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人はジャンル分けが出来ないと物事を認識できない。

あなたが「小説を書いています!」と初めてお会いした方に自己紹介するとして。すると当然、先方は「ほう、どんなものをお書きで?」とあなたに返します。この時に「ライトノベル寄りな文体です」とか「男女の恋愛ものです」とか「歴史小説です」とか「純文学です」とか、そういう「ジャンルや作風」をあなたは答えるでしょう。

でも、人によっては「基本SFなんだけどホラーとバトルの要素が強めにありまして…」みたいな方もいるわけで。

で、その時、先方は「え?結局SFとホラーとバトル、どれよ?」となって数日後には会話内容の大半が忘却されてしまい、当方が何をしている人なのかを全く記憶してもらえなくなる。もし仮に大声で「私は推理ものです!」と宣言する人が他にいた場合、「ええと、あの日は何人かの人と話して……そうだ、推理もの書く人!いたね!」などとそちらのことは覚えられていても、当方の存在は先方の記憶からするりと消えてしまう。

そういう「狭間の書き手」にいつの間にかなってしまった時。本当、対応に困りますよねぇ…。

本日はそんな「小説のジャンル」のお話です。



そんな割り切ったカテゴリ分けできるかよ!と書き手が思ったとしても。


人の記憶というのはどうしてもカテゴリ別で脳内に入れ込まないと整理できません。そもそも、皆様日々お忙しい。この世の全ての物事に手を伸ばせるような余裕は基本ありません。

なので、歌番組は好きなアイドルのところだけ見て、他の歌手の時間は別のことをする。家族を優先する分、仕事は最低限に抑える。

切り分けて一部の大切なことだけ管理する、時間も金銭も愛も有限だと想えば基本誰しもがそういう行動原理で動いていると思います。

読書もそうだと思います。面白いなら何でも、と口では言いつつも、どうしても「片寄る」。「ある特定のジャンル」のみだったり、「一応どのジャンルでも見はするけど、メディア化したもののみ」だったり、何かしら絞るはずです。1話あたりアニメ30分・ドラマ1~2時間、みたいに「ひととき」での読書はできないことが多いです。1章読むのに隙間時間をかき集めて何日もかけて、なんてことにもなりやすい趣味です。

本屋の平置きから選び、投稿サイトの上位ランクから選び、好きなジャンルから選び、推し作家から選び、積ん読の束のいくつかから選ぶ。常に選別される、それが小説本です。とりわけ「ジャンルで読む人」は多いのでは、と思われます。

でも人の思考ってそんな簡単にカテゴリで切り分けられるものじゃないんだよね……!書いているうちに全く違う要素が絡んでしまうことなんてザラですよね!その狭間のバランスのものこそを書きたいんだよ、と思うことだってあるはず……!

なので、書く側は「選んでもらえるように、自分を認識してもらうために」と色々とやりたがる脳内との折り合いをつける必要が出てきます。このNOTEの世界でもそうでしょう。

一度「このネタを他人に届けたい」と思ってしまったからには「そのジャンルを他者に明解に示さないわけにはいかない」。自分だけで書いて読んで満足できる人には不要なことですが、一度読者を意識した時点で逃れられなくなります。内容を一から聞いてくれるほど暇な方はそういない、ならばジャンルやいいね数の権威で殴り、時には題名で内容を説明する。全ては「我々がそのように選別するから」。

そして書き手はみんな悩みます。なかなか読んでもらえてない気がするし反応もあまりない。これちゃんと読み手に届いてる…?と。そしてタイパを求めた結果、ひとまず「特定ジャンル中の上位層」になることに血道を挙げることになります。

というわけで、ジャンルを示す・なければ自ら概念から考えて作る必要が出てくる。


私が過去、二次創作でとあるスポーツものにはまった時、参加イベントでのジャンル分けは「学校名」でした。主人公が属する学校=主人校がライバル校と次々に対決していく展開の作品のカテゴリ分けとしてはしっくり来ます。

しかし、A校のキャラとB校のキャラに絡みがあって、そのカップリングでイベントに参加したくなった時、「学校としての所属」はどうなる?

