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【随想】宮沢賢治『おきなぐさ』

 うずのしゅげを知っていますか。
 うずのしゅげは、植物学ではおきなぐさと呼ばれますがおきなぐさという名は何だかあのやさしい若い花をあらわさないようにおもいます。
 そんなうずのしゅげとは何のことかと云われても私にはわかったような亦わからないような気がします。

宮沢賢治『おきなぐさ』(童話集『注文の多い料理店』)新潮社,1990

 それはたしかに二つのうずのしゅげのたましいが天の方へ行ったからです。そしてもう追いつけなくなったときひばりはあのみじかい別れの歌を贈ったのだろうと思います。そんなら天上へ行った二つの小さなたましいはどうなったか、私はそれは二つの小さな変光星になったと思います。なぜなら変光星はあるときは黒くて天文台からも見えずあるときは蟻が云ったように赤く光って見えるからです。

同上

ここに燃える光も天頂に輝く炎も等しくこの眼に映る時空間の乱反射。影法師はどこまでも伸びてぐるりと一周して心臓をすり抜けて過去に眠るまで過去が今を訪れるまで。瞬きは瞬間を永遠にする魔法だからこの眼は乾いてピリピリと神経が赤く染まる。何もかもが光のはずなのにより光るもの背景に沈むものがあって分からない。見つめる程に発狂に近付く電流は抵抗される運動は止まらずに疲労の果てに静止した。

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