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装丁

さよならが
詰まった街の
昼と夜を
夕陽の紐で綴じ
石の表紙と
木の扉を付けて
無理やり
装丁した
叱られた子供のような
あとがきを
書いた

演じ損ねた場面を
かき集めて詰め込んだ
リュックを背負い
満員電車で通勤する
半透明な顔の向こうで
都市の枠組が
繰り返し運搬されてゆく
君が少女だった時
(もちろん少年だった時でもよい)
よく動く白目が
空のように青かったはずだ

 (詩集『月のピラミッド』第1章「無為のイチゴ」より)





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