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スパンダー・バレエと渋谷系の近似性

(注記)音楽コラムじゃなくて140文字に収まりきらない単なる長いツイートだと思ってください。


「子供の頃、デュラン・デュランよりスパンダー・バレエが好きだった」と言うと「それ、デュラン・デュランより酷いのでは(笑)」と大概言われてきたのですが、当時のブリティッシュ・ニューウェーヴの熱狂からン10年経った21世紀の時点でも、いちばんエラいのがカルチャー・クラブ、その後ろにデュラン・デュランで(2022年現在はデュラン・デュランの再評価が高まって逆転)スパンダー・バレエは「ヒット曲がたまたまあるブラックスワン」みたいな扱いのまま今に至ります。


最大のヒット曲True収録のアルバム
スパンダー・バレエのベスト盤LP


2022年11月リリースの新作


アナログレコード出てます


まあその評価自体は妥当なんだけれども、ボーカルのトニーとギターのギャリーが好きだったんだよ。

世界的なヒット曲のあるバンドなので定期的にベスト・アルバムが出たりするタイミングで聴く機会があったりするものの、私にとってはスミスみたいにン10年聴き続けているバンドというわけではないんですけれども、Amazon Music Unlimitedに再加入して360 Reality Audio対応楽曲を探し回っている中、スパンダー・バレエ360 Reality Audioで配信されていたのでプレイリストに放り込んで、久しぶりに聴いたいた時にハッとしたんです。

マイケル・ヘッドにど突かれるとは思うけど

スパンダー・バレエのトニーの声って、ペイル・ファウンテンズのマイク・ヘッドの声に似てない?マイク・ヘッドが歌上手くなったらトニー・ハドリーかな、みたいな。それとヘアカット100解散直後くらい、ソロになってからのニック・ヘイワードにも若干共通するものを感じない?と気付きまして。





ヘアカット100のアナログレコード限定版



ニュー・ウェーヴだと呼ぶからダメなんだ

子供の頃から音楽ジャンルってよくわからんと思いつつ、大人になっても、何年働いても、基本的に音楽ジャンルを明確に「わかった!」と思ったことがないままこんな歳になったのですが、スパンダー・バレエはニュー・ウェーヴに括られたのがアダになったんだなと、やっと理解した。ニュー・ウェーヴって呼ぶから笑われる。ニュー・ウェーヴっていうから「(ニュー・ウェーヴ界の)ムード歌謡」と呼ばれる。


そもそもこんな、サックスやハーモニーを多用してるバンドをなんでニュー・ウェーヴってことにしちゃったんだろう、その方が売れるから?

シンセモリモリ使ってなければ、その分もっとベースが活躍していれば。。。





ギター・ポップと呼ぶにはシンセ感があるが

80年代当時のトレンドとしてシンセサイザーの多用があり、シンセサイザーを多用しているとニュー・ウェーヴと呼ばれる風潮はあった。だからニュー・ウェーヴなのかとも思いつつ、元ヘアカット100ニック・ヘイワードのソロなんか、まんまスパンダー・バレエというかサックスとハーモニーとシンセサイザーの応酬じゃないか。でも時代背景的に、シンセサイザーを多用するとニュー・ウェーヴで、シンセサイザーモリモリ使わないとネオ・アコースティック/ギター・ポップという雑な建て付けだったんだっけ?と最早半世紀近く前のことなんて覚えてないよ私も。

ヘアカット100(Love plus one)は、サックスとギターとニック・ヘイワードの声だな、共通点は。鍵盤の音はシャラシャラしたシンセサイザーの音ではない。それとヘアカット100ペイル・ファウンテンズもギターとベースの音を太めに、そして前に出す感じのミックスをしているのに対してスパンダー・バレエはギターの音よりもシンセサイザーを前に出している。ベースの音はあんまり太くないし、存在感も薄い。ギターやシンセといった他のメロディ楽器の邪魔にならないように配置されている。それに対してネオ・アコースティックやギター・ポップは鍵盤が入っていたとしても、シンセのシャラシャラ感は出さずにギターとベースという弦楽器の絡みが中心のストラクチャーになっているものが多いし、シンセサイザーが入っていたとしても背後で鳴っている程度。その辺に違いがある。

バート・バカラック的な弦楽器と管楽器

ペイル・ファウンテンズはギター、サックス、それと、シンセサイザーの代わりにストリングスを多用している。メロディ楽器が鳴らす華やかなリフの数々が、ストリングスなのかシンセサイザーなのかという違いは大きいと言えるけれども、曲作りを支える根本的な好みやメロディセンスの根源は意外に近いんじゃないのかと思う。



アイディアとそのエクセキューションの違い

スパンダー・バレエのTo Cut A Long Story Shortのイントロのシンセのショボさは当時の私でも「こりゃあ、ねえだろう」と思うレベルだったけども、

(To Cut A Long Story ShortはAmaonMusic Unlimitedだとこのショボいミックスのまんま360 Reality Audio空間オーディオ化されていて「誰がこんな酷いことを」という大惨事になっている)
リフ自体に近似性のあるオレンジ・ジュースのFalling And Laughingはクリーンなギター・サウンドとベース・リフの絡みが合わさってるバランスの良さがトリガーとなり、印象的なイントロに仕上がってる。根源的なアイディアの成功例と失敗例みたいな対比になっていてどっちのバンドも好きな私としては中々厳しいものを感じる。


シンセを抑えめにすれば

だけどThrough The Barricadeみたいにシンセ抑えめでアコースティック・ギターをフィーチャーした曲ならペイル・ファウンテンズに近い仕上がりっぽく聴こえるよね。聴こえない?




声質の近似、サウンド・ストラクチャーの近似

まあペイル・ファウンテンズはマイク・ヘッドの声とスパンダー・バレエのトニー・ハドリーの声質が近いという部分で近似性を感じるんだけれども、ヘアカット 100、ニック・ヘイワードのソロはサウンド面でも近似性があると思う。




この2曲なんかは曲のストラクチャーとかインストルメンテーションの面、繰り返しのリフの挟み込み方、共通点はいろいろあると思う。



この2曲もミックスダウンがニュー・ウェーヴとギター・ポップの明確な方向性の違いがある分、全く別物の印象になるけれども、曲の構成やメロディ・センス、楽曲の根本的な部分では共通点がいくつもある。


ヘアカット100はギター・ポップと言いつつ、Love Plus Oneはシンセポップだと思うし。

ニック・ヘイワードのYou're My Worldなんて80年代前半にリリースされていたらニュー・ウェーヴ呼ばわりされていたに違いない。


ここまで読んで「渋谷系が出てきてない」と思う方、いらっしゃいますか?それはですね、渋谷系のネタ元が↑に集約されてるので根源的な話なんです。渋谷系の根源にあるものの話です。


余談ですが

面白いなと思うのは、80年代はギター・ポップからニュー・ウェーヴまで、男声ボーカルはキッチリ低音を利かせる発声で歌ってるのがトレンドだったところ。スパンダー・バレエのトニー・ハドリー然り、オレンジ・ジュースエドウィン・コリンズ然り、ヘアカット100なんかはアイドルっぽいかわいい男の子然としてるのに、ニック・ヘイワードは21世紀のJ-ROCK男子よりもどっしりとした低音を利かせた歌い方をしているし、ペイル・ファウンテンズのマイク・ヘッドだってかなりへなちょこな歌い方だけど低音はしっかり利かせている。そういうトレンドだったのかと、ニック・ヘイワードのソロのその後の変化で感じる。90年代以降は細いのではなく、柔らかい発声にシフトしている。


今日の1曲











今日のパンが食べられます。