超時空薄幸児童救済基金・17
(はじめに)
マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。
私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。
また、時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(数字のあとにReとつくもの)が書かれることがあります。こちらのReは基本的に全文が無料となります。
(バックナンバーについて)
マガジンのトップで一覧を見てください。
時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むことができます(今もその仕様が続いているといいのですが)。
※もともとは、現実の時間に合わせて月一回の更新をしていましたが、本業の執筆が忙しく、現在は季節がずれてしまっていました。最近はだんだんと合いつつありますが、またずれてきてしまいました……ううう。
では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。
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また、次の手紙が届くまでにだいぶ間が空いてしまった。
年が明け、冬が過ぎゆく間も、少女からの手紙は届かなかった。
当然、連絡係の男が訪ねることもない。もう春も近い。
彼女は無事に年を越せたのだろうか?
たしか去年は、病気で寝こんでいたはずだ。そのときの手紙に「年越しの祝いに亀を食べる」と書かれていたのを思い出す。
あちらの世界での年越しの醍醐味らしいのだ。病の床から届いた短い手紙から推察するしかなかったのだが。
だいぶ年越しからは日が経ってしまっているが、次の手紙には年越しのことがなにか書かれているかもしれない。
生地が用意されて、仕立てた服は砦に届いたのだろうか。
新しい服が修行に役立つとよいのだが……。
そんなことを思っていた頃、久しぶりに連絡役の男が訪ねてきた。
「手紙が来たのかい?」
「いいえ、まだです」
「なんだ。君が来たからてっきり……」
「実は、言づてを伝えたとき、少女から質問があったそうでして」
「えっ?」
「その情報が、砦からこちらに伝わるのが遅れまして」
なにか緊急のことだろうか?
不安になってそう尋ねると、彼は言った。
「『後見人は髪飾りの紋章について何も言ってなかったか?』と聞かれたそうなのです」
「あっ……」
「少女は家名や紋章のある由緒正しい一族の構成員ではないものですから」
そうだ。彼女の手紙にあった。
言われてみれば、その問いかけには何も答えていなかった。
ただ、自分の中で「彼女の好きにすればいい」と思っていただけで……。
「返答がないままになっているんだね」
「はい」
手紙が届かないのは、そのせいだろうか?
「彼女の好きにするように、急いで伝えてくれないか」
「わかりました」
連絡役の男は、そう言って帰っていった。
彼が再び現れたのは、それから数日後のことだ。
今度は、いつもの書簡を手にしている。
報せが届いて、すぐに手紙が書かれたのだろうか?
あるいは……?
「この間の髪飾りの返事とは、行き違いになったのかい?」
「そうかもしれません。あるいは、急いで付け足したのかも」
例によって、彼は手紙の内容は知らないのだ。
自分で確かめるしかない。
私は、少女から届いた久しぶりの手紙を読み始めた。
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