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トラウマを克服したかみさま

梅雨に入り、ここ出雲も雨が降ったり、やんだりを繰り返している。近年の梅雨は昔のしとしとと雨が降る感じではなく、急に豪雨になる。各地でも災害級の豪雨が頻繁に起こるようになった。今年は何事もなく過ぎるといいのだが・・・。

出雲に降り注ぐ雨は川に流れ、そして最終的に宍道湖に注がれていく。

滋賀県といえば琵琶湖、出雲といえば宍道湖。それほどに出雲の人々には馴染みの湖であり、松江はそれゆえに「水の都」とも呼ばれている。

それでは宍道湖の名前の由来を、皆さんは御存だろうか。実はこれも神話上の人物が深くかかわっている。その神こそが大国主命である。

古代の地理誌「出雲国風土記」の意宇郡の宍道郷(ししぢごう)の由来にこう述べられている。

所造天下大神命(大国主命)が、狩りで追いかけなさった猪の像が、南の山に二つある。猪を追う犬の像、その形は石となっているが、猪と犬以外なにものでもない。今でもなお、存在している。だから、宍道(ししぢ)という。

あぁそうか、大国主命が猪を追いかけたから「宍道(ししぢ)」となったのか、そうなのかぁとそれで普通なら終わりだ。しかし、実は、この名前の理由にも別の深い意味を含んでいることが、調べていくと分かる。

「古事記」に大国主命の物語が述べられている。

大穴牟遅神は、因幡の八上姫に求婚しようとする八十神たちのお供をして因幡におもむいた。気多之前に来たとき、そこに裸の兎がいた。大穴牟遅神がわけを尋ねると、淤岐ノ島から本土に渡ろうと思い、海の鰐を欺いて、その背を踏んでここまで来た。今まさに地上に降りようとする時、鰐を騙したことを告げると、鰐が兎を捕まえて毛を剥ぎ取ってしまった。そこへ通りかかった八十神の教えで、海水を浴びて高山の頂上に伏していたが、海水が乾くにつれて皮膚が風でヒビ割れ、苦痛のあまり泣いていたのだという。かわいそうに思った大穴牟遅神は、兎に水門へ行って真水で体を洗い、蒲の穂を敷いて転がるようにと教えた。教えのとおりにすると、兎の体は元通りになった。「八上姫は、きっと優しい大穴牟遅神(大国主命)の妻になりたいと言われる。」と予言した。

これが実をいうと、大国主命の受難の始まりだった。まさか、お供の大国主命が、矢上姫と結婚できるとは八十神達は思いもしなかっただろう。その結果、八十神達はもの凄く怒った。・・・そして、どうなったか?

大穴牟遅神(オオナムヂ、後の大国主)のたくさんの兄神たち(八十神)は、白兎の予言通り八上比売(ヤガミヒメ)と結婚した大穴牟遅神を憎み、殺してしまおうと企んで大穴牟遅神を伯耆の手間山本(手前の山麓)へ連れて行った。そして「珍しい赤い猪を山の上から追い立てるので下で捕まえろ。そうしなければ殺す」と言いつけておいて、山の麓で待たせている大穴牟遅神へ目掛けて、兄神たちは火で真っ赤に焼いた岩を山の上から落とした。転がり落ちてくる真っ赤な岩を猪として受け止めようとしたため大穴牟遅神の身体がたちまちその赤く焼けた岩膚にこびりついて、焼き潰されて絶命してしまう。これを知った大穴牟遅神の母・刺国若比売は嘆き悲しみ、高天原に上り神産巣日之命(カミムスビ)に救いを求めたところ、赤貝の神・𧏛貝比売(キサガヒヒメ)と蛤の神・蛤貝比売(ウムギヒメ)の2柱の女神が地上に遣わされた。𧏛[3]貝比売が貝殻で大穴牟遅神の体を岩からはがし、蛤貝比売が母乳と清水井の水で練った薬を大穴牟遅神の体に塗りつけた。すると大穴牟遅神は大火傷が忽ち治り元の麗しい姿となって息を吹き返した。

なんと、大国主命は八十神に騙されて、猪と見間違った焼き岩を受け止めようとして、死んでしまった。おそらく死んでしまったといいながら、瀕死の重傷だったのだろう(この当時、死んだら黄泉の国に行くといわれていたから、まだ死んでいたとはいえない)。

さて、生き返った大国主命は、後に猪を見たらどう思うのだろうか。

まさに、「トラウマ」だ!!


その姿を見るのも、その名前を聞くのも、嫌だったに違いない。その大国主命が、見るのも嫌なあの猪を、犬を使うにせよ、追い立てるようになった。

すごい成長じゃないか!!


その事実こそが、この名前を意味深いものにしている。そう考えると、「宍道」とつけたのは偶然では、決してないことがわかる。それはつまるところ、大国主命の「精神の克服」こそが、「宍道」という名前に刻まれていると思うからだ。そして、それは誰もが、そうありたいと願うもの。

そうやって、今では宍道湖に身を沈めて、精神を清める方が引きも切らないとか・・・・まさにインドにおけるガンジス川のように(嘘です、ごめんちゃい)。




ゴゴゴゴゴッ

(この音は!)


ヒトコトヌシ: さすが大国主命様じゃ
ぼく: ほんとそうですよね
ヒトコトヌシ: お前は何かトラウマがあるのか?
ぼく: トラウマですか・・・しいていえば、こどものころにおじいちゃんがさばいてくれた鯖(さば)の刺身で食あたりしたことですかね。あれ以来、さばの刺身が食べれません
ヒトコトヌシ: それトラウマというのか?
ぼく: じゃあ、ヒトコトヌシさんはなにかトラウマがあるんですか?
ヒトコトヌシ: そうじゃなぁ、しいていえば、女神さまたちに「あなた、ひとこと多い」っていわれて、いつも振られることかなぁ・・・・なに言わせるんじゃい(怒)!!
ぼく: わかりますその気持ち、ぼくもいっぱい振られてきましたので
ヒトコトヌシ: ズバリ、一言いわせていただく!!
ぼく: どうぞ
ヒトコトヌシ: お前よりはましじゃ!!
ぼく: まぁまぁ、今日は酒を飲みながら失恋話で盛り上がりましょうよ♪
ヒトコトヌシ: お断り!!


こちらでは出雲神話から青銅器の使い方を考えています。

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