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【随想】宮沢賢治『マリヴロンと少女』

「ええ、それをわたくしはのぞみます。けれどもそれはあなたはいよいよそうでしょう。正しく清くはたらくひとはひとつの大きな芸術を時間のうしろにつくるのです。ごらんなさい。向うの青いそらのなかを一羽の鵠がとんで行きます。鳥はうしろにみなそのあとをもつのです。みんなはそれを見ないでしょうが、わたくしはそれを見るのです。おんなじようにわたくしどもはみなそのあとにひとつの世界をつくって来ます。それがあらゆる人々のいちばん高い芸術です。」
「けれども、あなたは、高く光のそらにかかります。すべて草や花や鳥は、みなあなたをほめて歌います。わたくしはたれにも知られず巨きな森のなかで朽ちてしまうのです。」
「それはあなたも同じです。すべて私に来て、私をかがやかすものは、あなたをもきらめかします。私に与えられたすべてのほめことばは、そのままあなたに贈られます。」

宮沢賢治『マリヴロンと少女』(童話集『新編 銀河鉄道の夜』)新潮社,1989

輝くものを見るとき己もまたその輝きを受けて輝く
ちょうど太陽と月のように
月の輝きは太陽が消えていないと証明する
光があるから闇があるのではない
闇を闇と思う心が光を存在させている
世界があって自分がいるのと全く同じ意味
自分がいるから世界があるのだと気付く
風に舞う木の葉によって風が吹いていると知る
言葉ではなく感覚でこの時空に飛び込み溶け込み拡散して
全てが一つで一つは全てであると理解する
何かが何かを構成している理それもまた無限の循環それは永劫回帰
地獄から煉獄から地上から天国から星から系から銀河から宇宙から
この場所へ来た己の魂を掴む
それは脳髄それは心臓それは皮膚それは光
つまり世界
そのままそのまま
そのままこのまま
それは世界

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