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W杯ダークホースのフランス 若さとクオリティの狭間で

開幕2連勝で余裕の本線出場を決めたフランス。2年前、自国開催のEuroで決勝に進んだにも関わらず、延長戦の末、ポルトガルに儚くも破れた。世界屈指のタレントを擁するも、FIFAランク7位、苦汁を舐めてきたフランス代表の現状はどんなものなのか。

確かなタレント力と実力

フランスは、様々なタレントを擁するヨーロッパの国々の中でも、屈指のタレント力を持っている。スターティングメンバーはおろか、ベンチにも、各国のリーグでスタメンを張っている実力者揃いだ。当時、22歳にして約120億もの移籍金(他チームから選手を買う時に相手のクラブに払うお金)を払わせたMFポール・ポグバ。レアル・マドリード、バルセロナでそれぞれスタメンを貼る二人の若きCB、ラファエル・ヴァランとユムティティ。そして、19歳にして、ネイマールに次ぐ世界二番目の移籍金(約290億円)を払わせた若き天才、背番号10番、FWキリアン・ムバッペ。その他にも、各々のクラブで欠かせない存在だらけだ。実力は本物である。

チーム力も申し分ない。

各ポジションごとにコミュニケーションは取られ、サイドから崩す、中央から突破する、ショートパスで、ロングパスで、様々な攻撃のバリエーションを持っている。チームが持っているビジョンもしっかりしている。格下相手にはボールを保持し、高い位置から相手にプレッシャーを与え、ゲームを支配する。まだ当たってないからわからないが、前回のEuroと同じプランなら、強豪相手には堅守速攻のスタイルを貫くだろう。組織的で、硬い守備から前線のスピードを使った高速カウンター。ジルー、ムバッペ、デンペレ、グリーズマンなど、フランスのスター達が完全に連携が取れたなら、フランスのカウンターを止めれるチームは存在しないだろう。

敏腕監督にも注目すべきだろう。実力を持てば持つほど生まれるエゴ、そんな強いエゴを持つ選手を多く持っていながらも、全員を一つにまとめ上げたその手腕は特筆に値する。また、試合中の判断もとても早い、良い選手でも、プレーの質が悪ければ、すかさず下げ、効果的な戦士を投入する。ここまで早く、正確な判断ができる監督はそうそういないものだ。

そして、フランス代表の、大きな特徴といえば、その若さだ。日本代表や、33歳のクリロナをエースに置くポルトガル、ベテランや成熟した選手をメインに戦うスペイン代表など、多くの強力なチームは成熟した選手や経験豊富なベテランを重宝しがちだ。現にスペイン代表の両CB、セルヒオ・ラモス(32)やジェラール・ピケ(31)は変えが聞かない選手だ。それに比べフランス代表のスタメンは、ユムティティ(24)とヴァラン(25)はとても若い。彼らは上述したように、スペインの両雄、バルセロナとレアル・マドリードでスタメンを貼る折り紙つきの実力者だ。他にもFWキリアン・ムバッペは19歳、同じくFWデンペレは20歳など、むしろ30歳以上の選手を探す方が難しいほどだ。若く、怖いもの知らずな彼らは大会中にも成長し続ける。2年後のEuro、4年後のW杯でさらに成長してやってくる。30歳でサッカー選手としてのピークを迎えるサッカー業界にて、若さは大きな価値である。フランス代表が前代表チームで一番市場価値があるチームと言われているのはこれが理由である。


こんなにもいいところだらけのフランス代表はなぜ、優勝候補筆頭ではなくあくまでダークホースなのだろうか?


W杯において、若さはむしろ足かせに

フランス代表は若い。若いことは価値である。しかし、その価値は将来性を考えた上での価値である。サッカー選手の市場価値は若ければ若いほど高い。そしてピークである30歳付近に近づくにつれて、価値が下がってくる。そして30歳を超えて、どんどん価値が下がっていく。クラブチームは選手とともに何年も、ともに歩んでいく。選手の将来というのは大事な価値になる。しかし4年に一度のW杯に置いて、将来性はそれほど大事なのだろうか?

W杯はクラブチームが行う試合数(およそ38試合)ほど多くはない。長くても8試合ほど、短くて3試合で終わってしまう。そして全てが一発勝負だ。求められるのは将来性ではなく、瞬間的な実力である。

若いというのは単に、ベテランや成熟した選手よりも実力が劣るというだけではない。サッカーにおいて経験値は大事な要素である。サッカーはメンタルスポーツである。90分もファンの声援と相手の野次にさらされ続けられ、大舞台であればあるほど、緊張度は爆発的に増す。試合中、本来の実力は出せないのなんてしょっちゅうだ。特に若い選手はそうだ。多くの経験を得たベテランに軍ぱいが上がる。一発勝負の舞台では、若い選手というのはむしろ不利なのだ。

優勝候補筆頭と言われている、ドイツやスペイン、ブラジルはフランスのような極端な若さがない。もちろん若い選手もいるが、それと同時にベテランや成熟した選手もいる。優勝候補筆頭と呼ばれる彼らは、フランス代表ほどのタレントと実力を擁していながらも、経験値を積んでいる。瞬間的な実力が頭抜けているのだ。


夢と希望とキリアン・ムバッペ

しかしサッカーというのは、何がおこるかわからない。一発勝負であれば、弱小チームが格上を喰ってしまう、いわゆるジャイアントキリング、ということも十分にありうる。以前まで見向きもされなかったが、ジャイアントキリングの連続でのし上がってきたアイスランドが典型的な例だ。一昨年のプレミアリーグのレスターの優勝もまさにそうだ。

だからこそフランスにもチャンスはある。むしろその爆発的な若いパワーとタレント力を持っているフランス代表は、ジャイアントキリングが起こる可能性は高いと言ってもいいだろう。だからこそダークホースと呼ばれているのだ。

そして何より、キリアン・ムバッペがいる。19歳という若さながらも、周りの選手よりも頭一つ抜けてる実力と、大舞台でもプレッシャーを受けていないような図太さ。まさにフランスの希望の星、本大会でも活躍が期待できるだろう。4年後8年後もエースになれる。将来がとても楽しみだ。

フランス代表が優勝候補筆頭になる日も遠くないだろう。あと必要なのは経験だ。4年後にはなっていると保証する。賭けてもいい。しかしぜひとも、本大会も頑張ってほしい。ダークホースとして、ブラジルやドイツを是非喰っていただきたい。楽しみに待っています。

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