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母とわたし。

「幼稚園行ってみる?」
弟が生まれて、わたしは馴染みの保育園をやめて幼稚園へ通うことになった。
弟の出産休暇を利用して、わたしとの時間も作ってくれた母の計らいだったと思う。

記憶の中では人生最初の大きな環境の変化を想像もできないまま、わたしはなんの迷いもなく母の提案を承諾した。

通うことになった幼稚園では、上品な制服を着て、お弁当を持参して、学校の真似事をした。友達はすぐにできたけれど、保育園とは明らかに違ったなんだか気取ったノリに、結局最後まであまり馴染めなかったと思う。
生まれて初めて”いじめ”を目撃したのはこの幼稚園だった。思い出したくもない残酷すぎた男の子同士のいじめに大ショックを受けた。

幼馴染の男の子たちと距離ができて、ピアノを習い始め、リカちゃんやシルバニアファミリーで遊ぶ女のこの友達ができた。幼稚園の制服も、伸びてきた髪の毛も、わたしを女の子のようにしていって、ついにはわたしはジェニーちゃん派になった。

台所に立っている母。

「女の子の絵をかいて。」
鉛筆はゆっくり、その線が増えていくのを眺めた。丁寧に思考されて描かれた子たちは新鮮で魅力的だった。

母も少女だった時、描いていたのだろうか?
どれくらいぶりに描いただだろうか?
母も、楽しかっただろうか?嬉しかっただろうか?
何を思っていただろうか?

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