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I.G.U.P 検討委員会レポートvol.14 新スタジアムは、若者たちのチャレンジを支える場所であるべし

年度の締めが迫る2024年3月10日10回目の検討会が開催されました。「年度末・年度はじめ」のバタバタもあり少し更新のタイミングが遅れてきてますが、たっぷりとレポートしていきたいと思います。最後までお付き合いください。広報チームの小松が担当します。

まず、直近のいわきFCですが、2月の開幕試合こそ水戸に白星を献上したものの第2節岡山戦はドローでしのぎ切り、3月9日の第3節、鹿児島戦は3得点を重ねての初白星。「昨日は勝ちましたね」というポジティブな挨拶が検討委員会の冒頭でも見られていました。

これまでの議論

これまでの議論の模様をざっくりと紹介しますと、前回のレポートでも紹介したように、これまでの検討会で、新スタジアムについて以下の4つのキーワードが出されています。

【4つのキーワード】
1、まちの構造を変えるスタジアム
2、常に時代の先をゆく可変的スタジアム
3、教育・学びを支えるスタジアム
4、人が集い「偶然の出会い」が生まれるスタジアム

この4つの方向性以外にも、個別で議論を進めてきたユースチームからは、すでに「7つの提言」が示されています。

【7つの提言】
1、地域の資源を「借景」としてシェアすることで魅力がふくらむ新しいシンボル
2、いつでもだれでも楽しめる
3、だれにも我慢させない居心地が良い優しい空間
4、未来につながるおもてなし
5、近い距離
6、だれもが思い立ってすぐ行ける
7、子ども・若者も含めみんなで参画して創る未来

この7つの提言を、我々大人チームもしっかりと踏まえたうえでこれまで議論してきたわけですが、今回の第10回検討会は、今一度「4つの方向性」に立ち返り、このキーワードの解像度をさらに高めて言語化しよう、というワークショップが行われました。

みんなでキーワードを出し合ってディスカッション
キーワードを出し合い、言葉を分析していきます

まず、テーマごと4つのグループに分かれ、10分ほどグループワーク。そのキーワードが出てきた背景や、そのキーワードが実践されたときに実現されうる未来像などについてフリーディスカッションし、そこで出てきた印象的なワードを紙に書き出しいきます。

1on1形式でさらに言語化を進めていきます

その後、その4つのグループが「1on1」で向き合い、自分たちのグループからどのような言葉が出てきたかをシェアしあいます。4つのグループがそれぞれ総当たりとなりますので合計3巡するかたちです。そして最後に、スタジアムにタイトルコピーをつけ、全員に対して発表しました。

私も議論に参加していたので、他のグループでどのように言語化されていたのかまでは追いきれなかったのですが、これまでの議論でさまざまな言葉がインプットされ、また信頼関係も構築されているためか、どのグループも、どの委員も割とすんなりと、そしてポジティブに言葉を発することができていた気がします。

半年以上議論をしてきた蓄積が出始めているように感じました
4つのグループそれぞれにキーワードが出てきました

私は「教育・学びを支えるスタジアム」のチームに入りました。浜通り地域は、教育の選択肢が意外と狭いこと、子どもたちもさまざまな課題を持っていること、一方で、震災復興などの文脈を考慮すると、じつは探究的な学びのフィールドとしての可能性がとてもあること、そうした学びの実践的な場所としてスタジアムが機能しうること、などをじっくりと語りました。

他のグループの皆さんとも議論を重ねたわけですが、興味深いのは、どのグループとも、出てくるキーワード自体は異なるけれども、「似たようなことを考えている」ということがはっきりと見えてきた気がします。発表の内容を要約して紹介したいと思います。

<1>まちの構造を変えるスタジアムグループ(発表者:南郷さん)
タイトル:行くとChallenge!!しちゃうスタジアム

ほかのグループと課題について議論することでいいキーワードを頂いた。例えばスタートアップキャンパス、未来への投資、集まる・集う・偶然の出会いなどのキーワードがあった。それを踏まえたうえで求められているものはチャレンジであると認識した。

タイトルは「行くとChallenge!!しちゃうスタジアム」。このタイトルは「出会える」「居場所」の2つの意味をもっている。1つ目の「出会える」とは、共鳴できる仲間、同質性の超えた新たな別の属性の仲間、応援してくれる人、チャレンジングなわくわく感と出会えるということ。こういうことの積み重ねが、アウェイサポーターの移住のきっかけになればよいと考える。

もう一方の「居場所」については、居心地の良い場所であるということ。若者の流出が課題となっているが、流出先で成功することは、本来喜ばしいことであり、それを無理に止めようとするのではなく、どんどんチャレンジをしている人同士を引き合わせて繋がりを作ることで、新たな活力がいわきに入ってくるのではないかと考える。

具体的なチャレンジとしては、街づくりや新しいビジネスに関するインキュベーションがあり、街のことに関わる機会を作ることで、今後もいわきに関わり続けることができるのではないか。

<2>常に時代の先をいく可変スタジアムグループ(発表者:三上さん)
タイトル:ツールとしてのスタジアム

可変スタジアムをテーマに挙げているが、他グループと議論していくうちに、そのテーマに対するツール、つまり課題解決を図るためのツールとしてのスタジアムの役割が求められていると感じた。そこでツールとしてどのようなことができるかを整理した。

