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小さな自転車の旅

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吉田 満と久通

吉田 満と久通

 何年か前に、『戦艦大和の最期』を書いた吉田満が大和生還後に赴任した高知県須崎市の久通を訪れたことがある。
作家の古山高麗雄が『戦艦大和の最期』の講談社文芸文庫版の巻末に吉田の作家案内を書いている。古山は、はじめに、自分自身はいやいや戦場に運ばれたまま生還した下級兵士であると断り、作者の吉田は東京帝国大学法科を繰り上げ卒業して、幹部候補生の試験に合格し、士官として自己の意志で死地としての戦場に赴き

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宿毛へ その2

宿毛へ その2

宿毛に通じる県道から左の山裾の脇道に入り、前方に見える譲葉山などの山並み、右手の小山の連なり、岩松川の流れなどを眺めながら走る。左の山裾には獅子文六の「てんゆわんや」や随筆「田舎の句会」に書かれた、蘇鉄が山道に並ぶ寺、高田八幡などがある。清満の小学校に近づくと桜並木のある川に沿った堤の上の道を走り、小学校を過ぎ、集落の中の道に下ってゆっくり走る。しばらくして、一度県道に出て川沿いに走ると、馬淵あた

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「宇和島はいいぞ」

「宇和島はいいぞ」

 水害や風害、行政の形骸化など不愉快なことも多いが、宇和島はまだまだ大丈夫だ。毎朝、電動アシストの自転車で峠を越え、往復25キロの買い出しに出かける。そうすると、宇和島はいいなあと思う。パン屋さん、魚屋さん、お肉屋さん、八百屋さん。若い店員さんたちが元気に働き、ケーキがおいしいグーテ。

どのお店の人たちも、昔ながらの南予の気のいい人たちだ。魚も肉も野菜も流通が変わり、地物だけではないが、お店の人

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伊予吉田から宿毛往復1泊の旅その1

伊予吉田から宿毛往復1泊の旅その1

四国西南は東京から遠い。飛行機を使っても沖縄や与論島に行くより時間はかかるのではないだろうか。司馬遼太郎は国鉄予讃本線終着駅の宇和島で線路が途切れることを、どこかに印象深く書いていたと思う。

おそろしいコロナのパンデミックで、愛媛でも県を越えた移動の自粛が行われていた。20日に禁が解かれたので宿毛の友人を訪ねるために、クロの散歩と朝食をすませた後、電動アシスト自転車に着替えや充電器を積み込んで、

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