幸せを届ける甘じょっぱい少女の想い【イワシとわたし 物語vol.10】
彼女は誰もいない屋上にいた。
同じ外であっても、横を通っているはずの車の音は気にならない。
誰にも知られず、この空間にぽつねんといることが不思議なものであるように彼女には感じられた。
火照った頬に冷たい風が掠め、熱を攫っていく。
雨粒がパラパラと傘を鳴らす。
彼女が一人屋上にいるのには、れっきとした理由がある。
火照った体を冷まして、必死の作戦を立てるためだ。
彼女は両手で瓶を包み込んだ。
幸運なことに、彼女は彼の好物を聞くことに成功した。
彼は甘いものが好きだという