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仕込み体験&酒蔵見学~泉金酒造株式会社~ 

こんにちは。ⅰ-Sakeプロジェクトの中田凪音です!
2024年がスタートしてから、1週間近くが経ちましたね。皆様にとって、今年はどんな一年になるのでしょうか。
さて、今回私たちⅰ-Sakeプロジェクトはあの龍泉洞で有名な岩手県岩泉町に蔵を構える泉金酒造さんを訪ね、仕込み体験と酒蔵見学に参加させていただきました!
その様子をご覧いただければと思います♪

この記事を見る前に、泉金酒造さんについて詳しく知りたい!という方は、去年の蔵見学の様子を書いたこちらの記事をご覧ください。↓↓↓
https://note.com/iwate_isake/n/n54ee1bfdc6d6

①仕込み体験(麹造り)
 麹造りとは、蒸米に麹菌を振りかけて麹を造ることです。日本酒はアルコール発酵(糖をアルコールに変える)によって造られますが、日本酒の原料となる酒米には糖が含まれていません。そこで、麹菌を酒米に振りかける事で酒米の糖化(でんぷんを糖に分解する)を行うのです。
 麹造りでは、まず蒸米90℃を布の上で平らに薄く広げて40℃くらいまで冷まします。ここで使うのはなんと、うちわ!そうです、あの夏の風物詩であるうちわでお米をパタパタと仰いで冷ますのです。

蒸米をうちわであおぐ様子

手で酒米を触ってみて40℃くらいになったことを確認したら、麹室にお米を運んで布の上に薄く広げ、温度が36、7℃くらいになるまで冷まします。ここでは温度計を使って正確に温度を測ります。先程さらっと「手で触って温度を確認する」と書きましたが、これは素人にはとても難しいです。(笑)長年経験を積んでいる杜氏さんだからこそ成せる業と言えます。

 その後、いよいよ麹室で麹造りを行います。

麹室

泉金さんでは麹は粒麹(玄米に粒状の麹が付いたもの)を使用しています。麹造りは下の図ように麹菌を酒米の表面にムラがないようまんべんなく振りかけます。その後3分待ち、麹菌をしっかり付けたら、酒米をひっくり返して(麹菌が付着していない面を上にして)再び薄く広げ、先程と同じように麹菌を振りかけます。この工程をあともう一回行ったら麹菌の振りかけは完了です。

粒麹

最後に酒米を山のように積み重ねて、白い布で何枚もくるんで空気が入らないよう覆い被せたら作業はいったん終了。山の表面にある酒米が内部のお米に比べはやくに冷めるため、その日の夕方に山を一度切り崩し、酒米が均等に冷めるように調節します。 

 この一連の作業は全てゴム手袋を装着して行いました。「手袋を装着?そんなの衛生的に考えて当たり前でしょう」と思った皆さん、実はこの手袋の装着には衛生面以外にもう1つ目的があるという事をご存じですか?日本酒の品評会では、とある香りが悪評の対象として忌避されています。その名も4VG。これは麹が微生物の混入によって汚染されることで生まれ、燻製のような匂いを醸すといわれています。燻製のようなにおいがするお酒…聞いたことがありませんよね?(笑)ゴム手袋をつけて作業する理由は、素手についた微生物を麹につけないようにすることで、この4VGのにおいを生み出さないようにしているのです。このような丁寧な作業を心掛けている泉金酒造さんは、今年、去年の2年連続で全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました!

②酒蔵見学
 去年は社長の八重樫義一郎さんの奥様・八重樫由吏さんにご案内して頂きましたが、今年は杜氏の伊藤賢一さんによる案内で、蔵見学が行われました。
 
 泉金酒造では数種類の酵母を使い分けています。代表としてはゆうこの想い、1801、9号酵母、M301、明利小川酵母(10号酵母)などです。それぞれの酵母について簡単に説明します。
ゆうこの想いは、岩手県のオリジナル酵母です。柔らかく温かみのある味わいが特徴です。1801は吟醸の香りを多く生成するため、大吟醸酒用の酵母として優れています。9号酵母は「吟醸香」の香気成分のひとつで、バナナやメロンのような香りを呈します。M301、明利小川酵母(10号酵母)はどちらも酒類総合メーカー・明利酒類株式会社が開発したもので、爽やかな吟醸香(カプロン酸エチルというりんごや梨、パイナップルなどの香りを呈する)を生み、また酸を作ることが少ないという特徴を持っています。
 
 その後、三段仕込みと言って、酒母に酒米と酵母、水、麹を入れて三回に分けて発行させ、もろみという日本酒になる前のどろどろとした液体を造る場所に案内して頂きました。見せて頂いたのは、三段仕込み終了後1週間たったもろみの入ったタンクです。

もろみの様子

9号酵母を使用しているため、酢酸イソアミル特有の熟した果実のような芳醇な香りが漂いました。完全に発酵しているため、炭酸ガス(二酸化炭素)で充満しており、良く近づいて嗅ぐと鼻に物凄い刺激が!!!
もろみの温度管理は厳格で、精米歩合によって最高温度・最高温度のキープ日時を設定し、1日3回温度を確認します。そして、日本酒度(甘口・辛口の指標)の上下によってタンクの温度を調節します。
伊藤杜氏によると、近年麹米(麹造りで使う米)の精米歩合を掛け米(もろみ造りに直接使われるお米)よりも5%少なくするのが流行りだそう。泉金酒造さんでも、造る酒によってそのような比率で造るものもあれば、同じ比率で造るものもあるので、比率を間違えないように気を付けながら造っているとのことです。
 また、三段仕込みは材料を三回に分けて入れるのですが、基本的にその比率は1:2:3です。この比率を変えると造りたい味や風味のもろみを造る事が出来ます。例えば、一段目の“添え”で仕込む米の量を増やすと、三段目の “留”の時に仕込む米の量が減る為、米の量に対して酵母が多いため食い切りが早く、発酵を早く、かつ十分に進めることができます。この場合、仕込みが短期で終わる分米が溶け切っていない為味が荒く、糖分が十分に発酵されているため辛口で、かつ端麗な日本酒が出来ます。逆に、留の段階で従来の比より米の量を増やすと、米に対して酵母が少ないため発酵がゆっくり進みます。そのため仕込みは長期になりますがじっくりしっかり米を溶かす分まろやかで甘口、かつ芳醇な味わいの日本酒となります。
 日本酒の味は仕込み時の米の量の比のみでは決まりません。水の量によっても大きく変わります。醸造用水にはカリウム、リン酸、マグネシウムなどが含まれており、これらは微生物の栄養源となって麹菌や酵母の増殖を助けます。お米100%に対する水の量は140%が平均と言われているそうですが、水を平均より多くすると発酵が盛んに行われるため辛口に、少なくすると発酵が控えめで、どろどろとした甘口の日本酒になるそうです。
 
 以上が酒蔵見学の様子でした。去年の見学では泉金酒造の歴史や蔵内部の構造、機械の案内などが中心でしたが、今年は杜氏さんの案内という事もあり、より日本酒造りに関する専門的かつ奥深いお話を聞く事が出来ました。様々な種類の酵母、温度管理の徹底、水の量、三段仕込みの米の量の比率、これら全てに気を配ってあの美味しい日本酒が出来上がると思うと…感慨深いですね。
新年早々、日本酒が飲みたくなってきませんか?

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