占い師が観た膝枕 〜ヒサコ編〜
※こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】のストーリーから生まれたスピンオフです。(今井雅子さんには許可をいただいてます)
このストーリーを読んで、いろいろな妄想が膨らんでおりましたが、昨日、鑑定所に出演している時にふと「ヒサコが相談に来たら」を突然思いついてしまい(笑) 忘れないうちにnoteに綴りました。
原作のテーマ「究極の愛のカタチ」と「世にも奇妙な物語」に寄せて行ったらいつの間にかホラーに。
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狂気な女性がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️
できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)
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サトウ純子作 「占い師が観た膝枕 〜ヒサコ編〜」
急に雨が降り出した。
雨というのはいろいろなものを運んでくる。
おまけに突然降り始める雨というのは、招かざるものを連れてくることがあるので特に注意が必要だ。
「家を出る時は陽が射していたのに」
占い師は、傘立てと一緒に清め塩を持って鑑定所の扉を開けた。
「あ、あのぉ」
目の前に一人の女性がたたずんでいた。
その姿が雨の景色の一つとして馴染みすぎていて気配が感じられず、声を掛けられなければ、そのまま通り過ぎてしまうところだった。
「観てもらいたいんですけどぉ…」
まだオープンまでには30分ほどある。
本来なら営業時間にまた来てもらうように促すのだが、その女性には見覚えがあった。
おまけに、この突然の雨のせいか、少し身体が濡れている。
「準備にあと30分くらいかかるのですが、それでもよろしければ中でお待ちになりますか?」
占い師が問いかけると、女性はコクリと頷いた。
待合室にお茶を持って行った時に気付いたのだが、その女性は先週来たお客様のようだった。
付き合っている人がいるが、なかなか体の関係を持ってくれない。大事にしてくれていると思っていたのだが、これだけ部屋に通っているのに、さすがに少しおかしいと思いはじめ…。
確か、そんな内容だった。
「それにですね。あの人の部屋にいると、誰かが息を潜めてこちらをジッと見ている気がするんです」
他に女がいるのかもしれない。
大きなため息とともに、ピタピタの黒のカットソーからはみ出ている胸の谷間が一緒に揺れる。
この、誘惑の塊のような身体を目の前にして、手を出さない男がいる、というのは、彼女にとっては最大の屈辱なのかもしれない。その時は本気でそう思った。
ただ、今日は、その時のイケイケな印象とは真逆の、ふわっとしたベージュのブラウスに、裾がレースになっている白いスカートを履いていた。
すぐに気付けなかったのは、そのせいかもしれない。
「お待たせいたしました。本日はどのようなお悩みでしょうか?」
女性は受付表を手に、虚ろな目で占い師の方を見た。
この上目遣いの感じ、そして受付票に書かれている文字。間違いない。先週来た「ヒサコ」だ。
「当たっていました。私、二股かけられてました」
ヒサコは、親指の爪をカチカチと噛みながら瞳を小刻みに左右に動かした。
「それで、今日は人相を観てもらいたくて」
ヒサコはゴソゴソとバッグの中からスマートフォンを取り出すと、ネイルが剥がれかけた人差し指を、画面に向けて滑らしはじめた。
「きっと陰気な女に違いない。清楚なふりをしてミニスカート履いて。あーやだやだ。足で男を誘うなんて。ホント汚らわしい」
ヒサコはブツブツ言いながら、形のいい唇を怒りで震わせている。
一瞬指を止め、その瞳を大きく見開くと、スマートフォンの画面を占い師に突き付けて言った。
「私、この女より美人ですよね?私の方が魅力的ですよね?」
その画面には、女の腰から下が正座の形で表現されているおもちゃのような物が写っている。
ヴァージンスノー膝が自慢◆箱入り娘膝枕…?
「人相…ですか?」
占い師は戸惑った。
人形やイラストのような実在しないようなものであっても、顔さえあれば、ある程度の傾向は話すことができる。
ただ、この膝枕には「顔」がない。
「どんな女か知りたいんです」
私が二股にかけられるような女だから、きっと美人なんでしょ?清楚で気品があって。守ってあげたいようなか弱さもあって。美人と可愛らしさを両方持ち合わせているとか、天使のような笑顔を持っているとか。いや、案外妖艶な部分を持っているのかもしれない。そのギャップがまた、たまらない、とか。そうよね。そういうのもあるかもしれない。
「ああ、だったら仕方がない。せめてそう思いたい」
ヒサコはそう早口で捲し立てると、今度は小指の爪をパチンパチンと噛み弾きはじめた。
その表情の真剣さが、ただごとではない。
雨が更に激しさを増し、同時にパチンパチンという音が天井からも響きはじめる。
「そうか。あの人にとって、顔や胸なんて関係ないんですね」
『あの人にとって』の部分で斜め横に立てかけてあった黒鏡(ブラックミラー)が一瞬、雷を反射したような光を放ち、一つの映像を写し始めた。
ヒサコが、ノコギリで自分の腰を切ろうとしている姿だった。
占い師が驚いてヒサコの方に向き直ると、そこにヒサコの姿はなかった。
体脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する◆ぽっちゃり膝枕
テーブルの上に残されたスマートフォンの画面には、そのカタログページが表示されていた。
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※6/8 なんと⁉️ 今井さんのエピローグからの流れで徳田さんが読んでくださいました!ありがとうございます!
※ういよさんのアイデアをいただき、マニキュア→ジェルネイル→ネイルに変更しました!ういよさん。ありがとうございます!
※今井さんからのアドバイスで、正式タイトルに「サトウ純子作」と、名前を入れました。いろいろと繋げてくださり、本当にありがとうございます!
※6/9 きぃくんママさんが二次創作してくださいました💓
※6/10 理恵さんがものすごく素敵な画像をつくってくださいました✨ 感動で息をするのを忘れてしまうほどでした😭感涙 May Flower 理恵さん。本当に、本当にありがとうございました❤️
※6/13 タイトルと画像に「〜ヒサコ編〜」を追加
※6/21 May Flower 理恵さんが朗読してくださいました⭐️ ヒサコが可愛くて惚れてしまいそうでした😍 ありがとうございます💓
※6/22 徳田さんが「朗読練習場」で朗読してくださいました⭐️ 爪を噛んでいるパチパチの音を入れてくださり、狂気さが倍増でした‼️ありがとうございます❣️
※9/2 Comariさん、水野智苗さん、小羽さんによる三膝突き合わせての膝枕リレーで「ヒサコ編」と「宅配便の男編」を読んでくださいました❗️
※9/4、9/6と、小羽さんが読んでくださいました☺️
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