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西伊豆古道を歩く〜土肥ー戸田編〜

2022年9月12日。11:23 道の駅 くるら戸田に到着。戸田交通が運営する乗り合いバスに乗り込む。1日3便、予約のあったダイヤのみ運行する。いわゆるデマンド式の自主運行バスだ。

土肥ー戸田の区間は交通機関がないので大変重宝する。否、厳密には東海バスが運行しているのだけど、中伊豆を経由した路線なのでこの区間は利用しづらい。

当然の事なのかもしれないけど、実践的な地域の助け合い。不便がそうさせるのか、陽が沈む地域だからなのか。毎度ながら西伊豆に来ると、利他をベースにした人の営みを肌で感じる。

12時 土肥温泉に到着。土肥温泉は伊豆西海岸で最も古く、かつ最大の温泉地だ。その歴史は土肥金山に代表される金山の開発と共に始まっている。温泉出るところに金脈あり。

本日の踏査は、土肥ー戸田間18kmの古道。自然歩道と古道がほぼ一致してるルートなので、距離はあるけど歩けばゴールできる予定だ。

昨夜、ライブを終えたばかりのASH DA HELOサトくんと夜走りで伊豆半島入り。今回は二人で歩く。ギネス認定の直径31m、世界一の花時計からスタートだ。

土肥大橋を渡り、伊豆峯次第の201番目のチェックポイント・高根神社へ。

道中、90年土肥にいるというお姐さんと出会う。立ち話となり古道を歩いてることを伝えると、山を超えた隣町・小土肥のお祭りに行った思い出を語ってくれた。去り際にはオロナミンCを持たせてくれる。愛のこもった嬉しいお気持ちいただいた。

LOQUAT 西伊豆に面した道が古道。300年の歴史を持つ古民家をフルリノベーションした複合施設だ。伊豆峯次第の成立が1761年なので、当時から存在したお屋敷だと言うことになる。歴史ロマンを感じずにはいられない。

伊豆峯次第の202番目のチェックポイント・諏訪神社を過ぎて、100mほどで右折が小土肥コースの終始地点。

道は舗装され歩きやすい道となっているが、序盤なかなかの登り道。小土肥のお祭りへ行くと思えば足取りも軽い。

500mほどで県道と交わりそうになるが、そのまま海岸へ下りて行く細い道を歩く。

小土肥海岸が見えてきた。実は個人的に、この浜は思い出が深い。車の免許を取ってから、毎年夏になると地元の友人たちと遊びに来ていた。磯遊びしたり、BBQをしたり。シーズンでも混雑しない穴場の海水浴場だ。

そんな思い出のビーチ沿いが小土肥コース西伊豆歩道。

小土肥コースからは少し外れて、伊豆峯次第の203番目のチェックポイント・八幡神社へ。お昼休憩の職人さんが境内の木陰で昼寝をしていた。ちょうど良い風が吹いて気持ちよさそう。

伊豆峯次第の204番目のチェックポイント・国玉神社へ。

小土肥大川沿いに戻り、行き止まりのY字路の左が正解。

ここからは道なりに三度、県道を横断しながら峠を登っていく。

車道を歩いたり横断する際は十分に気をつけて歩く。

再びY字路。「右 戸田道」と書いてある石標が残っている。迷わず右だ。

14:00 次の集落・舟山まで入る手前で小休止。握ってきたおにぎりでエネルギーチャージ。

ここからはしばらく山道が続くが良く整備されている自然歩道だ。今日の気温は30度。夏の終わりを知らせるように、最後の力を出し尽くすツクツクボウシがとにかく元気に鳴いている。

小土肥コースは今まで歩いてきた伊豆半島の自然歩道の中でも、ダントツに整備されている。優しい木漏れ日と、心地よい風が通り抜けて気持ちが良い。

道はいつのまにか古道らしくなってきた。緩やかな登り道が続く。

鹿の足跡。イノシシでなくて良かった。この時期の山歩きはマムシとイノシシ、それからマダニに注意する必要がある。

イノシシは夜に行動することが多いので明るいうちに山を出る。マダニは肌の露出を避け、虫除けスプレーをする。マムシは石垣や沢筋に近づかないこと。もし、噛まれたら、血止めをして安静に。毒が回ると命に関わる。

鳥の巣。お役目終えて、落ちたのかな。

県道に合流。調査・研究しつつ熱海・伊豆山から時計回りに歩き始めて1年、いよいよ沼津市までやってきた。歩き始めた当初は全くイメージ出来てなかった領域だけに感慨深い。次の自然歩道まで800mほど県道を歩く。

急峻な舟山歩道を歩き、伊豆峯次第の206番目のチェックポイント・神明神社へ。

再び、県道へ。1.5km歩く。

戸田歩道へ。この峠を越えたら戸田の集落だ。

小さな沢を横切りまもなく、大きな鹿が目の前を駆け抜けていった。

赤いエプロンを付けた石仏たちが迎えてくれる。石碑には「文化4年」と刻まれているので江戸後期。石仏の首がはねられたり、顔が削り取られたり。戦後の廃仏毀釈の影響が見受けられる。この旧道は戸田から土肥へ続く生活道だったのだろう。

ここからずっと下りが続く。礫が多いので、浮石に足を取られないように。

自然は人間について、多くを教えてくれる。それは座学よりも、体験を通しての方が遥かに多い。内なる己との出会いに繋がり、大いなる方によって生かされ、存在することに目覚めさせられる。

「学ぶ心さえあれば、万物のすべてこれ我が師である。」松下幸之助の名言だ。

戸田の集落を一望できる場所までやってきた。あと一息。

山道下りて一軒目のお家の前で、お姐さんたちが立ち話をしていた。お一人が気付くと山から来た我々に視線が集まり、山を指差している。「どこから来たのか。」と聞きたそう。

「土肥から歩いてきました。」そう伝えると拍手喝采、歓迎してくれた。古道の事を尋ねると、やはり昔はこの道を歩いていたそうだ。

斜度20度はあるだろう。急峻な坂道を下りきると、集落の入り口に残る同祖神。もはや原型は留めてないけども、地域が残してくれた歴史の足跡。目の前に横ぎる道は間違いなく旧道だ。戸田歩道は海側へ左折。伊豆峯次第は右折する。

しばらく歩くと地元の井戸端会議に出会った。すぐに話しかけられ、ここでも山道から来た事を伝えると、大変喜んでくれ、真っ先に道の状況を聞かれた。

戸田歩道、かつては小学生の通学路だったり、生活必需品を買いに出かけたり、生活道として多く利用されてきたそうだ。また、昭和36年の水害の話、富士山のお陰で戸田には台風が近寄らないと言うお話、移住者が増えてきた事から空家情報まで井戸端会議は盛り上がる。

何よりも昔は戸田歩道から富士山が良く見えたと聞けたので、整備したら観光資源化できるポテンシャルがあることが分かった。

「この時間くらいにいつも集まってるから、またおいで。」とお声かけいただいた。

伊豆峯次第の207番目のチェックポイント・部田神社へ。

くるら戸田でゴール。オススメいただいた温泉が待っている。

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