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冬の短歌(Advent Calendar 2023)

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Advent Calendarの形式で短歌とマイクロノベルを書いています。 12/1~12/25(終わり)
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記事一覧

冬の短歌㉕(Advent Calendar 2023)

みんなケーキとかワッフルとかを食べているいったい雪食いは何処へ行ったのか 雪がすきです。…

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冬の短歌㉔(Advent Calendar 2023)

雪道で自分の靴とぴったりの(きよしこのよる)足跡と逢う 客は入っているが、意外に静かであ…

冬の短歌㉓(Advent Calendar 2023)

美しき母音のひびきみちゆきて歌う少女の卵形の舌 いま、同時に4冊の本を読んでいます。テニ…

冬の短歌㉒(Advent Calendar 2023)

犬たちは動物文化センターで二時間ごとに五分話した 「スライム」は本来、ある種の性状を持っ…

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冬の短歌㉑(Advent Calendar 2023)

全身が緑色だが絶対に宇宙病ではないと彼女は Ms.Greenの家といったら、とても古くて、ほうぼ…

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冬の短歌⑳(Advent Calendar 2023)

託けを運んで来たという少女 鳥のかたちのピアスを揺らし そうだ俺んちでゲームしないと言わ…

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冬の短歌⑲(Advent Calendar 2023)

朝、猫に旅に出ますと言い置いてるるぶ十三冊売りにゆく 漕ぐ。今や自転車は舟のようなものなのだろう。水路をゆき河をゆく。陸を走るよりも断然楽だもの。車に幅寄せされたり二段階横断を強いられたりもしない。なにより鹿に道を阻まれることがなくなった。おっとそれは奈良だけか。漕ぐ。自転車に櫂を付けるとこんなに楽だとはね。後ろに進むのが難点だけど。 https://adventar.org/calendars/8598

冬の短歌⑱(Advent Calendar 2023)

豪雨の天王洲寺田倉庫たちまちに水没するファンタン=ラトゥールの桃 メキシコの民芸品には「…

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冬の短歌⑰(Advent Calendar 2023)

願わくは小さな輪っかの美しい中古で廉い土星がほしい 自転車を描いた小説はたくさんある。詩…

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冬の短歌⑯(Advent Calendar 2023)

呪術市場の通路に光る幾千のグアダルーペ聖母像の祈り トロッキーが死に、ディエゴとフリーダ…

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冬の短歌⑮(Advent Calendar 2023)

ポンデリングと球根を買うそよ風がいつもどおりに吹いている朝 隣家の朝顔が妙に元気が無い。…

冬の短歌⑭(Advent Calendar 2023)

まず祈る(触れても石に変わらぬように)新しい本をひらけば踊りだす文字 バベルの図書館、建…

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冬の短歌⑬(Advent Calendar 2023)

雪道で転がり落ちるバケツから活版活字の旧字旧仮名 (承前) 1474年、ベネツィアで特許法が…

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冬の短歌①(Advent Calendar 2023)

目覚めると姉さんはまだそこにいたぼくに手渡すそのぬばたまよ 黒かった。いや暗かった。球状のそれはまるで暗い穴のようなもので、手を差しのべると、手が包み込まれてしまうようなものだった。これじゃ受けとれないよとぼくが言うと、ごめんね裏返したままだったと姉さんは笑った。 Tシャツ、セーター、姉さんは裏返しのまま着ていることが多かった。くるくると美しい手つきでそれを戻すのを見るのがぼくは好きだった。だからといって、傘、マグカップ、国語辞典、なんでも裏返してしまう癖はどうかと思うけど