【生活を豊かにする方法を行動経済学的に考えてみた】001〜とっとと忘れた方がいい過去の出費

こんにちは、そしてはじめまして。
経済とか社会をフィールドにしている編集者です。

みなさんは行動経済学という新しい学問分野のことをご存じでしょうか。
旧来の経済学はほとんどすべて、「人間は合理的な判断を下して、行動する」という前提でできあがっています。「じゃぁ人間って本当に合理的なのか?」。その根本のところに疑問を投げかけたのが行動経済学です。心理学と経済学のハイブリッドと思って間違いありません。
この学問の登場によって、それまで説明のつかなかった経済社会の現象が理論化・体系化できるようになってきました。

その行動経済学の視点から、日々の生活を見直してみるのが、ワタシのnoteの目的です。

第一回目は、とっとと忘れた方がいい過去の出費もある、という話です。

 あなたはプロ野球の試合の前売りチケットを4500円で買いました。とても楽しみにして足を運んだ当日、球場に入ろうとしたときにチケットを家に忘れてきたことに気がつきました。取りに帰ることも家の人に持ってきてもらうこともできませんが、当日券売り場で同じ種類のチケットが同じ値段で売られています。


 さぁ、どうしたらいいでしょう。


 答えは、楽しみにしていたくらいだから、あなたにとって試合を観る価値は4500円以上です。ならば、当日券を買って試合を観戦するのが正しい判断です。
 これはサンクコスト(埋没費用)について説明するときに、よく引き合いに出される事例です。サンク(埋没)コストとは、回収ができない投資費用のことです。野球のチケットの話で言えば、前売りで買って家に忘れてきたチケットは、それを利用することも換金もしようがないので、4500円は当日の試合を観る代金とはすでに関係のないカネになってしまっています。
 家に忘れてきたチケット購入した4500円は、どこかに落としてしまった、前日の飲み会で払ったなどの4500円と同じなのです。しかし多くの場合、この忘れてきたチケットの場合だけ、4500円を足し算してしまうばかりに、試合を観戦するという楽しみに対する判断を間違ってしまうことがあるのです。
 目の前の野球の試合が4500円の価値ならば、4500円で観戦を楽しめばいい、答えはシンプルなのですが、サンクコストに囚われると、試合観戦の代金は2枚分9000円であって、それだけの価値はない、と考えてしまうのです。これを学問世界では「サンクコストの呪縛」と呼んでいます。


 野球のチケットくらいならかわいいものです。現実にはビジネスの現場、投資などさまざまなところで呪縛は起きています。途中で、どうやっても儲かりそうにないと気づいても、「これまでこれだけ投資してきていて、それが無駄になる」と、赤字をさらに増やしてしまう行動はこれまで、さまざまな事例が報告されています。
 もっとも有名なのは超音速旅客機、コンコルドです。開発している途中で、買い手がいない、超音速旅客機にはいろいろ問題が多いと気がついたのですが、計画を放棄する決断が出来なかった。250機売れて初めて利益がでると試算されていたにも関わらず、実際に売れたのは10数機、関係者の心がサンクコストに囚われてしまった悲惨なまでの結末です。


 投資やビジネスは、時々刻々状況が変わるものです。個人の資産運用や生活においても同じで、見通しが間違っていたと気づいたら、過去の数字は忘れて未来の赤字を作らない決断をせねばならないのです。


 それよりも、出かけるときはチケットを忘れないことが一番なんですけどね。

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