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パパ様ゆかりの銘醸ワイン(後編)

フランス・アヴィニョン・シャトーヌフ・デュ・パープ

村中の路上にワイン・スタンド始め、サラミ、ハムなどの加工肉、地元産のオリーブ、民芸品などの屋台が立ち並ぶ。

ワインの屋台立ち並ぶ村の中心街で

オリーブは南仏プロヴァンス地方の特産物。軽く塩漬けしたオリーブはワインのおつまみにも最適。
村の入り口で、入場料代わりの「ヴェレイゾン祭特製グラス」を購入すると、ワイン・スタンドでのデゲスタション(試飲)は飲み放題。特製グラスの料金は5ユーロ(約700円:取材時)
暑い8月初旬、21時頃まで明るいので、多くの人たちは夕刻から祭りの会場へ。3日間の会期中、フランス各地から約3万人が訪れる。

村の中心街にはワイナリーの屋台が立ち並ぶ。屋台を廻りながら、利き酒してワインを6本、12本、と大量に購入している人もいる。村には、ワイナリーと契約したワイン・ブティックがいくつもあり、お目当てのワイナリーのワインを利き酒をしながら購入している人もいる。

中世歴史絵巻のパレード

会期中、村外れに中世を再現した村が造営される。村民たちが中世の衣装を着て、仕事や食事を楽しんでいた。

夕闇が迫る21時頃、中世を再現した村から聞こえてくる音楽と共に、手に手に松明をもった行列が始まる。十字軍の衣装を着た軍隊、大司教、枢機卿、教皇の衣装をまとった聖職者達に扮する一団も登場し、祭りのパレードで歴史絵巻を展開している。

シャトーヌフ・デュ・パープの守護聖人は福者ピエール・ド・リュクサンブールであるが、同地のブドウ畑の守護聖人は聖マルコ。聖人の記念日(4月25日)に教会で記念日のミサがあり、ワイン業者主催の祝祭イヴェントがある。ローヌ河を挟んだシャトーヌフ・デュ・パープの対岸は、これまたフランスの最良のロゼ・ワインとの評判が高い、美しい鮮やかな珊瑚朱色で知られるタヴェル(Tavel)ワインの特産地。  グルメのパパ様たちは、銘醸ワインには目がないようだ。

祭事の会期中、フランス各地から芸人が約200名集結し、中世の楽器を奏で、祭りの情緒を盛り上げる。
子どもたちも中世の戦士に扮し、ちゃんばらゴッゴならぬ騎士の剣さばきを披露。
12世紀から13世紀にかけて、南仏から十字軍兵士が多く出征していることから、プロヴァンス地方の祭事パレードにはしばしば十字軍兵士たちも参加。

ちょっと寄り道

アヴィニョンの教皇宮殿

Palais des papes 

アヴィニョンの最初の教皇クレメンス5世は、アヴィニョンのドメニコ会修道院で居住していたので当初は教皇宮殿はなかった。二代目の教皇ヨハネ22世はアヴィニョン司教であったことから、そのまま司教館を教皇館としていた。現存するアヴィニョン教皇宮殿の建設は、三代目の教皇ベネディクト12世により開始され、約7年の歳月をかけて、現在旧宮殿(Palais vieux)と言われている部分を完成させた。その後を継いだクレメンス6世が新宮殿(Palais neuf)を追加した。重厚な壁で覆われた宮殿には銃口もあり、宮殿というよりむしろ城塞ともいえる。18世紀末のフランス革命時、アヴィニヨンはフランス内唯一の教皇領の飛び地であったため教皇勢力と革命支持の愛国派の確執の結果、殺戮の修羅場となり、宮殿内は屍累々となった時期もあった。その後、19世紀末にフランス軍の兵舎となっていた。20世紀末から宮殿内は展示場としても利用されるようになり、ピカソ、マチスなど、南仏プロヴァンス地方ゆかりの芸術家たちの特別展が期間限定で開催されるようになった。


聖人録

福者ピエール・ド・リュクサンブール

Pierre de Luxembourg

福者ピエール・ド・リュクサンブール(1369-1387) は、1369年フランス北部のミューズに貴族の子として生まれる。幼い頃から貧者に施しをする善良な子で、敬虔で慈悲深い少年に育ち、パリで神学を学び、優秀な成績を修めた。教皇クレメンス7世の強力な後ろ盾で、15歳で生まれ故郷に近いフランス北東部の主要都市メスの司教、17歳で枢機卿に叙任された。贅を尽くしていたアヴィニョンの教皇たちの宮殿生活とは対照的に、ピエールは質素で禁欲的な生活を送っていた。厳格な禁欲、断食が災いし、18歳になる直前、拒食症で亡くなった。死後、本人の希望で貧者の共同墓地に葬られていたが、彼を慕う貧者たちが共同墓地を訪れると数々の奇跡が起こった。後日それを知った弟が、ピエールの遺体を聖セレスト教会に移葬した。後にクレメンス7世の遺体も葬られた。生前、シャトーヌフ・デュ・パープで祈りを捧げていた折、ピエールのもとにキリストが現れたことから、その場所に後に教会が築かれた。また幼い頃、貧者のために館から食料を持ち出し、父に見つかり咎められた際、マントの下から現れたのが薔薇だった、という逸話がある。教皇クレメンス7世から厚遇を受け、後に福者に列福したことから、アヴィニョンとシャトーヌフ・デュ・パープの守護聖人となっている。福者が守護聖人になるのはフランスでは非常に珍しい。


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