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【創業65周年企画】72歳の役員がいま社員に伝えたい思いとは?

日本ベネックスは1957年10月1日に創業し、65年の歳月が経ちました。長崎の小さなものづくり工場から始まったわたしたちは、時代の荒波をどう乗り越え、どう未来を拓いていくのか。創業100年に向け、持続的な成長をするためのヒントを探るべく、当社の歴史を長く知る、田主松(たしゅまつ)常務取締役に話を聞きました。まずはこんなお話から。

(取材・編集:社長室)


1.努力は夢中に勝てない

常務取締役の田主松(たしゅまつ)さん

――:
「創業から65年を迎えたいま、社員へ伝えたいこと」をテーマに話を聞かせていただきたいです。

田主松:
そんな大それたことないよ。

――:
まず、日本ベネックスに入社されたのはいつですか?

田主松:
30歳。いま72歳だから42年前か。長いですねぇ。

――:
入社のきっかけは?

田主松:
東芝で働きはじめてずっと横浜にいて、28歳のときに長崎へ戻りました。30歳のとき、たまたま「小林製作所」(日本ベネックスの当時の社名)の求人票を見つけて、応募したのが始まりです。

――:
なぜ応募しようと思ったのですか?

田主松:
募集していたのが「生産管理」の仕事でした。わたしは設計者でしたが、設計の仕事に飽きちゃってて(笑)。生産管理は、おもしろそうだなと思いました。

面接へ行くと、いまの相談役(当時は専務)が「明日からこい」って‥‥(笑)。

――:
明日から(笑)。入社当時、会社はどんな雰囲気でしたか?

田主松:
当時の社長はすごく厳しい方で、社内はいつもピリピリしていました。事務所も製造現場も黙って脇目も振らず「シーン‥‥」と作業をしている。

「息が詰まるなぁ」と思いましたね。

――:
たしかに。

田主松:
ある日、事務所でみんなに声をかけたり、冗談を言ったりして賑やかしてたら、階段からものすごい勢いの足音が聞こえてきて‥‥

「何してんだ!!」

って、相談役がすごい顔で怒鳴るんですよ(笑)。

懲りずに賑やかしてたら、だんだん雰囲気も変わってきました。みんな楽しそうに仕事をするようになりました。それ以降、相談役から怒られることはなかったし。

――:
周りも感化されたんですね。

田主松:
うん。本来は根暗だから、当時はかなり無理して賑やかしていたんです(笑)。みんなわたしの性格だと思っていますけど(笑)。

すべてを厳しく管理しても「いい仕事」はできないと思っていました。ものづくりにおいて厳密な時間管理は大事ですけどね。

――:
根暗とは、信じがたいです(笑)。田主松さんは、具体的にどのような業務をされていたんでしょうか?

田主松:
生産管理で入社したけど、3ケ月で設計に移りました。

一設計者だけど「生産効率を上げるにはどうすればいいか?」「どうすれば会社がもっとよくなるか?」を勝手に考えていましたね。

例えば当時、板金の機械加工データは、電卓を叩いて数値化し、その数値を機械に打ち込んで加工するアナログ的なやり方でした。ちょうどその頃、コンピューターが出始めていて「自動化できないかな?」と考え、コンピューターに詳しい社員と2人でプログラミングを勉強し、手作りの「加工データ自動化システム」をつくりました。

当時のコンピューターに詳しい社員 (今もベネックスで活躍中!)

――:
独学ですか?!

田主松:
うん。相談役に「やっていいですか?」と聞くとすぐにOKしてくれたから、試してみると‥‥

1日かかる仕事が、5分で終わっちゃった(笑)。

――:
すごいイノベーションですね(笑)。

田主松:
1つ結果が出たじゃない?すると相談役が急に「これからは自動化や!」「ほかにもアイディアがある人は持ってこい!」って言いだしてね(笑)。

――:
相談役は昔から「新しいことに挑戦する」ことに寛容的だったんですね。

田主松:
「好きなようにやれ」という感じで、いっさい口も出さなかった。

それから毎日、こなさなければいけない仕事を午前中にやり終え、午後は「社内の問題を改善するための時間」と決めて取り組んでいました。機械加工のデータ自動化以外にも、見積りの自動化システム、いろいろな仕組みをつくりました。

――:
改善や効率化の仕組みをつくることが好きだったんですか?

iPadを使いこなしている田主松さん。メモもiPadでとります。

田主松:
うん、それが一番おもしろかった。仮説を立て解決の仕組みを考え、結果が出る。その瞬間が最高の喜びですよ。ベネックスに入って、毎日仕事が本当に楽しかった。だって改善のネタは山ほどあるわけだから。

――:
普段の業務を抱えながら、社内の仕組みもつくるとなると、毎日かなりハードワークされたんじゃないですか?

田主松:
うーん‥‥。夢中だったから苦にならなかったんでしょうね。



2.「信用」と「信頼」を守りたい

――:
平成は不況が続いたと思います。やはり大変でしたか?

