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2022年ベストトラック30

私立恵比寿中学「ハッピーエンドとそれから」

上半期選出。エビ中も「過ぎ去ったあの恋」を歌うようなお年頃になった。たしかに一つの物語は終止符が打たれた。打たれた後には何も残らないのだろうか。いや、簡単には消え得ない。しかしながら、この楽曲のリズムのように思った以上に軽やかに記憶は褪せ、思い出の場所も者も移ろっていく。無常だ。俺は年を取った大人だからその無常さの持つ苦みを味わおう。

UA「微熱」

二人の物語のピークから離別までがたおやかかつ叙情的に歌われている。別れた後、これまでの二人の時間は無駄なものとなってしまうのか。「それでも歌うわ あなたと 生きた日々のあの歌を」とは、悔恨の言葉ではなくあの頃の綺麗なわたしとあなたを大切にして生きていこうねという、未来への希望の言葉だ。

DAOKO&Yohji Igarashi「spoopy」

俺の年齢とか彼女の出自とか踏まえて、「冒険でしょでしょ?どーまんせーまん巫女みこナースにみくみくだー」とかネットカルチャー的なワードセンスがビタッとハマった一曲だった。ハイパーポップ的意匠でもなく、あくまでフロアライクなのも好印象。

THE2「恋のジャーナル」

上半期選出。サカナクション山口プロデュース楽曲ということで、中華風なイントロとか、「ショック!」などを彷彿とさせるトーキング・ヘッズ的な全体の雰囲気とか、正直鼻につくっちゃつく。しかし冒頭から早く刻まれるベースや語感を重視した歌詞に持ってかれてしまった。。。

lyrical school「Wings」

上半期選出。この体制で何曲もキラーチューンを作ってきたが、それらをもとんでもないとこから見下ろすかの如くドロップされたこの曲。浮遊感のある、しかし各所でのキメはおろそかにしない名曲。「I wanna」がなけりゃ夢は現実になりえない。みんなに無理といわれようがその口なんて黙らせてきゃいい。この羽は飛ぶためについてるんだって言うっきゃないでしょ、そうじゃないと人生つまらないでしょ。個人的に一番アガったバースは「セレブよりもエレガント~Sickなバースをspitするベティガール」。まさにじゃん。

Cody・Lee(李)「愛してますっ!」

上半期選出。なぁぁぁぁぁあにが「愛してます」だよ。歌詞で表している「愛」って全部性欲でしかないし、ベボベの「愛してる」みたいな「愛してます」という言葉への逡巡がなく、「当然聖なる言葉」としての「愛してます」でしかなくて、その迂闊さもどうかと思うよ。てかパートナーと「オオギリッシュNight」なんてよう見切らん…あれは「幼稚な男性性」の磁場の中だけで笑えるものだと思うし、その中だからこそ俺も笑っちゃってるしね…と言いつつ、さ。このくらい迂闊に「愛してますっ!」て勢いよく言えるような瞬間が人生に必要な気がする。それがいくら幼稚で愚かなものでも、このくらいポップに華々しく奏でられるとこれもいいんだと思ってしまう。

ばってん少女隊「虹ノ湊」

上半期選出。昨年の「わたし、恋始めたってよ!」から引き続き好調だったばっしょー。今作も九州の地方アイドルとして、曲名然り「3号線」というワード然り、地域に根差したものとなっている。音像も歌唱も軽やか且つ爽やかでこの夏の一曲としてもベストな一曲だった。

佐野元春 & THE COYOTE BAND「さよならメランコリア」

この国の、またはこの世界の社会的政治的混乱・危機を鋭くえぐるリリックにもシビれたが、そのような状況だとして悲観的になるのではなく、楽曲を通した鼓舞として「そう、ぶち上げろ魂」というフレーズをチョイスしたことにシビれきった。コピーとしても強く、軽みもありながら、芯を食っている、いや芯を食い過ぎているフレーズだ。それが、この高揚するリズムに乗っているんだから、Dos Monos「王墓」「必要なのはイムズじゃねえよリズム」とあるが、その二本の柱が屹立しているこの曲の存在を挙げないわけがない。

DOPING PANDA「Imagine」

上半期選出。復活後の楽曲として、変に気張らないシャープでソリッドなバンドサウンドがバシッとハマっていた。それはスターのソロでも行っていたことではあるものの、三人が音を出すと「DOPING PANDA」の刻印が捺されるのだから面白い。

