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11月 意気消沈の季節。読んだ本の話。

11月4日(土)21:10
宮台真司 氏の『増補 サブカルチャー神話解体』を読み終えた。戦後〜93年頃までの音楽・漫画・性の変遷を「コミュニケーション」と「社会的文脈によって生まれるコード」の視点から分析した本。

「社会/裏社会」「強者/弱者」「大人/若者」といった対立コードをバックボーンとし、同志間で分かりあうために享受されてきた当該コンテンツたちは、共同体の解体や他者の「理解出来なさ」をきっかけとして不安定化・島宇宙化していくという内容だった(ざっくり)

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11月12日(日)17:03
大学時代の友人の結婚式に向け、スーツをこさえに大阪駅まで出る。行き当たりばったりで入った店で、大体1ヶ月くらいの納期感で見てほしいと言われた。結婚式は2週間後なので、まず間に合いそうもない。

新品であれば、オーダーメイドでなくていいか。既製品なら、今日買わなくていいか。とあっさり妥協に至り、店をあとにする。疲労を隠しきれていない店員さんの、機械的な振る舞いに少し心が痛んだ。

喜んで出席の回答をした割には、行動が後手後手になってしまっている。綺麗な3万円を、早いうちに手に入れなければ。列席したいと思える結婚式に呼んでもらえる事実を素直に喜びつつ、そこから漏れ出るシチュエーションがこれから起こりうるということに気を落としている。

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11月16日(木)23:05
カツセマサヒコ氏の『明け方の若者たち』を読んだ。初読みは社会人一年目の冬頃だったので、約2年越しの再読となる。当時に比べて、本書の重要ワードでもある「何者でもなさ」をややマイルドに受け入れられるようになった気がする。これは惰性か、はたまた大人になっ(てしまっ)たのか。まだまだな分からない。

始発が動き出す音を聞きながら、三人で淡い青の下を歩く。夜の余韻を引きずる空は、日中よりも僕らの近くにいる。低く浮かぶ薄い月が、名残惜しそうにこっちを見ていた。新聞配達のスーパーカブと、ゴミ収集車の動く音が、遠くからぼんやりと聞こえてくる。自販機の横に置かれたダンボール箱は、空き缶で溢れかえっていて、営業時間をようやく終えた居酒屋の前には、大きなゴミ袋が散乱していた。決して綺麗と言える景色じゃなかった。でも、それら全てが、なんだか掛け替えのないものに感じられた。社会人になって丸一年。あのときの僕らは、何者にもなれない自分たちを必死に肯定しながら、この街で無責任な自由を貪るように、生きていた。

p.78-79

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11月17日(金)12:05
冠婚葬祭用のスーツを実家に取りに帰省。月末の土曜日に臨時出社するため、事前代休を取得。途中で香水を買った。実家には犬猫がいるので、付けるのはビル街に戻ってから。

オオカミと月灯りのかぐや |  6,380円(税込)

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11月20日(月)08:05
社会人になって丸3年が経とうとしているが、大阪を行き交う人の多さに未だ慣れない。人が環境を選ぶように、環境もまた人を選ぶ。結論のないメモを残して、しばらくこの件については考えないようにする。


「多い」という概念には、本質的に、何か良からぬ要素が含まれているのではないか。都会を行き交う大勢の人間と、上空を包む重々しい雰囲気を皮膚で感じながら、適当なことばかり考える。同じ人間でありながら、圧倒的に無関係な他者がそこに無数に存在しているという事実。彼ら1人1人の人格を作ってきた膨大な時間。その集大成こそが、今まさにすれ違っては離れていった他者その人である。そのとんでもない情報量に思わず目眩を覚える。そのような「到底ありそうもない光景」が目の前に広がっておりながら、さもそれを当たり前かのように、受け入れてしまえている。そればかりか街を急ぐ際、他者を、自身の行動を阻害する障害物かのように認識し、苛立ちを募らせる瞬間が幾度もある。自身の低俗な人間性にうんざりしつつ、同時に、街から受け取っているこの殺伐とした空気は、自らの劣化した感情だけが原因ではないという半ばの確信によってさらに気が重くなってゆく。


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11月26日(日)23:55
友人の結婚式だった。合理性やコスパ、メリット・デメリットといった、大切で低俗な概念を吹き飛ばした空間がそこにあったように思う。本当におめでとう。

京都にて。

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11月27日(月)20:26
スコット・フィッツジェラルドの『マイ・ロスト・シティー』を読んだ。翻訳者は村上春樹さん。

小説を書く上でフィッツジェラルドから受けた影響は非常に大きいと訳者前書きにもあるけど、日常シーンの描き方とか確かに似てるかも。

短編で、基本ハッピーエンドは無し。どっかで報われてくれまじでと思う反面、適当にハッピーな落とし所に向かうよりは結末のない結末の方がよいとも思える。

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今年も終わる。今週が佳境。

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