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裾野が広がるようで広がってないSpotifyなどのサブスクからの発見

最近は新しいものをどんどん聴いてはいるけど、聴き始めにバンドのバックグラウンド・チェックはあんまりしていなくて、ふと気になった時に確認する程度になっている。Spotifyなどのストリーミング配信サービスを使っていると、知らないもの、新しいものが聴き放題だから無尽蔵に耳に入ってくる、ような錯覚に囚われる。確かに、耳に入ってくる楽曲数、バンド数は飛躍的に増えてるんですけど、1度聴いて終わりのものもその分多い。良いと思ったものは繰り返し聴きたくなるのに可処分時間は限られているので、当然取捨選択を迫られる。繰り返し聴くようなバンドはその中のごく一部になるので、繰り返し聴くようになってからバックグラウンド・チェックをすればいいかと思うようになったので、何度か聴いていて、お気に入りにも入れていてもどこのレーベルとかどこ拠点のバンドとか、知らないまま聴いてたりも結構ある。

Alice Phoebe Louもその中のひとりで、最新作もその前のアルバムも良いので結構聴いている。が、AppleMusicで「Alice Phoebe Louを聴いてるあなたに他にもおすすめの南アフリカのインディー・ロックを」と表示されてきて、「え? Alice Phoebe Louって南アフリカの人なの?」って驚いた。多分南アフリカのインディー・ロックって、聴いたのは初めてじゃないんだけど、以前聴いた南アフリカの女性シンガーって誰だっけ?って名前が思い出せないくらい前だし、ほとんど知らないのが実情だ。

私が聴く音楽は北米大陸と欧州に大きく偏っている。なのでオセアニアのバンドもあまり知らない。

最近よく聴いてるRolling Blackouts Coastal Feverが豪州のバンドだと知った時も「そうなの?」みたいな反応になってしまった。なにしろ豪州出身のバンドに馴染みがない。最後がThe VinesとかJetかもしれないくらい知らない。


フランスの音楽は大好きなんだけど、ストリーミング配信サービス以前は探すのに難儀した。たまにフランスに行った時に頑張ってレコード屋巡りをしたりしつつ、フランスの場合は玉石混交なのでつまんないの掴まされると自分を呪いたくなるので、ジャケ買いするにも慎重を期す。ほぼ霊感を働かせるレベルで選ぶので1回の渡航で買うのはせいぜい1枚。その代わり、ハズレは引かない。私の霊感は結構感度が良い上に、慎重に選ぶから。


フランスのiTunesStoreも時々チェックしたりしてたんだけど、アカウントを持ってないと試聴ができないので、フランスでAppleCard買ってアカウントを作ろうと思っていたのだが、サブスクで聴き放題になったので結局、iTunesStoreのアカウントは日米英のしか持っていない。

フレンチポップスだけじゃなく、フレンチ・ラップも好きだし、インディー・ロックをしっかり掘りたかったんだけど、なかなか捗らなかったのが、サブスク聴き放題のおかげで新しく見つけられたような気がしていた。



サブスクの聴き放題で裾野が広がったなあ、なんて一瞬錯覚したんですけど、実はそうでもないと冷静に考えると見えてくる。

AngèleはAppleMusicで初めて見つけたけれども、Dua Lipaとデュエット曲をリリースするようなアーティストだ。フランスではスーパースターなんだろう私が知らなかっただけで。

Alice Phoebe Louは今月末来日公演があるらしい。つまりサブスクで出会ってなくても日本でちゃんと販路が確保されているんだから耳に入ってくる可能性は高い。ていうかだからこそ、SpotifyでもAppleMusicでも推されてるんだろうし。

Rolling Blackouts Coastal Feverも、拠点は豪州だけどレーベルはサブポップなので、普通に耳に入ってくるよね、米国のバンドと同じ流通なんだもの。ギリシャのΣtellaもサブポップ。

なんだかんだ、サブスク聴き放題で広がってるように見えて実はそうでもなかった。老舗インディー・レーベルのバンド、メジャーのレコード会社のバンドが優先的に目につく位置に配置されているのは街中のCDショップと一緒で、並べられてるものの中からよく知らないものを優先的にと、意識的に行動してるつもりでも、後からチェックしてみると意外と、遠くまで行けていないということに気づく。やっぱり海外まで足を運んでフェス巡りして、自分の足を使い、目と耳を駆使して探していた時期に比べると、効率的に選べるようにはなったけど、思ったほどには「サブスクがあったからこその出会い」まで言えるようなバンドって実はそんなにいないんじゃないかという反省に繋がった。

ストリーミング配信サービスも実店舗と同じく、正面に置かれているのはフィーチャーされてる作品群だ。何をフィーチャーするか選ぶのは配信する側で、レコード会社は選んでもらうために奮闘する。その図式は実店舗やECサイトでの販売と何も変わらない。放っておいても曲が良ければフィーチャーしてもらえるわけではない。きちんと戦略を立ててリソースを割いてプロモーションしてこそフィーチャーされる。その戦略の波に乗らずによく知らんものを探し当てる楽しみと困難というのは、聴ける楽曲数が無限に増えたからといって難易度が下がるわけではないのだと、冷静に立ち戻って自分を戒めるしかない。

とりあえず、フランスのポスト・パンクのいい辺りは掘り当てられた。厳密に言うと「サブスクで裾野が広がった成果」はこの辺りかと思う。

それとタイのインディー・ロック・バンドDept


Spotifyでは各アーティストのフォロワー数、月間視聴者数、楽曲ごとの再生回数などが表示されているが、知らないバンドを見つけてアーティスト・ページを開いてみて、月間視聴者数が100万人超えとかだったりすると少しがっかりする。実際にはそういうバンドが多い。でも私が探したいのは「世界中に聴かれるチャンスが提示されてるのに月間2000人くらいにしか聴かれてない、でもクオリティが高い音楽」という、聴き放題だからこそ見つけられるはずの作品なのだもの。そういうのをストリーミング配信サービスで見つけて、作品を購入して、そういうバンドがどこまで高く飛ぶのかを見るのが楽しいんだもの。

今日の2曲

この辺りが月間リスナー1000人ちょっとですね。

私のイチオシ、ポスト・パンク・バンドのBantam Lyonsは月間リスナー700人台。


今日のパンが食べられます。