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冬の短歌2

短歌とマイクロノベルを書きます。

鉛筆をゆらゆらとしてクリエイティブライティングの五つの技法 空を描く。青で。 海を描く。青で。 船を描く。青で。 ・・・一面の青である。 そして青が足りない!と騒ぎだす。 だれか青を貸してと騒ぐ。

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なぜ緑色なのだろう詩集に乱入するシャガールのロバ なぜオスカー・ワイルドは緑色を、なぜコナン・ドイルは緋色を研究対象に選んだのか。カポーティの「無頭の鷹」でなぜ少女は緑色のレインコートを着て、緑色の袋に入ったポップコーンを持っているのか。ゲーテの色彩環でなぜグリーンは下の頂点に配置されるのか。なぜシャガールのロバは乱入するのか。

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ひと夏を越して火星よカメレオンはなぜ色を変えるのか これは木版による多色印刷で創られた火星の最も初期のものである。彫版師の神業のような技術がなければ、この美しい形姿も、そしてこの深い夢見るような色も得られなかったのである。そして火星に環が潜んでいたことにも気づかなかったかもしれない。

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風が吹くと行方不明者が出るという三月海の基礎を学ぶ 心外であると三月は言った。海について少しは知っている方だと思っていた。でもそれは三月海のことだけだったんだなと。

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秋の短歌

2024/9-12

古い木と砂と石の家を見に行く(本が無くて)古い木ががっかりしたような声を出した ある作家に「せみの図書館」があると教えられた。あるとすればここかと当たりをつけたのだが図書館はなかった。道端で、本を一冊ひろっただけだった。

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ガイド

冬近き森の手引書さまざまな動物たちの群れの呼び方 銀河ヒッチハイク・ガイド、掃除婦のための手引書、魔物のためのニューヨーク案内・・・、本棚にはいっぱいのガイドブックが並んでいる。なのにどれもフィクションなんだものな。

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ラファエロ

階上へ階上へロバ六頭が運び込むバチカン美術館のラファエロ バチカン美術館の二重螺旋階段。十六世紀当時のバチカンには、このような新しい構造の階段が生まれる背景があった。宮殿のなかに大量の荷物を運び上げるロバや馬の為には、こうした傾斜路が必要だったというわけである。では『アテナイの学堂』もロバによって搬入されたのかと思ったが、あれはフレスコ画だった。階上からイーヨーという声がきこえる。

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帽子

ボキャブラリを増やす課題を引き受けてありとあらゆるモネの睡蓮 ブイヤベースを食べるときの礼帽。それは矜恃とか自信ではなく、ユーモアとかあそびの感覚でもなく、もちろん幻想とか象徴とか比喩という言葉などもってのほか、これはまさにブイヤベースを食べるときの礼帽なのである。

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夏の短歌

短歌とマイクロノベルを書いています(24/5~8)

バス

笙の音が流れる市営バスの中まほろば楽器店の広告 ほんとについ最近、子供がひとりで絵を描くことができるようになったので、クレヨンとスケッチブックとバスを2台、買いこんできた。早速バスの絵を描いている。なかなか上手だ。もう一台のバスの乗客が絵をのぞき込んで拍手するくらいに。

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ケース

電柱に電線絵画展の広告見上げれば夏空いっぱいの架空ケーブル 土星日食を見に行かないか。急いだほうがいい。月の向こうに入って出てこないケースがあるから。環だけが出てこないケースがあるから。衛星だけが出てこないケースもあるよ。145個の衛星全部かどうかはわからないケースも。

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パン

パンを切るパンを手渡す打ち粉まみれになんてなっていないふりをしながら 竈のなかのパンが、ころがっておちて、竈河岸までまっすぐに逃げるはずが、右に四回まがって、竈にもどった。まだ火は落ちていなかった。

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凛凛と声響かせて地下道を美しきとおめがね持つ人ら行く 円形の部屋がほしい。というか、円形の書架がほしいのである。円形をしているというだけで、そこに別の空間、別の世界、別の宇宙が広がっているように思える。文字の妖精、言葉の精霊が降りてくるとすれば、それは円形の書架がある部屋にであると、そう思えてくるのである。

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冬の短歌(Advent Calendar 2023)

