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30年日本史00072【神代】天の岩戸 オモイカネの妙案

 太陽神が洞窟の中に入ってしまったせいで、高天原と葦原中国(あしはらのなかつくに)は真っ暗になってしまいました。
 ここでまた「葦原中国」という新たな国が出てきました。葦原中国とは、我々人間が住む現実世界のことです。アマテラスが隠れてしまうと、高天原だけでなく葦原中国までもが真っ暗になったと言うのです。
 洞窟に籠もってしまったアマテラスをどうやって外に出せばいいのか。八百万の神々は、額を寄せ合い相談を始めました。しかし良い知恵が浮かびません。結局、知恵の神であるオモイカネ(思金)に相談することになりました。
 ここでオモイカネが初登場しました。オモイカネはタカミムスビの子です。タカミムスビと言っても覚えている読者はいないでしょう。最初に「別天神」として登場した7柱の神の2番目です。
 タカミムスビもオモイカネも、この後たびたび登場してアマテラスを補佐することになります。タカミムスビたち別天神は「現れてすぐに消えた」と書いてあるにもかかわらず、何事もなかったように再登場するのです。どうも古事記の作者は全体の整合性をあまりチェックできていなかったように思えてなりません。
 さて、相談を受けたオモイカネは、アマテラスを洞窟から引きずり出すべく、一風変わった作戦を提案します。岩戸の前で祭りを行ってアマテラスをおびき出すというのです。
 その準備のため、オモイカネは
・八咫の鏡(やたのかがみ)
・八尺瓊の勾玉(やさかにのまがたま)
を作らせることとしました。これこそが、後に「三種の神器」と呼ばれ歴代の天皇が保有する王権の象徴となるものです。ちなみに、残る1つである草薙の剣はまた後で登場します。
 神々は岩戸の前に集まって、持ってきた木の枝の上方に八尺瓊の勾玉を飾り、枝の中程に八咫の鏡を掛けました。
 いよいよ祭りが始まります。アメノコヤネ(天児屋)が祝福の祝詞を奏上し、続いて踊り子のアメノウズメ(天宇受売)が胸や陰部をあらわにして踊り始めました。すると八百万の神々がどっと笑います。
 「胸や陰部をあらわにした踊り」というとひどく卑猥なものを思い浮かべてしまいますが、「神々がどっと笑った」との記述がありますから、当時は卑猥な感覚はなかったのでしょう。旧約聖書の世界で、アダムとイブがリンゴを食べるまでは裸でいることを特段恥ずかしく感じなかったのと似ています。

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