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河野大臣、中大生に語る。-現代日本の課題とは-

 今月15日(土)、中央大学政治学会主催の秋講演会第1弾がCスクエア2階中ホールにて行われた。そこでは現デジタル相・河野太郎氏が講演者として登壇した。

講演会に参加したのは、事前に実施された学内の抽選で当選した約300名。1時間半近くにわたって講演・質疑応答の時間が設けられ、学生たちはみな現職大臣の話に傾聴した。

学内に掲示されたポスター

 河野氏といえば、つい先日マイナンバーカード実質義務化を発表した大臣として記憶に新しいだろう。以前にも、深夜の大臣就任会見について「やめた方がいい」と意見したことや、霞ヶ関の押印を廃止する政策を実施してきたことから、改革派のイメージが強いかもしれない。
 筆者としては、河野氏のメディア露出が多いからか、テレビ出演を見てイメージしていた人物像通りであった。

 河野氏の主張・政策の詳細は以下の公式サイトから。

講演会の内容

語学のススメ

 まず最初に、江戸の小話(※1)を引き合いに出し、海外へ目を向けてみてはどうか、一度海外で武者修行をしてみてはどうかと学生たちに語った。

年を重ねてからでは、海外へ行こうとしても障壁が多い。だからこそ、体力も記憶力もある若いうちから語学を勉強し、グローバルスタンダードを知るべきだという。

特に日本の就活が国内で完結していることを危惧しており、これでは日本からグローバル人材が生まれず、個々人にとってもマイナスだとする。

 河野氏が海外をこれほどまでに強く推すのは、『経済の発展しているところに面白い仕事がある』という考えからだ。
河野氏は、米国のジョージタウン大学に進学したほか、外務大臣も務めた経験を有しているが故に、その言葉は重い。

(※1 江戸小話)
『ある時夜道を歩いていたら、どぶで探し物をしている男がいた。
その男に何を探しているのか尋ねてみると財布を落としてしまったという。
そこで男と一緒に小一時間どぶを探してみたが一向に見つからない。いよいよしびれを切らし、男にどのへんで落としたのか聞いてみることにした。
すると、その男は道路の反対側を指さし、あの辺で落としたんだと言った。なんで道路の反対側で落としたのに、こっちを探しているんだと男に聞いてみると、こっちは街灯があって明るいけどあっちは真っ暗だから、と男は答えたのだった…』

というような小話である。
就活では、大して国外の企業を調べようともせず、日本企業ばかりに固執している我々学生の大半は、どぶで探し物をしていた男と同様なのかもしれない。

日本のデジタル化の問題点

 財政赤字を抱える日本の中枢・霞ヶ関は、支出を減らすために旧来のアナログ体質を維持してきた。その結果、国家行政システムのデジタル移行は、世界各国の後塵を拝することとなったわけだ。
同時に、省庁内でのIT人材不足に陥り、IT関連業務については民間に常に依存する構造となってしまったのだと説明する。

例えば、以前ワクチン大臣を務めていた際、当時の接種状況を把握するシステムがファックスによるものであったこと、今現在もフロッピーディスクを利用していることなどを指摘。

また、現在河野氏が推進しているマイナンバーカードについても、宮城県での実験(以下の記事参照)を例に挙げ、その普及とDXの必要性を強く訴えた。

茨城県境町の視察について

 上記に引き続き、河野氏は日本デジタル化の遅れを感じた例として、茨城県境町視察時の出来事を語った。

境町は、2020年に自治体として初めて無人バス走行を実現させた町だ。現在は新スマート物流を掲げ、2023年度中にドローン配達開始を目指す。

茨城県境町におけるドローンや自動運転バスを活用した 新スマート物流の実用化に向けて、2022年10月から実証を開始 〜2023年度中をめどに、日本初となる 市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指して〜 – エアロネクスト – Aeronext| ドローン・アーキテクチャー研究所茨城県境町におけるドローンや自動運転バスを活用した 新スマート物流の実用化に向けて、2022年10月から実証を開始 〜2023年度中をめどに、日本初となる 市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指して〜 | エアロネクスト - Aeronext| ドローン・アーキテクチャー研究所 茨城県の境町(町長:橋本 正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路 圭輔、以下「エアロネ aeronext.co.jp

 しかし河野氏が視察した時点の制度では、ドローンを一度運転させる許可を得るのにも数日かかるとのことで、飛行する場面はお目にかかれなかったという。
更にドローンは道路上を走行しなければならないだとか、赤信号では止まらなければいけないなどといったルールがあったとし、これには聞いていた学生達も思わず失笑する。

河野氏は、このような非合理的な現行の規制を一つずつ撤廃していく構えだと、改めて強調した。

まとめ

 短い時間ではあったが、現代日本の問題点が数多く指摘された。講演会参加者はもちろんのこと、今を生きる世代すべての人にとって真摯に受け止めねばならない問題ばかりだろう。

そしてデジタル庁の目指す、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」の実現には、河野氏の語った合理的精神を、一人ひとりが自らのコミットメントとできるか否かにかかってくると言えよう。

会場の中央大学Cスクエア

主催:中央大学学術連盟 政治学会

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