

この話の流れにおいてわかる不変前提。
①サッカーは高重心スポーツ
②日本人は低重心
③【日本人がサッカーをやる】=【低重心が高重心スポーツをやる】

こういった理由から、不変前提によってトレーニングつまり身体や動きを作る方針が変わる。

どんな要素を鍛えるべきなのか。
どのように鍛えるべきなのか。
どのようなことに注意しながら練習すべきなのか。

トレーニングの意味そのものが変わる可能性だってある。

イタリア人に柔道のトレーニング教えるときは、低重心を教える。

***

ここまでの話は、”前提”であり、ルールではない。
ルールはある程度以上は知らないと競技できないけれど、

前提だから、知らなくても競技はできる。しかし、前提を知らなければ的外れになったり負けたりする確率は上がる可能性がある。 

裏を返すと、前提を知っていることでその競技における身体や動きづくりのポイントはズレにくいし、負ける確率を少しでも減らせ得るのだ。



全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 

YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:https://twitter.com/nakanobodysync

1980年生
たくさんのプロアスリートたちに身体操作を教えています
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
株式会社JARTA international 代表取締役

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