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【随想】宮沢賢治『ひのきとひなげし』

「そうじゃあないて。おまえたちが青いけし坊主のまんまでがりがり食われてしまったらもう来年はここへは草が生えるだけ、それに第一スターになりたいなんておまえたち、スターて何だか知りもしない癖に。スターというのはな、本当は天井のお星さまのことなんだ。そらあすこへもうお出になっている。もすこしたてばそらいちめんにおでましだ。そうそうオールスターキャストというだろう。オールスターキャストというのがつまりそれだ。つまり双子星座様は双子星座様のところにレオーノ様はレオーノ様のところに、ちゃんと定まった場所でめいめいのきまった光りようをなさるのがオールスターキャスト、な、ところがありがたいもんでスターになりたいなりたいと云っているおまえたちがそのままそっくりスターでな、おまけにオールスターキャストだということになってある。それはこうだ。聴けよ。
 あめなる花をほしと云い
 この世の星を花という。」

宮沢賢治『ひのきとひなげし』(童話集『新編 銀河鉄道の夜』)新潮社,1989

 素直にやりたいことをやればいい。それがその人のやるべきことなのだ。素直さが大切だ。素直に生きようとするのならば、他人の邪魔はしたくない、誰かを傷付けたくない、無意味な殺生はしたくない、健康でいたい、苦しみたくない、楽しく生きたい、みんなで仲良く暮らしたい、笑っていたい、自分の幸せがみんなの幸せであればいい、そう思う筈だろう。自分が苦痛を避けようとするということは、他人に苦痛を与えたくないということなのだ、その筈なのだ。他人を苦しめることを楽しいと思うのは脳が壊れた狂人か偽悪を装う幼稚な人間だ。悪徳、性欲、破壊、汚辱、恐怖、そんなものを好むことが芸術だとか恰好良さだとか考えている奴は思慮が浅く経験が不足した見栄っ張りで薄っぺらなつまらないくだらないどうしようもない人間だ。あるがままでいようが飾り立てようが凡夫の幸せを目指そうが偉大な人物を目指そうが、真摯に本気で全力で最高の人生を送ろうとするのなら他人の苦しみを喜ぶなんてことは出来る訳がないのだ。自分の為に誰かが苦しむ人生なんてのは、どんな功績を残そうが最低の人生だ。他人を犠牲にしてみみっちい現世の小銭稼ぎに腐心するな。素直に生きよう。素直に生きている人は、優しくて、強い。

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