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過ちの代償 其の拾参【終】

エピローグ

風呂から上がり、スキンケアを終えてベッドサイドに腰を下ろすと、スマホの通知音が鳴った。Twitterを確認すると裕太からダイレクトメールが届いていた。

先日は本当にありがとうございました。怜さんは命の恩人です!

こちらこそ、貴重な経験になりました。その後はどうですか?ちゃんと眠れて居ますか?

既読

お陰さまでぐっすり眠れるようになりました!ありがとうございますm(_ _)m
あの後婆ちゃんに「なんであんなところに壷を置いといたんだよ?」って聞いてみたんですよ。
何でも婆ちゃんも親から譲り受けたものの、気味が悪くて持て余していたんだそうです。
でもって、うち、ちょっと前まで婆ちゃんとは離れて暮らしていて、僕が高校2年の頃に二世帯住宅を建てて引っ越したんですが、その時のどたばたで食器類に紛れ込んだみたいです。で、「まぁいっか」ってそのままにしていたんだそうで。
……これって僕と同じだな。血は争えない。😓

あはは。ホントですね😄
お祖母様もまさかそんな曰くのあるものだとは知らなかったんでしょうね。今時の住宅だと旧家みたいに「先祖代々の品を蔵にしまう」って訳にもいきませんものねぇ。
兎にも角にも、お元気そうでほっとしました。

既読

そう言えば、実家で竹下博の書いた本を見つけたんで読んでみたんですよ。
多分、そのまんま彼女……節子さんの物語なんじゃないのかな、あれは。
妖術の残る村を出て、売春で身を立てて、苦労の多い人生だったみたいです。
ただ、物語の中では、彼女は最後は作家になって苦境から抜け出し成功する筋書きのサクセスストーリーでした。何だか切ないですね。

そうですね。報われない恋に身を焦がし、呪詛をかけた彼女の気持ちと、呪詛を掛けたものの末路を思うと……。その辺の事はあまり考えないようにしているんですけど、つい考えてしまいます……。
何にせよ忘れられない体験になりました。

既読

怜さんはよくご存じなだけに余計に辛いでしょうね。また機会があれば、仕事ではなくて遊びに来て下さいね。松本市は見所が沢山ありますから。僕がご案内しますよ!😀

ぜひぜひ😆
また美味しいものを食べに行きたいです!
それではお休みなさい🥱

既読

怜はTwitterを閉じるとベッドに潜り込んだ。

──ハッピーエンドとは言い難い結末ではあったけれど、彼女の望みは叶ったのかもしれないな……。彼女の犯した罪は決して許される事ではない。
けれど、世の中には白と黒では割り切れない事が色々と……もしかしたら、それこそ人の数だけ存在するのかもしれない。

そんな事を考えながら、怜は久々にぐっすり眠れる幸せを噛みしめていた。

【終】

※参考文献『日本の呪い 「闇の心性」が生み出す文化とは』(小松和彦)
『憑霊信仰論』(小松和彦)


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