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IWJ取材に「憲法を逆手に取った独裁」!! 菅総理の日本学術会議委員任命拒否を擁護した橋下徹元大阪府知事に対し、元日本弁護士連会長・宇都宮健児弁護士が徹底反論!! 「橋下氏は三権分立や民主主義がまったくわかってない」「菅首相も同じ」! 2021.1.22

(文・仲川正紀、編集・IWJ編集部、文責・岩上安身)

 日本学術会議委員の任命拒否問題をめぐり、岩上安身がインタビューを行った、立命館大学松宮孝明教授や、小原隆治早稲田大学教授は、菅総理が憲法15条の「国民の固有の権利」を任命拒否の根拠とすることを、憲法悪用の独裁への道と批判している。

 「憲法悪用による独裁への道」という批判は、問題発覚後まもない時期、菅総理を擁護した橋下徹元大阪府知事に対する、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児弁護士による批判の論点でもある。

 IWJが直撃取材を行った宇都宮健児弁護士は、橋下氏の主張に徹反論し、橋下氏は「三権分立とか民主主義がまったくわかってない」「菅首相も同じ」と厳しく批判した。さらに、菅政権の目的は「日本学術会議そのものを解体、変質させ」「軍事研究とか軍需産業を国内で発展させること」にあると断じた。

 憲民主党の小西洋之参議院議員による、日本学術会議法に関する国会想定問答集を踏まえた検証等もあわせてご紹介する。

 民主国家として、軍国への傾斜の分水嶺とも目される論議の詳細をぜひ御覧いただきたい!!

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▲橋下徹元大阪府知事(Wikipediaより)

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▲宇都宮健児弁護士(Wikipediaより)

橋下徹氏は菅総理に苦言を呈するフリをして、あくまで「総理大臣が任命拒否するのは当たり前」と事実上の擁護!!

 2020年10月5日朝、TBS系の情報番組「グッとラック!」に出演した元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、菅総理が日本学術会議の新会員の任命を拒否した問題について「総理大臣と学術会議は上司部下の関係じゃないから、選ぶという行為はあるんだけど、拒絶するんだったら理由がちゃんと必要」として菅総理の対応に苦言を呈した。

 また、「法律にもとづいて適切に対応しているとか個々の理由を説明しないのは、どうも安倍政権の時の森友・加計問題、桜を見る会の問題始め、違法性はないにせよ、説明はこれ以上しないんだ、法にもとづいてやっているから大丈夫なんだと、あのやり方をやると、国民の不満はどんどん積もってくるんじゃないか」との見解を述べた。

 しかしその一方で、橋下氏は「総理大臣が任命拒否するのは当たり前」であると、橋下氏が「心配」しているのは、あくまで「菅政権という権力」の基盤の安定性に対してなのであり、権力を乱用されて被害を被る日本学術会議や、学問の自由を含む立憲主義体制が脅かされることや、最終的にツケ回しされる主権者である国民の固有の権利が侵害されていることに対してではない。結局のところ橋下弁護士は、菅総理による任命拒否を肯定しているのであって、苦言を呈するフリをして擁護しているにすぎない。

 橋下氏は、「総理には任命拒否をするのが当たり前」と主張するその根拠として「日本学術会議には政府の審議会みたいな役割がある」と述べた。「審議会のメンバーで意見が偏りありすぎの場合には、組織のトップとしてメンバーを入れ替えさせてくださいねというのはあり」「特定の意見のメンバーばかり集まったら、政府の意見に対して、公平公正な意見は出ません」「学者の研究団体という面では政治家は口は出せないが、諮問機関、審査機関、審議会的な要素もあるから、そこについてメンバーの構成を考えるのは政治家として当たり前」などと主張した。

IWJの取材に応じた元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児弁護士は、橋下氏の「日本学術会議は政府の審議会みたいな役割」という主張に徹底反論!!

 橋下氏は、この学術会議の「政府の審議会みたいな役割」の理由として、日本学術会議法の4条に「政府は(略)日本学術会議に諮問することができる」となっていることを挙げた。

日本学術会議法(日本学術会議HP)

 この橋下氏の主張についてIWJは、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児弁護士に見解を聞いた。宇都宮氏は橋下氏に対して以下のように強く反論した。

 「(日本学術会議法4条で)諮問はできることになっていますけど、それが一般の審議会と同じかというと、日本学術会議の性格は、(日本学術会議法の)前文にも書かれていますが、3条で独立して職務を行うっていうことになってます。諮問についても同じような形でやるということです。

 通常の役所の省庁の審議会は、ほとんど政府で選んでいるわけです、メンバー自身を。ところがメンバー自身を選ぶことについては、日本学術会議は独立して職務を行うことになっていますので、学術会議が推薦した候補者から総理大臣が任命することになっているので、基本的には職務の独立性っていうところが違うと思うんです、通常の審議会とは」

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▲宇都宮健児弁護士(ツイッターより)

「橋下氏は三権分立とか民主主義がまったくわかってない! それは菅首相も同じ!!」と宇都宮弁護士!

 宇都宮弁護士は、通常の審議会と日本学術会議の違いについて説明を続けた。

 「通常の審議会は臨時に設置されて、審議会メンバーはほとんど省庁あるいは政府が選んでいるんです、その都度。それとは違って、独立して職務を行うことになっている日本学術会議に、諮問することはできるように4条でなってますけど、だからといって、そのメンバーを入れ替わり立ちかわり、普通の審議会と同じようにやる構造にはなってないんですよ。

 その(諮問できるという)言葉を捉えて審議会と同じだというのは、日本学術会議の成り立ちとか、独立した機関であるということとか、これまでの委員の選ばれ方を見ると全然違うわけです。

 普通の審議会はどこかが出して形式的に選ぶのではなくて、審議会のメンバー自体が、政府が都合のいいやつを選んでいるんです。もともと役所の結論に沿うようなね。事務局も役所がやって。

 それとごっちゃにして、ミソもクソも一緒にするような、橋下さんの論理だと、裁判官も全部任命拒否ができるようになるんでしょう。公務員で(国からの)カネをもらってるのは。だから、彼は三権分立とか民主主義がまったくわかってないんですよ。それは菅首相も同じですよ」

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▲菅義偉内閣総理大臣(Wikipediaより)
※この記事はIWJウェブサイトにも掲載しています。
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