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やきいもぐら 作:たかはししんぺい

このお話しは、おもちゃクリエーターの高橋晋平さんの音声番組(Voicy)「1日1アイデア」#959 にて放送された晋平さんによる創作童話です
あまりにも可愛らしい物語だったため、ご本人の了解を得て文字起こしさせてもらいました
ぜひご本人による朗読の音声も合わせてお楽しみください→こちら

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あるところに 「やきいもぐら」 という いきものが いました
やきいもぐらは からだが やきいもの 
もぐらです
やきいもぐらは いつも おなかがすくと じぶんのおしりを たべます
やきいもなので おいしくたべることが 
できるのです
でも そうすると じぶんのおしりが 
なくなっていってしまうことが
しんぱいになりませんか?

でも だいじょうぶ
やきいもぐらは やきいもを たべることによって 
からだが やきいもですから 
それがふっかつして おしりがもとに 
もどるのです

✦✦✦

そうやって じぶんのからだを たべながら 
まいにち たのしく くらしていました
あるひ やきいもぐらは 山に あそびに
いきました
すると どこからか 
「たすけて たすけて」
という こえが きこえました
こえのするほうへ いってみると おおきな あなのなかに
にんげんが おちていました
そして そこから 
でられなくなっていました

✦✦✦

やきいもぐらは
「まってて いま、たすけるから」
と いって くちから さつまいものつるを だして 
それを にんげんのところに とばしました
にんげんは それにつかまって あなから
はいあがってきました

✦✦✦

ありがとう ありがとう と にんげんは いいました
「じゃ、いっしょに 山をおりよう」
と やきいもぐらがいうと
「もう 日がくれてきているから いまから 山をおりるのは あぶないので ここに 
のじゅくするしかありません」
と にんげんが いいました
「じゃあ ぼくが ほらあなを ほってあげます」
と いって もちまえの手で あなをほって 
そこにねぐらを つくりました
ふたりは そこで いちやを あかすことにしました

すると にんげんが
「あさから なにも たべていなくて 
おなかがすいて いまにも しんでしまいそうです」
と いって よわってきてしまいました

✦✦✦
そこで やきいもぐらは
「ぼくのからだは やきいもですから ぼくのおしりを たべてください」
と いいました
にんげんは
「でも そんなことしたら あなたのからだが なくなってしまいます」
と いいました
やきいもぐらは
「だいじょうぶ ぼくのからだは いつもはえてくるから」
と いって じぶんのおしりをとって にんげんに わけてあげました
にんげんは 
「ありがとうありがとう おいしいおいしい」
と いって それをたべました

✦✦✦

でも やきいもぐらの おしりが はえてきません
「そうか じぶんで やきいもをたべていないから もうおしりは はえてこないのか」
と やきいもぐらは いいました

にんげんは
「わたしを たすけるために やきいもぐらさんの おしりが なくなってしまうなんて」
と いって ぽろぽろ なみだをこぼして あやまりました
やきいもぐらは
「だいじょうぶです あなたがたすかったんなら ぼくはうれしいです」
と いいました
そして ふたりは だっこしてねて いちやをすごしました

✦✦✦

よるがあけると そとがあかるくなったので
ふたりは 山をおりることに しました

やきいもぐらは もちまえの手で 山からふもとまで あなをほって
トンネルの すべり台をつくって ふたりでそれをすべって 山のふもとに
いちもくさんに かえりました

山のふもとでは にんげんがいなくなったことを むらのひとたちは
しんぱいして さがしていました 
すると ぶじ かえってきたものですから おかあさんは
「ぶじだったんだね!」と かけよってきました

✦✦✦

にんげんは
「この やきいもぐらさんが わたしを たすけてくれたんです」
と いって わけをはなしました

「でも そのせいで じぶんのおしりを うしなってしまったのです」
と いいました
でも やきいもぐらは
「だいじょうぶ とにかくみんなで おいわいしましょう」
と いいました

すると にんげんのおかあさんが
「おいわいの じゅんびを しておいたのよ」と いって むらのひとたちや やきいもぐらを おうちに しょうたいしてくれました

✦✦✦

そこには すごい ごちそうがならんでいて そのなかには 
おかあさん おてせいの スイートポテトがありました
やきいもぐらは スイートポテトを 
「いただきます」
と いって ぱくぱくたべました

すると なんということでしょう
やきいもぐらの おしりが はえてきたでは ありませんか
そう スイートポテトを たべたことで やきいもぐらのおしりが 
もとに もどったのです!

そして そのにんげんは やきいもぐらを かうことにして 
ふたりは いつまでも いつまでも いっしょに しあわせにくらしました

おしまい

それでは
きょうも
明日も
健康第一で
おやすみなさい・・・




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【いよかん畑の感想&よけいな考察】

やきいもぐら という謎の生き物の可愛さよ!
お尻を食べて復活する習性、穴掘りならおまかせの「持ち前の手」
(持ち前の手、という言い方も私にはかなり面白かった)
そして見返りを求めない自虐的なまでの自己犠牲の精神。
何かのメタファーなのでしょうか じわーっと泣けてきます

可愛くて優しくて面白いやきいもぐら。
すっかりこのキャラクターの大ファンになってしまいました。

さて。

晋平さんがお話ししている間は、やきいもぐらがあまりに健気で可愛いのでまったく感じなかったのですが、文字起こしをしていて気づいてしまったことがあります。
終盤です。子供の行方不明を心配していたはずの人間のお母さんがすでに「お祝いのためにごちそうを作っていた」ことの若干の違和感。どうして子供が帰ってくることを彼女は事前に知っていたのか? もしかして子供を山に置き去りにしたのはお母さんだったのか?! それとも親子でぐるになってやきいもぐらをつかまえ、一風変わった尻焼き芋屋として一攫千金を狙ったのか??

このお話し、世にも恐ろしいミステリーだったのかもしれません・・・

あと「一夜をすごす」をひらがなにしてみて「いちゃいちゃする」の語源は一夜なのでは?との気づきもありました。有益〜


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