どれだけ高尚な思想を洗練させても、どこまでも現実は現実で、肉体は老い、腹は減り、糞は出て、誰かを憎み、誰かを愛で、いつまでたっても我執を捨てられず、悟りは得られない。没頭している間は神になったような気さえするのに、眠気と空腹が神を人間に戻してしまう。全てを愛そうという誓いは、たった一言の憎まれ口や陰口で、あっさり破られるのだ。全てを許そうという覚悟は、横暴な老人の振る舞い一つで、あっさり忘却されるのだ。自分の器の矮小さを、自分で量ることは出来なくて、他人を見てあれよりはマシだと思い込む。そんな愚かさや醜さを、自覚出来る程には賢い者は、寧ろ鳥や魚になりたいと思う。