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フリーランス収入は事業?給与?

 さて、何やら「税金の解説」を始めそうなタイトルですが、今回はそんな実務上の話ではありません。期待された方、すみません(もしその話であれば、一般論でいえば「事業所得」です)。
 今回は働き方の多様化で、

「年々、事業か給与かの線引きが難しくなってきましたね」
「法制度はどう変わるでしょうかね」

 というお話です。さて、まずは記事の紹介。

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■ 記事の紹介・概要(NIKKEI STILE)

⑴ フリーランスの増加

内閣府によるとフリーランスに相当する雇用的自営業者の数は2015年で約164万人と年々増えています(図:記事より)。副業や兼業として仕事を請け負う人を含めると300万人はいるそうです。(記事より引用)

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⑵ フリーランスの税金

 税金面では「同じ仕事で同じ年収を得ても会社員に比べて不利」と税理士の藤曲武美さんは話します。フリーランスを含め自営業者は税制上、「個人事業者」として扱われます。実際にかかった経費を収入から差し引いて課税所得を計算します。
 これに対して会社員の場合は経費を一定の算式に基づいて概算します。「給与所得控除」といい、金額は多めに認められてきました。そうした格差是正を意識して政府は税制改正に着手しています。
 2020年から給与所得控除の額を一律10万円減らします。これだけだと自営業者に恩恵はないので同時に、自営業者にも会社員にも適用される「基礎控除」の額を10万円増やして48万円にします。その結果、会社員は給与所得控除のマイナスと基礎控除のプラスで差し引きゼロです。自営業者は基礎控除が増える分、事実上の減税となります。(記事より引用)

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 以下、私見です。

■ 雇用的自営業という言葉

「フリーランス=雇用的自営業」ではありませんが、類似するものとして扱われます。記事にあるように、フリーランス(雇用的自営業)は一般的に事業所得に該当します。
 ただ、面白いところは、雇用的自営業というワード。通常、所得区分の判断基準として「雇用」されている場合は「給与所得」、「自営業」であれば「事業所得」ですが、この2つの用語が「的」でくっつけられています。赤的青みたいな。「的」を辞典で調べると「そのような性質をもった」という意味だそうです。そのまま当てはめると、【 給与所得に該当するような性質をもった事業所得者 】とも言えます。
 よって、専門家や学者の中で、「給与か事業かで分けることが困難になってきた」「いろいろ時代に合わせて変えなきゃね」みたいな話が出ています。そもそも昭和の頃から、この給与か事業かという議論や裁判例はありました。また、事業と給与で所得計算に差がありすぎるのは不公平だという論点も、大嶋訴訟という有名な裁判が昭和の時代からあります。いよいよ、最近の働き方の多様化で本腰を入れなければ、という状況かと思います。

 この話題は、実はすごく身近でかつ難しい話です。例えば、私は本業以外に、学校で非常勤講師をしていますが、契約は「請負契約」ではなく「雇用契約」で、確かに雇われていますので報酬は給与です。しかし、一応専門家・実務家として呼ばれているため、非常勤社員というよりもカテゴリー的に外部の人間として扱われています(内面的にはフレンドリーに輪に加わっていますが笑)。要は、授業で喋るのみで、入学式や学園祭のお手伝いも生徒指導もありません。もちろん雇用契約書を見れば、明らかに雇用と判断できる材料・条項が揃っていますが、契約内容を変え、あくまで私は「セミナー講師」として請負契約とし、事業所得者のような立場でも似たような仕事ができるかもしれません。
 
 色々な職種で、事業か給与かの議論や裁判があります。1つ、雇用契約か否かという例を出しましたが、実際は、多種多様な判断基準があり、学術研究があり、これはさすがにnoteでまとめるよりも論文の域です(そのため冒頭でも「一般論でいえば」と濁した表現にしています)。ということで、話を戻しますね。

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■ 税制改正の話

 今回記事では、給与と事業、両所得の不公平感を払拭するため、税制改正があるという記述があります。その改正内容(基礎控除や給与所得控除の改正)が議論された平成28年の内閣府・税制調査会「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告」では以下のように記載されています。

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 ( 出典: https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/28zen8kai3.pdf

 また、自営業者全体は減っているもののフリーランス的な自営業者は増えているという図も、上記の中間報告の添付資料として紹介されています。

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( 出典 : https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/28zen8kai4.pdf

 上記図の基になった「国勢調査」は、次回は来年。体感としては、毎年フリーランスの方が増えているように感じますから、次回はもっと伸びるでしょうね。私もお客様で雇用的自営業やフリーランスの方が増えていますし、お客様でなくてもこの間、フリーランスの歯医者さんに出会いました。話題になってきた副業、複業の推進活動が進めば、より増え方に角度がつきそうだな、と感じています。

 個々の技術、職能、自己PR力があれば、いわゆる店舗等で開業せずとも、頭脳や腕のみで生計をたてられる。これから考えている人はもちろん、現在会社を経営している側にとっても、注視していきたい動向ですね。

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