まちの構造を変えるスタジアム、という論点では、海外事例に倣い、スタジアムに芝工場を作り、他の競技もできるようなスタジアムにすることで東北ならではの冬場のスポーツも実施できるようになる。メタバースを活用し仮想空間でもスタジアムも実現できる。VRゴーグルや試合解説イヤホンなど、新しいデジタルツールとしての役割を持てるはずだ。

教育・学びのスタジアム、という論点では、スタジアムに人が集い、学びを選べるようにできるツールとして使える。若手社員の研修場所とすることもできる。実際に他スタジアムでは社員教育の運動会を実施した例もある。また、小中学生が実際にお金儲けを体験ができる場、いわば「リアルキッザニア」としての役割を持たせることもできる。

出会いの生まれるスタジアム、という論点では、「すでに挑戦している人と挑戦したい人が出会う場所としての役割」、「アウェイサポーターがいわきFCサポーターの家に民泊するなど、試合がなくとも楽しめること」、また「アーティストレジデンス」など、都会とは異なり自然環境の中でインスピレーションを育んでもらうこともできる。スタジアムグルメが手軽に出店できるようなショップを設け、看板はデジタルサイネージを設備すれば、すぐにチャレンジショップとして利用できる。

上林座長から、独自視点が次々と注入されていきました

この発表に対しては、座長の上林先生からも、「まちの規模で変化する場所としてスタジアムは色々な可能性がある。ユース報告書を踏まえると『防災の施設』にもできると考えており、防災施設などはまちとして常時持っておくは難しいが、スタジアムが可変することで持てるようになるのは非常に強みである」とコメントがありました。

<3>教育・学びを支えるスタジアムグループ(発表者:小松)
タイトル:教育・学びを支えるラボ
※筆者が発表しておりここは写真がありません

私たちのグループでは、教育の課題としては居場所がない、偶然の出会いがない、チャレンジできる場所がないなどの課題が挙げられた。そのため新スタジアムとしての役割としては「選択肢を増やすこと」が重要。

キーワードとしては3つ「アクティブ公民館」(対話の場になるような大人の学び・遊び場を用意し、子供が巻き込んで繋ぐことができる場)、「プレイング・ラボ」(遊びとすると学びのハードルが下がり、高校生などが平日でも集まれるような場)、さらに「フォースプレイス」(サードプレイスにもう1つ付加価値をつける第四の居場所)などが出てきた。

人が集い偶然の出会いが生まれるスタジアムグループ(発表者:北澤さん)
タイトル:みんなの居場所・偶然の出会い そして笑顔へ

lキーワードとしては「居場所、出会い、笑顔」としている。前回の分科会で高校生の意見を頂き、最近の若者は同じ趣味をもつ友人関係が狭く深くなっているため、もっと広く出会いの場を求めているとのことだった。日常の放課後等でみんな集まることができる場所が欲しいとのこと。

スタジアムによる解決案として居心地の良い場作りをすることが考えられる。物理的・心理的に近しい距離を作るための場所になっていけば良い。また、若者の流出を止める施策として、学校自体を作るっていうことは難しいが、代わりになるような場所にできるのではないかと考える。

4つのグループに共通する言葉が見えてきました

4つのグループに共通する「チャレンジ」や「出会い」

今回、改めて見えてきたものがあります。それが「若者の課題」と「チャレンジ」という言葉に象徴されているように思います。

いわき市・双葉郡の構造的な課題として挙げられるのが、「若者の流出」です。進学などを契機に、主に首都圏に流出した若者が戻ってこないという問題。若い世代が戻ってこなければ地域の高齢化は進み、未来が先細りしてしまうというのは全国の地方都市の課題でもあります。

スタジアムは、まずはこの課題に正面から向き合うべき場所だ、ということになるでしょうか。では、どのように向き合っていくのか。それが個別のキーワードに見えていましたね。まとめるとこんなところでしょうか。

・若い世代のチャレンジ・やりたいという思いを支える
・地域にあるすばらしいもの・人と出会える
・アウェイサポーターなど県外の人たちとも出会える
・最新のテクノロジーやデバイスに触れられる
・アートなど非日常の表現、作品などに触れられる
・日常的に居場所として使える福祉的な場所でもある
・地域の良さ、文化、すばらしさに触れることができる
などなど

このレポートの冒頭で挙げた「4つのキーワード」が意味するところはそれぞれちょっとずつ違いますが、委員の多くは、この地域の将来、若者たちの未来について考えていたのでしょう。その意味で、やはりこのスタジアム検討会が当初から「若者の意見を聞く場」を作り続けてきたことは間違いではなかったように思います。

ユースチームもまた個別に検討会議を行い提言をまとめた報告書も作成してくれていますが、それをさらに念頭に置き、そうした場を続けながら、若者の力を借りながら、若い世代がシビックプライドを感じられる場所チャレンジでき、成長できる場所、いずれ戻ってみようかなと思ってもらえるような、いわば「ターンの起点」になるようなスタジアムをデザインしていかなければなりません。

そんなスタジアムは、起業家を育てるかもしれないし、表現を支える場所になるかもしれないし、学んだり研究したりすることができるかもしれないし、多くの価値観触れられ、自分らしくいられる場所であるかもしれない。どうも私たちは、そのようなスタジアムを目指しているようなのです。

長く議論を続けてきましたが、これまでになくはっきりとしたビジョンが見えてきた第10回検討会でした。

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