Megan Thee Stallion & Dua Lipa「Sweetest Pie」

2020年の『Future Nostalgia』から引き続きデュア・リパのダンスチューンに魅了され続けている。メーガン・ジー・スタリオンの直接的な描写と織り交ぜながら、女性優位な誘い文句がつづられている。リリックが下品になり過ぎないのは、この最高のドライブの運転手である彼女たちのハンドルさばきゆえ。この甘い甘いパイ、食べてるのではなく、食べさせていただいている。いや、いつの間にか、食べられている。

ずっと真夜中でいいのに。「夏枯れ」

歌のメロディや歌詞は俺からするとsupercell「君の知らない物語」の系譜に位置づけられるようなもので、懐かしいというより「ウッ」とさえ来るものではあるけど、もう音色の選択が素晴らしすぎて。今年の『Funk Wav Bounces,Vol.2』の楽曲とつないで全く遜色ない音の連なり。最後のギターの音まで徹頭徹尾、音の選択に狂いがない。

adieu「ワイン」

上半期では「旅立ち」を選出していたadieu。Nariaki Obukuro~!やっぱやるなあ。adieuの歌唱と小袋氏のコーラス、DURANの溢れん想いを抑制させた情感あるギターの絡み合いが、シンプルなフックの言葉に表面張力をもたらすほどに感情を注いでいる。香りだけ楽しむはずが、つい飲み過ぎてしまった。泥酔しました。

Dos Monos「DOG EATS GOD (feat.筒井康隆)」

作品の発想の時点で勝利してるんだよな。筒井康隆本人の作品朗読に曲付けて自分たちもラップして、組曲化させるってどんだけおもしれえんだよ。今作はTAITANのラップに爆アガりだった。「奇奇怪怪明解事典」のリスナーだとアガるフレーズがあり、「大量消耗品」のフロウだったり「ウッ」のリフレインだったりと工夫に富んでて最高。

諭吉佳作/men「誰も何もみてないしばれない」

正直「からだポータブル」あたりでは難しく感じて、ついていけなさを感じていた諭吉佳作/men。しかしながら、今年の諸作品はこれまでのシグネチャーを保ちつつも、ポピュラリティを獲得しているように聞こえる(俺が慣れてきただけか?)。特にこの曲は、タイトルにもなっているフレーズが強力。非常にロマンティックでありながら不穏。それに沿うようにリフレインされる低音、リズムパターンは不穏でありながら、歌のメロディは高めで甘めという匠のなせる業ですよ。

RYUTist & 石若駿「うらぎりもの」

『ファルセット』以降のRYUTistの楽曲は、いわゆるアイドルポップの枠組み(嗚呼、こんな繊細な言い回しをテキトーに使ってしまう)からはみ出んとするものが少なくないが、この楽曲のリズムパターンとかエグすぎでは…。しかしながら、彼女らのハーモニーが感じられるサビを聴くとRYUTistの曲だ、と頷けてしまうのだから恐ろしい。

Calvin Harris「New To You」

「強い気持ち・強い愛」を楽しむかのような感覚。イントロのストリングスのリフを聴くだけで、「これだ!!!!!!」と細胞が叫ぶんだよな。フィリーソウル的な絢爛さ、筒美京平的な芳醇な歌謡曲の香りに抗えない。狂喜からの陶酔。ウットリしてしまうだろ。

The Mirraz「Lu Wei」

今作が収録された『Cocoa with Marshmallows』は、「00年代的ロックサウンドを更に追い求めたアルバム」だそうで、英語の発音を日本語で表現したような所謂、発音重視的な歌詞が多くある。「Strawberry Fields Forever」をよりギラギラと万華鏡的に輝かせたようなトラックの上で、霞みゆくエフェクトに乗せて歌われるこの曲の言葉は「価値のないまま在るだけで 何もないままそのままでOk ok ok ok」と切実だ。巻けないで、ミイラズ!

サニーデイ・サービス「ロンリー・プラネット・フォーエバー」

正直、詳しくはおかざきよしともさんによる『DOKI DOKI』記事を読んだらよいと思う。いやー、もうこういう真正面からの「Don't Look Back in Anger」歌謡、好きに決まってるでしょ…。それに尽きる。

Alvvays「Easy On Your Own?」

TLで彼女たちのアルバムが激賞されてて、今年初めて触れたAlvvays。この曲にビビッとキたのは、フックとなる「If you don't~」のメロディの入り方がきのこ帝国みがあるからですし、俺はそれが味わいたいがために聞いてます、この曲。「フェイクワールドワンダーランド」後にこういうのが来てたら…と夢想してしまう。

ウルフルズ「アイズ」

スッ・・・と耳と心に入り込んでくる、温かみのあるキャッチーなポップス。「合図は目と目でオッケー」というリフレインがたまんないんだよなあ。「よんでコールミー」もしかり、三人体制のウルフルズ、俺好きなの多いかも。

