ヨシダジャック

作品集 「夜の発明・犬を預ける」(2021)、 「DOT」(2022)、 「PEPSI…

ヨシダジャック

作品集 「夜の発明・犬を預ける」(2021)、 「DOT」(2022)、 「PEPSI」(2023)、 「桃」(2024、予定)

マガジン

  • 夏の短歌

    短歌とマイクロノベルを書いています(24/5~8)

  • 本、ときどき音楽

    Book,Music,with Occasional Movie

  • What the Blackbird said(鳥の歌)

    鳥の歌について書いています。

  • 春の短歌

    2024/1-3、短歌とマイクロノベルの予定です。

  • 冬の短歌(Advent Calendar 2023)

    Advent Calendarの形式で短歌とマイクロノベルを書いています。 12/1~12/25(終わり)

最近の記事

投げる

き みが投げつけたスマホの画面には(Escape Rooms!)広告動画の途切れることなく 最新型の2画面スマホ。広告動画編集制作の専用機である。今も、二つ並んだディスプレイには、編集中の広告動画が流れている。広告動画編集制作アプリの広告動画である。専用機がなくても使用可能なアプリである。広告動画編集制作のアプリが不要な広告動画編集制作の専用機が登場する前に完成させねばならない。

    • 食卓のラジオの傍にひとつだけ西瓜の種が発芽している 何処か都心から遊びに出てきた三十歳前後の男が数人、それぞれ手にタキイ種苗の紙袋を下げて歩いている。  そういえばわたしたちも、クラス会のあと、みんなでオザキフラワーパークの袋を下げてミルキーウェイを歩いたっけ。七夕にはまだ遠い夜のこと。

      • 真夏日は夏だけじゃない音もなく発火する卵倉庫の黄色 とある工業地帯、廃屋のような古びた倉庫には卵が保管されている。あなたは、パレットから、卵を一つ取りあげる。それには、おいしい卵と大きく書いてあるが、中はからっぽだったので、あなたはとてもがっかりしてしまう。繰り返し書くが、これは仮定の倉庫の話である。

        • 白砂に片手袋の残されてゆたにたゆたに雪舟の庭 正方形に区切られた庭。クリムトの絵のように正方形である。植木鉢に化けた犬。蛇口から水が出るのを待つ鳥。正方形ならではの登場人物は誰か。あなたの四角い爪。はためく国旗。粗大ゴミ置き場の食卓の上の折り曲げられたスプーン。曲線の登場。ぺガススの大四辺形はいつからぺガススになったのか。あなたは話してくれる。正方形の口腔。

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        • 夏の短歌
          35本
        • 本、ときどき音楽
          6本
        • What the Blackbird said(鳥の歌)
          9本
        • 春の短歌
          98本
        • 冬の短歌(Advent Calendar 2023)
          25本
        • School Buildings
          6本

        記事

          凛々と声響かせて地下道を美しきとおめがね持つ人ら行く 「あなたは重要な人物だったんですね」 「それでその前は、少し重要な人物だったと」 「で、今は、声だと」

          バス

          ラッピングバスの阿修羅像まひるまの登大路に影を生みくる 彼は自分の名はバスだと言った。Hi、と言って水をがぶ飲みすると、仲間に追いつこうと走っていった。バスが朝のひかりの中を輓獣のように力強く走り去るのをあなたは見ていた。緩い勾配のひび割れた道路を上り、トンネルのなかに消えていくのを見ていた。やがて夕方になり、バスがトンネルから出てくるのをあなたは見ていた。朝とは異なり、バスは丸目2灯で、既に点灯していた。あなたの前を通り過ぎていった。

          ギフト2

          光ったよね、今。だれかが置いていったような石ころ。 あなたはギフトを買いに行く。苺?ことかとか?それとも絵本?くまがやぶいちごばかりを食べているそんな絵本?大きなショッピングモール。浮かれた気分。スーベニアショップ。ブックストア。そしてフードコート。少し試食してみたいという誘惑に駆られて店内を歩く。歩きまわる。林檎、桃、キウイを試食。苺は?どれも美味しい。身体が浮き立つほどうれしくなる。歌いたくなる。晴れやかな。ウタダのうたい方を真似て声を張り上げながら歌う。ひかり。店の通