田主松:
仕事も大幅に減り、主要顧客の仕事もストップして、本当に大変な時期もありました。

あらゆる手を尽くしたけど、もう「支出削減」しか打つ手がなく、やむを得ずリストラもしました。これが一番辛かったですね。

――:
それは辛いですね。どうやって乗り越えたのでしょうか?

田主松:
いろいろあるんだろうけど、最後は地元の銀行に助けてもらったのは大きかったかな。不況で会社が大変な中、融資してくれました。これは、今までのベネックスの信用だと思うんです。

信用がなければ融資してくれませんから。

――:
田主松さんは組織をどう立て直してきたんですか?

田主松:
不況が続いたせいで、社内は暗く意気消沈としていました。当時わたしは製造部長として、一番力を入れたのは「マインドセット」。毎日朝礼で「みんなが前向きになる言葉」をとにかくかけ続けましたね。

仕事の細かい話をしても、みんな嫌になるから、仕事とは関係ない話を延々として、みんなのやる気を引き出していました。

――:
この状況で「生産効率が‥」と言われても、辛いですよね。

田主松:
うん。そこからだんだん主要顧客の大きな仕事が戻り始めました。いただいたお仕事は絶対に納期割れしないよう、全力を尽くしました。

人手が足りない工程が出ると、社内を駆けずり回って人を集め、連日徹夜で作業をしていました。納期に間に合わないときは、事務職の社員に手伝ってもらうなど、まさに総力戦でしたね。

工場内の様子

――:
なぜそこまでやるのでしょうか?

田主松:
会社が大変だった時期に「信用」や「信頼」が一番大事だと気づいたからです。

これまでも品質や納期を守る努力はしていたけど、より一層「やるぞ!」と意志を持って仕事に向き合いました。無茶な納期を言われることもあったけど、信用・信頼を積み重ねるために、お客さんの期待には「とことん応えよう」という一心でした。



3.どう生きるかは、自分で決めるしかない

――:
日本ベネックスの未来は、田主松さんからどう見えていますか?

田主松:
洋平さん(社長)を見ていると、製造事業、環境エネルギー事業に次ぐ新しい事業が5年以内に立ち上がっていると思いますよ。布石を打つように、採用を強化し、財務基盤も強固にしていますし。事業を増やしながら、ユニークな企業になる気がしますよ。

――:
その上で、これから何が一番大事だと思いますか?

田主松:
やっぱり人だと思うんです。

「いい仕事を、しつづける。」というパーパスを掲げているから、「いい仕事をしよう」と自分で考えて行動できる人を大事にしたいし、そういう人を育てたい。

わたしも若いときから「会社をよりよくしよう」と思い、職場の雰囲気を変えたり、独学でシステムをつくったり、自分で考えて行動してきました。自分も成長できたし、会社の成長にも繋がったと思っています。

どんな時代でも「いい仕事は、自分から始まる。」そう思いますね。

――:
ご自身の体験から、自分で考えて行動することが大事だと。

田主松:
そう。じつは東芝時代、最初に教わったのが「自分で考え、自分で決め、行動する」ということでした。それから何十年も手帳の冒頭ページに「自分で考え、自分で決め、行動する」と書いています。

大げさなことをいうと、「どう生きるか」は自分で決めるしかないですよね。どう生きるか、どう仕事をするか、自分で決めて答えを出すしかない。これはわたしのポリシーなんです。

――:
胸に刺さります‥。こういうお話はふだん社員にされますか?

田主松:
10年前から、細かいことをガミガミ言うのをやめました。もうそういう時代じゃないというのもあるけど、自分たちでとことん考え抜いて行動してほしい。

「これ、どうしましょうか?」じゃなくて「こう思うから、こうやっていいですか?」と聞いてほしいです。

仕事も人生も、自分で決めて行動するからおもしろいじゃないですか。ましてや仕事は1日の大半の時間を費やすわけだから「どうすればおもしろくできるかな?」と考えた方がいいと思います。

――:
どんな仕事も楽しむように自分で仕向けていますよね。

田主松:
そうかもしれないね。仕事も自分が「つまらない」と思えば、つまらなくなるから。

――:
仕事も人生も自分で決めて、楽しまないと「後悔するな」とつくづく思います。

田主松:
わたしは「とことん」というのが口癖みたいで。ある社員がこの間「田主松さんが言う『とことん』の意味がわかりました!自分が腑に落ちるまでやりつづける、という意味ですよね」と言ってきました。一瞬なんのことかわからなかったんだけど(笑)。

「後悔しない」ために何でもとことんやっているのかもしれないです。

――:
ああ。

田主松:
みんなに言いたいことがあるとすれば、「とことん考え抜いて、チャレンジしないと後悔するよ」ということでしょうか。



おわりに

「じっとしているのが苦手」と、田主松さんは言う。たしかに席を立っては、現場へ頻繁に足を運び、社員に声をかけている。「走りながら考え、対話し、迷わず決断する」田主松さんのポリシーだ。変化の激しい時代、未来を拓いていくには、戦略の立案以上に重要なことがあるのだと思った。それは「実行力」というきわめてオーソドックスな力があるかどうかだ。

(お読みいただきありがとうございました!)



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