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JFL第3節 FC刈谷戦【いわきFC監督・田村雄三ここだけの話~BEHIND THE SCENES③】

田村雄三監督が自ら試合を振り返る連載コラム。第3回目は、3月28日にいわきグリーンフィールドで行われたJFL第3節の裏側について。

▼プロフィール
たむら・ゆうぞう

1982年生まれ。帝京高→中央大→湘南ベルマーレ
2010年に引退。湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て2015年、いわきFC強化部へ。2017年よりいわきFC監督


JFL第3節・FC刈谷戦の振り返りを書かせていただきます。

悪天候の中、また春休みの中、いわきFCの試合を選んでいただき、応援していただき、ありがとうございました。おかげ様でセットプレーから2得点を取り、無失点で勝利することができました。

セットプレーは、攻守ともにポイントになりました。まず攻撃のセットプレーでは、動きの変化とパワーを持って入ったことが、得点につながったと思います。そして相手のセットプレーについては、試合を重ねることが一番のトレーニングになっています。相手のさまざまな仕掛けに対応していくことで選手間にアラートが生まれ、「守る」空気ができていく。その部分が素晴らしかったと思います。

今節はグランド状況、風、雨の影響も考え、選手達には「シンプルに前に向かってプレーすること」を徹底させました。前半途中まではDFラインがやや深く、ボランチが吸収されてしまっていました。でも、給水タイムの20分ぐらいから修正できたと思います。

ポイントは、前線からのプレスの部分で、相手の3センターバックに対し、FW鈴木翔大と古川大悟、そしてMF金大生と平岡将豪がプレスをかけ、連動することでした。しかし、できていたこととできていなかったことがあったように思います。前に奪いに行ける時と行けない時の見極め、そして後ろからのスライドの部分です。センターバック間の距離も含めて、課題がいくつか出ました。

そして後半は45分~65分の押し込まれる時間帯で失点しなかったことがよかったです。クリア時のDFラインをもっと押し上げることができたら、さらによかった。

全体を通して前向きにプレーしたこと、2試合連続でクリーンシートを達成できたことは、高く評価しています。

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プロ=株式会社 自分。

今節、試合前に選手に伝えたことは以下です。

①今シーズンのチームスローガン。
「HUMBLE &HUNGRY. -成長を、挑戦を貫く- 謙虚に貪欲に」。試合時に毎回話す「我々の立ち返る場所」です。
②パワーあるプレーをする。
前向きにプレーすること。パス、ドリブル、ランニング、クロス、クロスの入り方など。
③クロス、セットプレーを大切にする。
チームとしての取り組みを実行すること。「誰が、いつ」というコーチングの重要性。
④風、グランドの状態を考える。


実は①について話す前提として、選手達にあるデータを示しました。

20分後→42% 1時間後→56% 1日後→74% 1週間後→77% 1カ月後→79%

何のデータでしょう? 皆さんわかりますか?

ちなみに、選手たちは誰もわかりませんでした。ある選手は「降水確率ですか?」と、場を和ませてくれました笑。

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答えは「エビングハウスの忘却曲線」

ドイツの心理学者・ヘルマン・エビングハウスによるデータで「人は記憶して20分後には覚えたことの42%を忘れる。1時間後には56%を忘れ、1週間後には77%を忘れる」というものです。

つまり、忘れてしまうのが人間。昨シーズンの悔しい結果も、それを踏まえて立てた今シーズンのチームスローガンも、ここまでの2試合に臨んだ気持ちも、いずれ忘れてしまう。人間ですから、それは当たり前のこと。

でも「今ならまだ間に合う」と思いました。

実は今週の紅白戦で、サブ組(と、完全に決まってはいないのですが…)が勝利しました。内容も圧倒的でした。インテンシティ、準備、予測のスピード…すべてが上回っていました。逆にスタメン組は上手くいかず、文句の言い合い。バラバラになっていました。

紅白戦でサブ組が勝利することはあります。彼らの試合に出たい、メンバーに入りたい気持ちが表れ、チームとしては非常にいい雰囲気でした。彼らのモチベーションの高さが、第3節に向けた準備期間で最もうれしかったことでした。

振り返ればこれが、勝利の最大のポイントだったように思います。

もちろん試合になれば、チームはスタメンの選手、ベンチスタートの選手、メンバーから外れるバックアップ選手に分かれます。サブ組の勝利、スタメン組の文句の言い合い、バラバラな雰囲気、コンディション、メンタリティなど、いろいろな側面から考え、チーム状況はよくないと思えるかもしれません。

でも、私はそれを「チャンス」ととらえ、試合前にこう言いました。

今週の紅白戦で、仲間が「慢心しているぞ、浮かれるな。試合に没頭しろ。チャレンジャーだろ。謙虚に貪欲にプレーしろ」と教えてくれた。今こそチームスローガンに立ち返ろう。

悔しさも納得できないことも、その都度あると思います。それでもチームのために行動できる選手たちだからこそ、結果がついてきているのだと思います。

もちろん時には、チームのために行動できないこともあるかもしれない。でもプロである以上、評価は他がします。そしてすぐ次の準備が始まるし、時間は止まってくれません。

「プロ=株式会社 自分」。「株式会社 自分」はどう見られているのか? その結果は、すべて自分に返ってきます。

試合後、クラブハウスに戻り、バックアップの選手と出場しなかった選手はトレーニングをしていました。試合に出場した選手は、交代浴、ストレッチなどのケアをしていました。

また、1週間の競争が始まります。

(※YouTubeでは試合のロッカールームやチームの裏側に密着した映像「BEHIND THE SCENES」を公開中。)


第3節のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)は?

リクエストにあった、今節のMOMです。私の偏見で選びました。

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