私は比較的そういう「狭間の書き手」になることが多いオタクでした。A校・B校、どちらの島にいても肩身が狭いのです。いや、周囲大人な方ばかりで別にいじめとかは全くないのですよ。けれども、私の気持ちとしてどことなく居づらい。あと「堂々と宣伝がしにくい」。同士の方がいらっしゃるなら大丈夫ですが、何というか、イベントスタッフ様もスペース配置に困ってるのでは…みたいな気分になっていました。自分に主催の手伝い経験があった分、余計に。

おそらく一次創作でもこの問題はあると思われます。面白さや特徴が群を抜いていれば「固有の作風の○○先生」と書き手の存在自体がジャンルとして成立するのでしょうが、そんな傑物な書き手は滅多に出るものではないのでしょうし、少なくとも私はそういうタイプではありません。出版社にも得意ジャンルがあるので、当然編集者の方もそれに沿った人材をお求めでしょう。読み手の方もこれ!というジャンルをお求めのはずです。

プロになるか賞レースに参加するか趣味で書くかは関係なく、人目に触れるなら一言で言えるジャンルを提示しなければ存在さえ認識されない…まだカテゴリがないなら自分で作るしかない。

私がスポーツものの二次創作で困った時は、引っ越す前に両キャラふたりともがいたC校、という存在がたまたまあったので「どの学校が推しですか?」と聞かれた時には「C校です!」と宣言して乗り気っていました。学校別カテゴリだったので校名で答える、というルールの元に判断した結果です。

小説のジャンル分けならば、どういうルール・基準で分類されているのか。こういう感覚が「狭間の書き手」には必須な気がします。

どんなジャンルでももれなく評判になるものを書けるならば気にする話ではないのでしょう。でも私は未熟者なのでなるべく特定のものに絞って注力していきたい。そしてそれは得意なジャンルであるのが一番メンタルに優しい。


私は今一次創作で二次創作をやっている。ジャンル愛を求めて。


このNOTEでリハビリと称して以上の2作品を仕上げたのですが、どちらの作品も等しく私は書いていて楽しかったんですよ!それぞれずっとやってみたかったことだったので。

この「やってみたくて」という感覚には覚えがあります。二次創作です。特定の作品や組織やキャラクターに愛を抱いて、その愛を示すために書いて、同士と交流する、という一連の活動です。

私は今、「自分が好きだと感じた一次創作のジャンルの中で、好きな展開や方向性のものを、二次創作的に出力している」。そういうものを愛しているから、それが好きだと形にして出した。そういう展開が好きな同志と語り合えたら嬉しい。

二次創作で長年生きてきた人間のため、一次創作でも同じ動きをしてしまうようです。結局は全て好きな作家さんの作風の模倣でしかなく、先人のふんどしで相撲を取るまでにも至っておらず、単にふんどしの手触りのみで萌えて悶えている程度だと思われます。変態ストーカーみたいだな!

時に「私はそのジャンルを愛しているけど、そのジャンルは私をそれほど愛していない」という可能性がある。


でも何て言うか、やはり私は恋愛もの1本で書くのは苦手かもしれません。何にも考えずに書き付けた初稿の「絶望薔薇好き令嬢~」は本当に糖度が低すぎてですね…だいぶ色々と付け加えて推敲してギリギリ赤点を回避した感があります。やっぱり「恋愛ものの名手」の方々の基準を思うと、がっつり恋愛難しいな…!と思いました。イケメンヒーローを書くのも可愛らしいヒロイン書くのもキュンな展開を作り出すのも難しい。

書けはする。書くのも読むのも好き。でも書き手としてメインジャンルにするには程遠い。私にとっての恋愛ものはサブジャンル。

対して「縛られ幽霊と~」の方は、そこまで無理を感じませんでした。いや、全然ホラー作品としては未熟なんですが。それでも、例えば今後私がホラーものをもっと真剣にやりたいと考え、参考作品を読み込んだり書くための勉強やトレーニングを開始するとして、その作業は「それほど苦ではなさそう」に思えています。不思議と、恋愛ものよりは。少しはこちらの愛が響いて帰ってきそうというか。さすがに「ホラーを愛し、ホラーに愛された女!」とはとても豪語できませんが、それでもまだ「少しはやれそう」に思えます。

全力で愛を込めて書くなら、やっぱりジャンルからも少しは愛されたいなぁ……とついつい思ってしまいます。数ヵ月後にしれっと「この愛は気のせいだったわ」などと言うことになるやもしれません。まだ予感でしかありませんし、実はどこかにホラーよりも「もっと私を愛してくれそうなジャンル」があるのかもしれません。

でも、ちょっとだけ頑張ってみようかなぁ、とこの変態オタクはふんどしにまみれながら思ってしまったのでした。二次創作では大体1ジャンルに4~5年くらいのスパンでいたので、ホラーもそのくらいの年数はあがいてみたいですね。

まぁ「私はホラーの書き手です!」とジャンルの名言ができるメンタルでは、まだないのですが。


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