「いわきFCのJリーグ」が始まる【平澤俊輔営業日記】
2020年限りで現役を引退し、昨年からフロントスタッフとして奮闘中の平澤俊輔が、今の気持ちを綴ります。
▼プロフィール
ひらさわ・しゅんすけ
1994年生まれ。JFAアカデミー福島→早稲田大
2017年いわきFC入団
2021年現役を引退し、フロントスタッフに転身
■「映画の世界の出来事」が現実に起こってしまった。
皆さん、大変ごぶさたしております。
恥ずかしながら、このような日記がはるか昔にあったことを、覚えておられますでしょうか…?
多くの皆さんにいわきFCのことを知ってもらおうと、一昨年に立ち上げたいわきFC公式note。今や重要なツールとなってきました。その中で私が「選手の気持ちがわかるスタッフ」として思いを発信する企画にも関わらず、更新が滞ってしまい、申し訳ありませんでした!
今回、プロモーションの中道さんが非常に申し訳なさそうな顔で「日記、再開しませんか…?」と言ってくれたので、重い腰を上げ…いや、重いペンを持ちました(笑)。「いわきFCのJリーグ」が始まるこの時期に、あらためて再開させてください!
今回は、かなり個人的な想いをテーマにお伝えします。
3月11日で、東日本大震災から11年を迎えます。
私自身も被災を経験した一人です。当時は高校1年生。大地震が起きた時は、広野町のJヴィレッジのピッチで練習していました。
「ボンッ」と身体が浮くような縦揺れの後、まるで陸全体がスライドしているかのような横揺れ。立っていられず、地面に這いつくばることで精一杯でした。
広野町のランドマークとして火力発電所の煙突があります。大地震の直後、煙突から普段見ることのない真っ黒な煙がもくもくと上がっているのが見えました。映画の世界の出来事が現実に起こってしまった。そんな恐怖を鮮明に覚えています。
その後、原発事故の影響などで、当時住んでいた広野町から離れざるを得ませんでした。
私自身、茨城県日立市の出身で、隣接する市町村に原子力発電所があったことから、もし何かが起こってしまった場合の原子力エネルギーのすごさや人体に及ぼす影響について、多少なりとも知識を持っていました。
地震と津波によって変わり果てた町という「目に見える恐怖」と、原発事故による「目に見えない恐怖」。
この後、自分はどうなってしまうのだろう。
不安を抱えながら避難のバスに乗った記憶があります。
その少年が6年後、福島に戻ってサッカーをして、8年後には、離れざるを得なかったJヴィレッジの再開記念マッチで、ピッチに立つことができるとは!
震災直後はそんなこと、これっぽっちも想像できませんでした。
そして今年、その地域にJリーグのチームが誕生!
昔の自分から「選手引退しているのかよ!」とツッコミを受けそうですが、それでもいいんです。
■失ったものを嘆くより、これからを創り出そう。
引退して1年が過ぎ、少年のころにはわからなかったこの地域の魅力が見えてきました。
「もしもの話」はスポーツ界ではタブーですが、もし東日本大震災がなかったら普通に卒業し、普通に地域を離れ、普通にサッカーしていたかもしれません。おそらく、この地域への想いも薄かったことでしょう。いわきFCも存在していなかったはずです。
今いるこの世界は「本当はなかった方がよかった世界」です。
ただ、それによって多くの出会いがあったのも事実。
この地域にはまだ復興が進んでいない所、人が戻ってきていない所、人が戻れない所があります。その中で「どうしたら復興が進むのか」「どうしたら人が戻ってくるのか」「人が戻ってきたら何をしようか」を考えている人達が、たくさんいます。
「失ったものを嘆くより、これからを創り出そう」
そんなパワーが集まってきているのです。
そのような人達の思いを、前向きなエネルギーで加速させたい。これが、私がいわきFCで働く理由です。いわきFCならそれができると、私は信じています。
この1年でたくさんの失敗をしました。正直、失敗を恐れて仕事が億劫になることもあります。でも選手を見ていると「負けていられない」と思います。「もっと失敗するぐらいチャレンジしないと!」と思わされます。
だって、あんなにきつい練習を毎日して、毎日仲間と競い合って、週末には倒れず・止まららずに走り続け、観ている人をワクワクさせて、清々しく喜び合っているんですよ。
選手達のそんな姿を見たら、勇気がわいてきませんか?
いよいよ3月13日、いわきFCのJリーグが始まります。そして3月20日には、ホーム開幕戦がJヴィレッジスタジアムで行われます。多くのお客様を迎え入れることができるよう、てんてこ舞いになりながら、みんなで準備しています。
いわきFCサポーターの方だけではなく、アウェーチームのサポーターの方々など、多くの皆様のご来場をお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
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