【随想】太宰治『雀こ』
幼少期の思い出はなぜかいつも幻想的で、なぜか冬ばかりを思い出す。
朝陽に煌めく白銀の街、乾いた風にささやかに舞う雪の結晶、氷の槍は微熱に溶け毛糸の手袋を濡らした。
紫色に染まる夕暮れの空。
薄暗い部屋、ストーブの前は特等席、目の渇きを感じながら、夕飯の声が掛かるまでじっと炎を見つめていた。
深々と牡丹雪が降りつもる夜。翌朝の雪かきは大変だけど、そんな夜を眺めているのが好きだった。雪国の夜はどうして暖かい。
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