めりも@雀野

小説を細々上げたいなぁ、と思いつつ。上げるかな?ショートから始めようと思います。

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最近の記事

Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

「刀って意外と売ってないものなんだな」 「何言ってんだ。あんなもん使うのはお前らぐらいだよ。第一、刀が実在するのだって驚きだよ。俺なんて漫画本でしか見たことないぞ」 「もし、そこのお二方」 ふと、どこかで声がした。僕は辺りを見回す。 「こっちじゃ。下じゃよ」 視線を落とすと身長が小さいうえに、さらに腰が深くくの字に曲がった老人がいた。伸びた髪とひげで表情はうかがえない。 「ん?なんだよじいさん。俺達は忙しいんだ」 「生意気な童じゃの。まったく、せっかく捜し物のありかを教

    • Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

      マコトの回復力は驚異的で、もう目の包帯がとれたら退院だとミズノに言われ、早急に仕事を始める準備にかからなければまずいと思った俺は、携帯電話を取り出し、シルドの短縮を押す。シルドは旧式で、連絡コードが内蔵されていないのだ。何回か続いたコールが止まるとシルドの太い声が響いた。 『なんだよ。証拠泥棒』 やけになったような大声に俺は思わず携帯電話を耳から離す。 「おいおいまだ根に持ってんのか?」 『当り前だろう。で、今日は何の用だ?人間様に証拠が少ないから金を返せて怒鳴られた可愛

      • Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

        意識が戻ると、そこは村ではなかった。草木が生い茂る森の中、異様な匂いとどす黒い空気が立ち込める嫌な場所だった。 『たすけて。誠――っ。助けて』 当たりを見回す僕の耳にあやめの叫び声が飛び込んだ。 彼女はさっきの男に漆黒のしなやかな髪を乱暴に掴まれていた。美しい着物はひどく乱れ、細い足をあらわにしていた。刺青の男はにたりと笑うと、それに手を回し深々と爪を立てた。血が滲む。 『やめてっ。いやぁ。誠っ助けて』 『やめろ!やめろぉ。あやめっ、あやめ。くそっ』 両の手足が紐によって

        • Machine of the Eternity ー黒い剣士と夜の月ー

          ++++ 『よし、今日はこれで終わりにしようか。師匠。よろしいでしょうか?』 『うむ』 師匠は深々と頷くと、道場中に子供たちのはしゃぎ声が溢れだし、いっせいに皆が道場を後にする。 『先生。ありがとうございましたぁ』 小さな道場ではあったが、僕はそこで剣術の指導者として子供たちを指導していた。いつ民族狩りが現れても対処できるようにと。強い力を養うために。稽古を終えた僕は、家に帰る前に許嫁のあやめの家へ寄った。それがいつもの日課だった。 風に乗り、門の外まで聞こえてきた舞の稽古

        Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

          Machine of the Eternity ー黒い剣士と夜の月ー

          名前。僕の名前は? 『――――――』 何故だろう。思い出せない。 あやめは僕を何と呼んでいただろうか? どうして、思い出せないんだ。 僕は誰なんだ。 どくん。 右目から。失ったはずの右目から熱いものが込み上げる感覚。気持ち悪い。 どくん。 苦しい。怖い。 右目が疼く。 気持ち悪い。 誰か‥‥‥助けて。 「―――大丈夫だ」 「―――え?」 右目のガーゼの上からあてられたのは体温のない硬い掌。その手は熱くなった右目の温度を下げた。 心地よい感覚。左目が写したのはさっ

          Machine of the Eternity ー黒い剣士と夜の月ー

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          4 あやめ。 絶命寸前の男はそう言った。聞きなれない単語だから恐らく、倭民族特有の名前か何かなのだろう。 俺は血まみれの男を担いだ。ただたんに華奢なだけなのか、それとも、大量の血液を失っているせいなのか、男の身体は異様に軽かった。 そして、男を担いだまま、ミズノの診療所へ走った。 「何よ。今日はどこを壊したの?イオ君」 クールな声音だが、表情は俺を改造したいと言っている。その証拠に、何やら怪しげな機械の部品と五本の指の間にプラスマイナス、大小様々なドライバーが挟まれてい

          Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

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          3 「っは‥‥‥はあっ、くそっ」 顔右半分を染める血と、ほぼ無意識に逃げ続ける足は、どうやら止まることを知らないようだ。くそっ、袴が足に絡まって邪魔だし、髪は頬に張り付く。流れ出す汗もとめどない。 しかしそんなことを考えている余地などないというように足は動く。 怖いんだ。ただただ怖いんだ。 足がもつれ、ようやく止まったところで恐る恐る振り返ると、後ろにはなにもいない。もう追ってはこないみたいだ。 そこでようやく地面に座り、曇った天を仰いだ。段々と息が苦しくなる。

          Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

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          2 「イーオー君っ!」 煙草を購入後、賑わう街をうろついていると背後から俺を呼ぶ若い女の声。 永遠の人形管理機関製造ナンバー100。それが、永遠の人形である俺の名前。通称イオ。その名を呼ぶ者がほとんどなのでさして過剰に反応を示す程ではないが、彼女だけはそうはいかない。 「『運動リミッター一時解除。歩行速度からマックス速度時速一二二四キロに移行。変換まで三、ニ、一』‥‥‥」 「何マッハ速度で逃げようとしてるのかしら?イオ君?」 俺の肩を尋常じゃない握力で掴む彼女を振り返れば、

          Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

          Machine of the Eternityー黒い剣士と夜の月ー

          初めにー 心臓部の核の力により人と見紛う容姿をもつ<永遠の人形(エターナルドール)>のイオはある日黒い髪と瞳を持つ希少民族<倭民族>の青年、満長誠を死の淵から救い出す。 そこから便利屋として過ごすイオのありふれた毎日が大きく変わり出す。 誠の依頼とその決断はーーー・・・・? 人と機械とが共存し合う未来を描いた世界で人造人間と希少民族の青年との絆を描いたファンタジー作品。 「報酬次第だーーーー」 ++++ 2012年文芸社より出版した作品を大幅に改変し始動。 プロロ

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          逃げ水

          逃げ水 空の星 父の背中に 君の心 それは逃げ水 「ーーーいい詩(うた)ね。誰が書いたの?」 不意に背後から聞こえた声に俺は慌てて振り返る。その声には覚えがあった。 「真琴」 夢ノ崎真琴。 長い黒髪を胸元で揃え、前髪は眉の少し上で真一文字を書いている。 大きな黒い瞳に雪色の肌、薔薇のような紅い唇。さながら白雪姫の文面である。 この連日続く猛暑にもかかわらず長袖のブラウスを着て汗ひとつかかず涼しそうな顔をしている。 「聞かなくてもわかるだろ?お前なら」 「あら、貴方は

          行く春

          行く春 春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、俺も春の陽気に負けて残り少ない春休みを謳歌することもなく毎日のように惰眠を貪っていた。 意識の奥でパートに出かける母親の車のエンジン音が遠ざかる。 すると決まって俺は夢を見た。 知らぬ土地、小高い丘の一本桜。それは美しい桜の木の下で太い幹に背を預け、目眩がするような青い空を仰いでいるその背後、幹の反対側には誰かがいていつも俺に語りかけてくるのだ。 「君にはこの空が何色に見える?」 その知らぬ声が今日はそう問うた。 俺が答えるとそ