          ボトル

          自販機のからのボトルは立っている光るボタンが押された後も 駅中の販売所で、その日の朝の十一時ごろでしたか、桃を見ましたよ。あかつきであり、おどろきであり、つきあかりであり、なつおとめであり、まどかであり、ひめこなつであり、つきかがみであり、なつっこであり、ゆうぞらであり、そしてそしてピンキッシュタマキジェーでもあった桃のことが、まんざら悪い奴でもないなと、感じることができました。以上、報告します。

          Hurry, hurry

          Hurry, hurry イチゴが3個残された畑を知っているのよわたし イチゴの樹はここにある。この樹が花をつけているところを見たくなった。見るだけではなく、イチゴの花が空を埋めていくのを、そしてすぐに消えていくのを見上げたくなった。かつて人々はイチゴの樹の下でいろいろなことを見てきたのだろう。今はだれも食べなくなったイチゴの実を、鳥とこどもが取り合っていたときのことも。

          切手

          だれもいま棲むことのない小鳥屋のポストにのぞく小鳥の切手 あなたは青い切手の家に生まれ、何度か病気はしたものの、奇跡的にも青い切手に育った。青色のぎざぎざに縁どられた身体には、はっきりと青色の数字と文字が描かれている。そのせいで、夏でもなんだか寒そうに見えた。

          水玉

          カルピスをきみは作りぬ作られた世界は水玉に満ちているか あなたは、これこそが物語になるだろうと考えた。それはこの模様が謎めいていたからというだけではなかった。小柄で甲虫のように頑丈で、ひねくれていて、地は白色、柄は青色だった。その昔、モンゴルからこの地に渡ってきたという挿話も魅力の一つだった。

          チョーク

          触角がほしいでしょうとぼくの顔に青いチョークで線を描いた あなたは待ち合わせ場所の短歌のところまで出かけていく。夜、月光、小川、樹々、あまりに美しい情景に出会って、あなたはその場所が自分にふさわしい場所ではないという感じにとらわれる。神と女神、牧神と妖精のような存在にのみふさわしい場所ではないかと思えてくる。だから、きみが来ない方がその方がよっぽど救われると、そんなふうに感じてしまうのである。

          黙りいる夜の終わりを見たように朝から咲きっぱなしのヒルガオ 夜の外壁には、小石を打ち込んだPC板が使われている。当初は外国産の青石が埋め込まれていたが、剥落が激しく、現在は月浜の石を使用している。しかし、色は青が基調になったままだ。そして、この壁の色は、変化する。 初更、乙夜(二更)、丙夜(三更)、丁夜(四更)・戊夜(五更)、光の違いによって壁の色も微妙に変わる。そして、見ものは、雨の日の壁の色だ。とびきりに美しいみどりがかった色になるのである。緑色研究者なら見逃せない。

          新聞

          夜が明ける。新聞を読む。寝そびれた男の記事が載っている。 読んでみると、これは、とてもオーソドックスな少年少女小説なのだった。この低い音域のリフばかりが続くような天体運行記事の味わい深さを、支持する読者はどれくらいいるだろうか。

          わたし②

          eが付きnがふたつのアンnがひとつっきりのわたしの暮らし 句跨りの短歌を読む場合、57577の句切れに合わせるのが良いと思う。音読の快感が得られる。彼はそう言った。私がこれまで受けた幾千のアドバイスの中で、これは間違いなく上位にくるものだ。あなたはそう言った。そのどちらの場面にもわたしは不在だった。

          わたし

          やべーいまごろ気がついた わ゜た゜し゜ にも半濁点って打てるんだな ぼくにしてみれば、最近のペットブームなど全くの茶番だと言いたい。だって有史以来、彼らはずっとぼくたちの最良の友だったから。だから、世界中のいたるところに犬博物館があるということにも驚かない。今更なんで驚いたりするの?って感じ。 しかし、しかしだよ。これが出来たときは驚いた。夢中になって眺めていたさ。そう、食事も忘れるくらい。だいすきな骨を齧るのも忘れるくらい夢中になって。おっと、今日のお喋りは、もうおしま