超時空薄幸児童救済基金・14

#小説 #連載小説 #ゲーム #SF #ファンタジー

(はじめに)

 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。

 私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(Re)が書かれることがあります。こちらは、基本的に全文が無料となります。

(バックナンバーについて)

 マガジンのトップで一覧を見てください。

 時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むことができます。

※もともとは、現実の時間に合わせて月一回の更新をしていましたが、本業の執筆が忙しく、現在は季節がずれてしまっていました。最近はだんだんと合いつつありますが、またずれる可能性もあります……。

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。

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 コトイシ世界の少女が、見習いから従騎士になるのと同時に、砦の状況は急激に変化した。しかも、色々なことが立て続けに起こった。
 原因は、やはりあの竜だろう。
 竜についてのもう少し詳しい情報が欲しい……。
 私は所詮は異なる世界の住人だ。しかし、あちらの世界の人間に比べたら、多少なりとも論理的な思考ができる(はずだ)。だから、彼女に対しても有効なアドバイスができるのではないか――と思っている。
 だが、今のように情報が少ないままで推測をこね繰り回していては、実際的な指示は出せないし、むしろ逆効果で、トンチンカンなアドバイスが致命的な結果を招くこともあり得る。
 異世界から届く手紙だけが頼みの綱なのだから、こちらの常識でなんでも仕切れると思い込んではまずいのだ。それでは、あまり論理的な人間の姿勢とはいえないし……。
 そんなふうに、あれこれと迷い、ヤキモキしながら日々を過ごしていた。
 こちらの世界での自身の仕事が思うようにいかず、次の仕事をものにしないと、異世界に寄付するどころか、こちらがどこかから寄付を募る身になりかねない状況なのだ。
 そんな余裕のなさが、視野を狭くしていたのだろう。
 連絡役の男が現れたのは、そんなときだった。

「砦でもめ事が起こっているようです。あまり良い情勢ではありません。エンドゥキは見つからないままですし」

 開口一番、男はそう告げた。
 心配していたことが、現実となりつつあるようなのだ。

「やっぱり。騎士たちが仲違いを始めたか……」

「はい。厄介な状況のようで」

 少女の修業を監督する立場の騎士が仲違いしているとは。
 あまりに心配だ。
 それに、この隙に何かが砦を襲ったりしたら、どうするのだろう。

「彼女もひどく戸惑っているようです。尊敬している騎士たちの姿を見て、幻滅しないといいのですが」

「まったくだ。修行が中断したり、彼女の身に危険が及ぶようでは困る……」

 とはいえ、こちらからは何もできない。見守るしかないのだ。
 助言はしたいけれど……。
 この事態についても、やはり情報が足りなすぎる。彼女の手紙が、この騒動に触れていないはずはないと思うが、できれば、応援に来た八人について細かく書いてくれているといいんだが……。

「差し支えなければ、手紙でわかったことを後ほどお聞かせください」

 連絡役の男も、気になっているのだろう。
 私が「言づてを聞きに来たときに教えるよ」と受け合うと、彼もほっとしたようにうなずいた。

「では、私はこれで……」

「ああ。もし争いがひどくなって彼女に危険が及ぶようなら、砦から避難させる必要もあるかも知れないよね。万一に備えて、検討してくれると助かるよ」

「わかりました。その旨、打診しておきます」

 そう言って男は去っていった。
 ひどいことになっていなければいいのだが……。
 不安に駆られながら、私は手紙を開いた。
 予感は的中していたのである……。 


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