Advent Calendarの形式で短歌とマイクロノベルを書いています。 12/1~12/25(終わり)

冬の短歌㉕(Advent Calendar 2023)

みんなケーキとかワッフルとかを食べているいったい雪食いは何処へ行ったのか 雪がすきです。だからきみはぶつぶつもんくを言っています。家のなかが雪でいっぱい(あっ、まちがえた!)雪のなかで家がいっぱい になってしまったからです。 https://adventar.org/calendars/8598

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冬の短歌㉔(Advent Calendar 2023)

雪道で自分の靴とぴったりの(きよしこのよる)足跡と逢う 客は入っているが、意外に静かである。みんな、パンケーキだとかワッフルだとかを食べている。いったいスノウ・イーターは何処へ行ったのか、と思わなくもない。 https://adventar.org/calendars/8598

冬の短歌㉓(Advent Calendar 2023)

美しき母音のひびきみちゆきて歌う少女の卵形の舌 いま、同時に4冊の本を読んでいます。テニソンの詩集と「虚栄の市」とキプリングの「高原平話」と、あと、笑わないでください、「若草物語」を読んでいます。新しい職場のメンズエステティックサロンで「若草物語」を読まないで育ったのは私ひとりのようです。でも誰にも言いませんでした。黙ってその場を離れて(本屋さんに行き)、先月分のおこづかいから112円を出して本を買いました。今度誰かがライム・ピクルスのことを言ったら、何を話しているかわたし

冬の短歌㉒(Advent Calendar 2023)

犬たちは動物文化センターで二時間ごとに五分話した 「スライム」は本来、ある種の性状を持った物質(どろどろしたもの、ぬるぬるしたものなど)を大ざっぱに指す言葉であった。転じて、ゲル状、アメーバ状の半固形の物体の総称として使われるようになり、その後アメリカでは、触って遊ぶための玩具も生まれた。せいぜいがアメーバ状の小さな怪物という扱い。だから、86年の日本で、水滴状の体にグミ状の構造を持つ新たなスライム像が生み出されたことは、驚嘆すべき発明であると言える。おまけに、大きな丸い目

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本、ときどき音楽

Book,Music,with Occasional Movie

エドワードのゑ(エドワード・ケアリーを詠む)

ジャック・オー・ランタン二歳のきみがくり抜いた三角の目の奥のうすやみ 五首あったのに四首しかないそれはもう鳥が攫っていってしまったよ 飛びまわるムクドリモドキの下ぼくがやる気なくしゃがみこんでいた理由 夏、若き陽炎は立つアイアマンガーのような完璧な背筋で ドアの把手砂糖切り器とゼリー用流し型誰の目にも見えない色のエドワード・ケアリー

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NO TIME TO(ビリー・アイリッシュを詠む)

 だからベッドで話そうよってきみはいうけれどビリーの鼻は血まみれ (怪しかることならざるもすみやかにわたしの枕カバーを返せ) きみはいつも一緒に歌いたがるけど (踊ればいいさ) もう歌ってる時間はないよ 抽斗のなかを調べる時間 もう歌ってる時間はないよ (世界は変わったのボンド中佐) (わたしのまくらかばーを返せ) 死んでいる時間はないよ むきだしのまくらよおまえってさびしいかたち (踊ればいいさ) (まくらが目を覚ますとき) 抽斗のなかまくらカバーは だからベッドで話そう

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2020火星の旅(ファンファーレ・チォカリーアを詠む)

火星へと運ばれてゆく金色のチューバとっても金色である 鳴らせ、鳴らせ、わたしはここにいてあなたは遠くにいるのだから ロマの男、夜の終わりを見たようなホルンを吹けり200ビートで 地図にない村から水のない星へ小楽隊大疾走せり チューバは無事に鳴るのだろうかダイモスとフォボスの浮かぶ空暗かりき

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Poets tryin' to write

空を見れば大小の熊眠りおり ひかりはきっと答えではない レディ・ガガが Poets tryin' to write と歌う。あなたは腕が痛い手が動かない指が痒い。千の理由。書かない。「Poets tryin' to write」「Poets tryin' to write」二つの提案。「Poets tryin' to write」「Poets tryin' to write」「Poets tryin' to write」さらに三つの提案。彼女の歌声でこの部屋が埋まるまで。あ

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