月曜日は土曜日に始まる
題名のこの言葉はキリル語圏の慣用句です。同名のSF小説から取られたもので「日曜日がないほど忙しい」というような意味です。忙しいことの表現はどの言語にもありますが、楽しい週末を取り除いてしまうという発想が面白い一節です。
外国語を学ぶ一番の楽しみは、より多くの人と会話を楽しめるということでしょう。しかし違う考え方に触れるということも大きな魅力の一つです。外国語にはその土地や文化が育んだ独特の概念がしっかりと存在しています。
たくさんの翻訳も手がけていた森鴎外は次のように述べています。
余談ですが、ここで鴎外が触れているのはStreberというドイツ語です。努力や頑張りに近い意味ではありますが、地位や名誉、利益のためだけの虚しいものという側面が強いそうです。嘲笑の意味合いが大きいようで確かに日本語にはこれに該当するものはありません。
言葉は便利なものですが、考えるという上では障害にもなってしまいます。上の例のように欠けている概念はそもそも発想として成立するのも難しくなることも多々あります。「牛は角で捕らえられ、人は言葉によって縛られる」というわけです。
単に会話するだけなら記号的なやりとりでも構いませんし、案外それでも上手くいくものです。簡単な定型文を覚えておくだけでも旅行などでは困らないかもしれません。
しかしせっかく学ぶのなら、母国語にない概念も一緒に身につけておきたいところです。その言葉を使っている人たちの考え方を理解するのに役立つのはもちろんですが、自分の枠組みを超えた新たな発想も与えてくれることもあるでしょう。
新しい言語を学ぶことによる変化を表現している作品に『あなたの人生の物語』(Story of Your Life)という小説があります。『メッセージ』(原題はArrival)として映画化されているのでそちらをみるのもよいかもしれません。
詳しい内容に触れるのは避けますが、言語と理解の関係を上手く表現している素晴らしい作品です。特に映画版では映像も相まって、より多くの面から示唆を与えてくれるものになっています。
また実際に外国語を学びたくなったのなら、インターネットを使えば外国語に関する多くの資料を活用することができます。ただし選ぶ言語によっては情報が少ないかもしれません。そういった場合は英語で検索すれば多くの選択肢を手に入れることができます。
また書店や図書館に役立つ教材が眠っていることもあります。私自身、中古の露和辞書を半額以下で見つけることができました。学習法は人それぞれですが、オンラインの教材とは別に辞書や単語帳を用意しておくと便利です。
海外旅行や会話だけが外国語学習の目的ではありません。自分のためだけの外国語というのもよいものですし、幸いなことに気軽にひとりで始められる教材も増えてきています。もし思い立ったなら、好きなものを勉強してみるのもいいかもしれません。もっとも「月曜日は土曜日に始まる」などと言わなくて済むくらいの余裕は必要かもしれませんが。
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