最高裁、「給料ファクタリング」なる債権譲渡について、その内容から貸金業法及び出資法の貸付けに当たると判断

給与ファクタリングなる取引について最高裁判例が出る

債権を早めに現金化するファクタリングは様々な場面で行われていますが、それを労働者の賃金について行おうとした「給料ファクタリング」なる取引について、貸金業法及び出資法違反に問われた事件で最高裁が上告を棄却し、有罪が確定しました。
最決令和5年2月20日

本件判例の要旨

この件の意義は、債権譲渡なので貸金業法や出資法違反でいう貸付けに当たらないのではないかという点について最高裁が判示をしているところです。
債権譲渡は要するに売買なので値付けは自由ですから、債権の価値よりも割り引いても貸付けには当たらないと思われるのですが、最高裁は本件のスキームと労働基準法24条に関する判例の2点から、これは貸付けに当たると判断しました。

スキームの特徴と最高裁の理由付け

本件のスキームの特徴というのは、会社に債権譲渡の通知をするか、通知を留保して労働者が買い戻せるように留保するかを選べるとしていた点です。
そして、判例というのは、有名なものですが、最判昭和43年3月12日民集22巻3号562頁で、要するに、賃金債権の債権譲渡を受けても譲受人は使用者に支払いを求めることは出来ないということを判示したものです。
この判例があることや、体裁などの事情から、通知を留保して労働者が買い戻せるという方を選択していた例しかなかったとのことで、これは債権譲渡ではなく、貸金業法及び出資法でいうところの貸付けにあたるとしたという判断になります。
出資法が出てくるのは、本件では出資法の制限を超える利息を取っていたことになるためです。

本件判例の意義

結論は異論ないところであろうと思いますが、基本的な判例が改めて大きな意味を持っていることに気づかされる事例だと感じます。
なお、上記のとおり、本件の結論はこのスキームの特徴に負うところが大きいことにも注意が必要です。
給与のファクタリングすべてがすべからく違法というわけではないことにも留意が必要でしょう。


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