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【お仕事の裏側】展示を彩るちょっとしたギミックを。

少し前の記録をちょっと。藤里一郎写真展「原色の熱情」。伝説と言われた渋谷道玄坂劇場の踊り子「匠悠那」に魅了された藤里一郎氏が10年の時を経て開催した写真展のこと。https://ninegallery.com/exhibition/658

「踊り子」とはいわゆる「ストリッパー」さんのこと。当然ながら作品はヌードの写真が中心。ヌード写真はNGの会場も多く開催には様々なハードルがある。もちろんナインギャラリーも写真展を開催する場合には作品を確認させていただき、ギャラリーのカラーに合わないものについては開催をご遠慮いただく場合もある。

しかしそこは藤里一郎氏の写真。写真展百戦錬磨(2019年開催実績10本)の一郎氏がまとめた作品がアートでないわけがない。そしてそこにディレクションが入ればそれはなおさら。と、いうわけで作品も見る前から早々に開催が決定。

とはいえヌード。運営にあたってギャラリーマネージャーから写真家、アートディレクターへのリクエストは2つ。

【リクエスト1】 とにかく近隣の方にご迷惑にならないようにしたい。

ギャラリーは閑静な住宅街にある路面店。全面ガラス貼りの見晴らしの良い会場で、いつもは外から見えることで興味を持って入ってきてくださる方も少なくないけれど、ご近所には小さなお子様がいらっしゃったり、近隣には高校もある。中には女性の裸が飾られていることに抵抗のある方もいるかもしれない。そういう方に怪訝な思いをさせないよう配慮をしたいという趣旨。

【リクエスト2】 沢山の方に見ていただきたい。女性にも。

踊り子の素晴らしい生き様、それを真芯で捉えた貴重な記録であり記憶の写真展。多くのお客様に見て欲しいし、たくさんの女性にも見て欲しかった。だから女性が入りづらい空間にはして欲しくなかった。

リクエストを軽く流す2人。まぁ大丈夫だろう、と、きちんと伝えた気になっていた数日後。

ミラーボールが届きました。。

さらに数日後、

「照明駆使してピンクな部屋作りたいんだけど」

その一言で急遽

スポットライトに合わせてカラーフィルターをちょきちょきと図工の内職。言われるままに準備を進めつつ、一抹の不安。

真剣にスポットライトを調整している前でクルクル回るミラーボール。不安。

不安。・・・でもちょっとワクワク??

そして設営完了、開催。結果は外観から見ても街の景観に合う雰囲気に。

ギャラリーに入ればミラーボールな小部屋がそこにいるような臨場感を演出し、もう見ることのできない踊り子さんの演目に哀愁すらも感じる空間に仕上がったのでした。ピンクの小部屋では感極まって涙する人も続出。

思っている以上に若い女性のお客さんが多かったのも嬉しい。

地方巡回や写真集の希望のお声も沢山いただき、写真展は評判のうちに幕を閉じました。改めて考えれば2人のプロフェッショナルを前にいらぬ心配ではあったなぁ、と思ったものの、ガミガミ言うのもお仕事のうち。マネージャーのお仕事は作家とアートディレクターに翻弄されるお仕事でもあるのです。

作品にあったギミックは五感を刺激し、より世界観に没入できる空間を演出します。とはいえ、過度な演出は作品への没入を妨げます。くれぐれもギミックに走り過ぎることのないように注意です。

うまく空間をディレクションすることで、ギャラリーという空間はまだまだ新たな可能性がある面白い場所になりそう。改めてそんな風に思った、藤里一郎写真展「原色の熱情」なのでした。


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