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ラストナイト・イン・ソーホーとシャイニングの相似点

本作はエドガー・ライト監督の『シャイニング』のような映画です。

このnoteでは私がそう感じた根拠を具体的に挙げていきます。

必然的に、内容や結末に触れますのでネタバレにご注意ください。

個人的には、本作はミステリーの要素を含んでおり推理を楽しむ要素もあるので、初見時は前提知識を入れないで鑑賞されることを推奨します。

▼ジャンルがサイコスリラー:

まず基本として映画の「ジャンル」が同じですね。サイコスリラー、つまり心理的に恐怖を与えてくる映画です。まあ世の中にサイコスリラーはごまんとありますが、まずはキホンのキってことで、一応。

ただし、どちらも怖さを売る作品でありながら、そこまでホラーに徹してない(幽霊が恐怖だけではなくて快楽も与えてくる)点でも似ているような気がします。

▼幽霊が大量に出てくる:

シャイニングでは主人公親子がたくさんの幽霊を見ることになるのですが、ラストナイトインソーホー(以降は「LNIS」と表記します)でも主人公エリーが家の中からはじまり果ては街角や図書館まで至る所で幽霊を見ることになるのでした。

▼主人公に霊感がある:

LNISでエリーが幽霊を見てしまうのは、彼女には強い霊感があるからです。霊感があることは映画の最初のシーンで鏡の中だけに映り込む母親として明確に示されますし、祖母も認識しています。

一方でシャイニングではダブル主人公になっているのですが、息子のダニーが特別な力(シャイニング)を持っています。この能力のせいでダニーは幼い姉妹やバスタブで老婆の霊を見てしまうことになりますが、逆に結果としてはこれのお陰で屋敷の呪いからの脱出に成功します。

▼だんだん主人公が病んでいく:

シャイニングで精神を病んでしまうのは父親のジャックです。彼は次第にホテルの霊達によって精神を支配されて、最後には妻と息子を殺そうとします。なお最終的には屋外の迷路で動けなくなし凍死して、魂だけはホテルに取り込まれてしまいます。

LNISでもエリーは夜な夜な見る夢で精神を支配されて、日常生活に支障をきたします。せっかく恋人といい感じになったのに暴れて追い出してしまいますし、アクシデントとはいえ元ルームメイトに大きなハサミで斬りかかってしまいます。シャイニングと異なり、彼女には最後まで味方が居てくれたのが救いでした。

▼呪われた古い家(屋敷):

シャイニングで主人公を襲うのは幽霊というよりは幽霊が住み着いたホテルです。建物は年季が入っていますが、ゴージャスかつモダンで美しいです。

LNISでも主人公が呪われた部屋に下宿したところから悲劇が始まります。結果的には「襲われる」と思っていたのは彼女の勘違いで、むしろ彼らは助けを求めていただけというのが本作での「どんでん返し要素」にはなっていますが、しかし幽霊達ももう少し上手に伝えられなかったんですかね。笑。

どちらも一言でまとめれば「事故物件で怪奇現象が起きた」という身も蓋もない話になります。笑。

LNISでは結論として家は丸ごと燃やされました。シャイニングではホテルはそのまま残されるのですが、30年後の続編『ドクタースリープ』で燃やされてしまうので、そこまで含めると似ていますね。

なおLNISでは部屋の呪いを大家は把握していたようですが、シャイニングでも、最終的にはカットされたのですがホテルの経営者が建物が呪われていることを把握していることを示唆するシーンが当初はあったそうです。

完成したフィルムを全米で初公開した5日後、キューブリックは以下のシークエンスをカットをしました。
(1)ジャックが矢などが並べられたオブジェから声が聞こえたような気がする。すると一人の幽霊がボールを投げ返す。
(2)ジャックの死後、病院に入院しているウェンディをアルマン(ホテルの支配人)が見舞い、そこにいたダニーに「忘れ物だよ」と言ってテニスボールを渡す。(その脚本はこちら
ここで重要なのは、(テニス)ボールが霊的存在の象徴として強調されている点です。(2)の通り、アルマンはホテルが悪霊に支配されていた事を知っていました。もっと言えば、悪霊が暴れだすとホテルの営業に支障をきたすので、定期的にホテルに「いけにえ」を捧げていたともとれます。つまり「アルマン黒幕説」です。

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▼過去から続く怨念:

シャイニングで襲ってくるのは1920年代の人々の霊です。最後には主人公ジャックが古い写真の中に取り込まれます。

LNISで迫ってくるのは大家アレクサンドラが1960年代に殺された被害者たちの霊です。最初から積極的に主人公エリーに過去を見せて分かってもらおうとします。だとしたら方法が下手すぎるんですが。笑。

▼主人公を助ける黒人が刺される:

シャイニングで主人公ダニーに幽霊への対処法を教えてくれて、真冬の猛吹雪にもかかわらず飛行機と除雪機で駆けつけてくれたのは、ハロランという
名前の黒人でした。彼は駆けつけるも発狂したジャックに斧で斬りつけられて敢えなく死んでしまうのでした。

LNISで田舎から出てきたエリーを馬鹿にする友達の中で、ただ一人優しく寄り添ってくれて、エリーがどれだけ奇行に走っても最後まで味方でいてくれたのは、ジョンという名前の黒人でした。彼は屋敷に突入するも正体を見せたアレクサンドラに出刃包丁で腹部を刺されます。私はこれを観た即座に「ああ、この少年はシャイニングよろしく死んでしまうな」と観念したのですが、本作では最後まで生きていました。流石に後遺症が残ってしまったようですが、エリートは良い関係を続けているようでホッとしました。

▼物語の展開から結末まで大体同じ:

1)主人公が最高の環境に引っ越してくる
2)主人公が気持ち良い幻覚を経験する
3)主人公が実は呪われていた家で精神を病む
4)主人公が殺人鬼から逃げ回る
5)主人公の味方が殺人鬼に刺される
6)主人公が呪われた家からの脱出に成功する

流石に全く同じにしたのでは映画として能がないので、シャイニングでのジャック(父)とダニー(息子)の役割を、LNISではエリー(娘)とラムジー(警察官)とアレクサンドラ(大家)に適切に振り分け直したという感じですかね。

了。

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