アメフラっシ「Love is love」

YKOYKO氏のこのツイートに言いたいことは詰まっている…。だけで終えるのもちょっとね。スタダからこういう楽曲が来るとは!個人的には東京女子流に「深海」などのディープハウス・トロピカルハウスとかやってた路線の先にこういうのをして欲しかった…!そんな世迷言はさておき、90sハウス取り入れた楽曲としてバキバキにクールで最高です。

Base Ball Bear「海になりたい part.3」

THEベボベ乱れ撃ちな歌詞と楽曲だなというアニバーサリーチューン!「君」にボーイミーツガール的な「君」だけでなく、「音楽/歌詞」を重ねてる所に詞作術の熟成を感じさせ、曲も「いまは僕の目を見て」のギターの差し引きを踏まえたものに仕上がっており、単純な「皆が好きなあの頃のベボベの焼き回し」を回避している。「踏み込むペダル 歪む文学」が超好きなフレーズで、「ペダル」はギターのボリュームペダル?エフェクター?の事だと捉えると、それによって詩という文学が歌詞に歪むということを綴っていて、あくまで「歌詞」を書いているのだという誇りと信念を感じる。

米津玄師「KICK BACK」

「M八七」に続き、今作もタイアップ巧者過ぎるぜ米津玄師。「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR(モー娘。「そうだ!We're ALIVE」)」の引用の部分聞くと、どうしてもシドの吉開学のPVが頭に浮かぶし、そういうノイズバチバチの意地悪な引っ張り方だなと思う。こういう意地悪さ、大好物です。

THE SPELLBOUND「すべてがそこにありますように。」

セルフタイトルのアルバム収録曲は(「スカイスクレイパー」は割と好きだけど)どれも高品質かつカタチが出来上がり過ぎていてその構築美に乗り切れなかった。本作はそのクリエイティブを踏襲しつつも、バンドセットによる音像であることや、ボーカルの滑らかに言葉のリズムを変えて推進していく突進力に射抜かれた。

NewJeans「Ditto」

デビュー曲「Attention」もチルな音像とサビのファルセットの抜け具合がヒットして好きだったのだけど、年末にドロップされたこの新曲はその勢いを加速させる仕上がり。リズムもさることながら、上げ過ぎないフックのメロディ、「ditto」に合わせた軽めの押韻がバツグン。またこのライブアレンジが…!

柴田聡子「ぼちぼち銀河」

上半期選出。この人の言語感覚もエグいなと思ってたけど、この曲はそのエグさが極まってる。一聴すると「ぼちぼち行こうかねー」以外日本語かどうかも怪しく聞こえる。歌詞を見ると普通に文章として読めるので、彼女の言語感覚のエグさというのはリズムへの乗せ方、言葉を音として配置する感覚の鋭さを指すのだと確認する。彼女のこの感覚の鋭敏さはぼちぼち銀河を突き抜ける。

陰陽座「茨木童子」

陰陽座イズバック!ほんほんえーい!と快哉を上げざるを得ない快心の一曲。(確か)黒猫さんの喉のコンディションが活動休止の要因だったと思うのだけど、それを感じさせない……活動休止前以上のアクロバティックな歌唱よ……!重轟音によるリフもカッチョええです。年明けのアルバムを楽しみに待つばかりです。

PUNPEE、漢 a.k.a gami「Messiah Complex」

PUNPEEの声はエフェクトがかかって霞がかった聞こえ方をするのに対し、漢の声は非常にクリアに聞こえる。それぞれの現在のスタンスに対するクリア度を表しているのか?アンダーグラウンドからの声はかくも明瞭に。2人の対談も面白かった。

TWEEDEES「Day Dream」

「秒針に急かされ 日々は続くけれど 突然 目が覚めるような 喜びがあると信じて生きていく」この「喜び」とは棚から牡丹餅ではなく、粛々とかつ前向きに、傷を負いながらも駆けてった先に出会えるものに違いない。沖井印の感じられるバンドサウンドに清浦さんの歌声が高らかに揺蕩い世界の果てまで寄り添ってくれる…、そんな白昼夢を見ながら。

Drake「Massive」

今年のリリスクの開演曲として鳴ってて、マジで「フルで流しきって開演してくれ」と思った曲。今年はビヨンセもドレイクもハウスの…、いや俺「ハウス」というジャンル全然わからんし、ドレイクもこの曲以外って数曲しか聞いてないけども、、、、この曲を聴いた身体は正直だ。踊りたくならないわけがないだろ。


下半期の好きな曲プレイリストは下に。



そして、この30曲をまとめたプレイリストは下に!

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