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ドミニカ移住 #16 : なんでアジア人の私が突然ドミニカのソフトボールチームに加入することになったのか

__________2018.6.21(木)

いつもと違う練習場に

 普段朝から練習を見に行っている場所とは異なる場所の練習を見たくなり、この日はペンションから徒歩5分くらいのところにある野球場に行ってみることにした。以前、近所を散策していた時に見かけたことがあり、それ以来気になっていた場所だ。

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左手に見える木々の向こう側に練習場がある


 昼食を終えたころに足を運ぶと、ちょうど小学生以下ぐらいの幼い子供たちが野球の練習をしているところだった。1団体だけが練習していて球場内はかなり閑散としている。普段イポドロモで見ている少年たちと比べるとあまりに小さすぎるため、練習方法などの比較がしにくそうだ。


 それでも、しばらくの間フェンス越しにぼんやり練習を眺めていると、40~50歳半ばと思われる小柄な男性が歩いてきた。散歩がてらここへ足を運んだというそのおじさんと話してみると、彼がベネズエラ人であること、また大学で講義をもつ歴史学者であることが発覚する。この国に来て初めて、学者という職業の人に出会った私は大いに感動し、自分が調査・研究のためにこの国へ来たことを興奮気味に打ち明けた。すると、彼もそんな私に興味を持ってくれたようで、「自宅が近所にあるからこの野球場にはよく来るんだ」と言って連絡先を交換してくれた。「16時ごろになればもう少し年上の少年たちが練習しに来るよ」という彼の言葉を信じ、私は一度ペンションへ戻った。


リベンジ

 16時になり、もう一度同じグラウンドに行ってみると、先ほどとは異なる景色が広がっていた。野球場の中ではグラウンドの半分を中学生以上とみられる少年たちが練習しており、もう半分は女子のソフトボールチームが練習している。また野球場の外のコンクリ部分では別の団体が基礎練習やネットを使ったティーバッティングをするなど、さきほど来た時とは比べ物にならない人がこの野球場を拠点に活動していた。


 この人数の中、いきなり一人で球場のグラウンドに突っ込んでいく勇気が出なかった私は、とりあえず外のコンクリ部分で練習していた団体に近づいてコーチらしき中年の男性に声をかけた。経緯を話し、練習の風景を見させてほしいと頼むと、彼は二つ返事で快諾してくれた。ここにいる少年たちは、ちょうど普段イポドロモで練習している少年たちと同じくらいの体つきだ。


「お前も打ってみろ」

 少年たちがティーバッティングをしているのを見ていると、コーチの男性が「とりあえずお前も打ってみるか」とバットを渡された。私が練習したいわけではない、見てるだけでいいのだと説明しようとしたが、コーチや少年たちの目がどこか興味津々な様子に見えたためとりあえずティーバッティングを打ってみることにした。アジア人の女がバットを持っている状況が珍しかったのだろう。順番待ちをしていた少年たちからもまじまじと見られ、かなりやりづらさはあったものの、1球、2球…とコーチにトスを上げられるがままにボールを打ち返した。すると、コーチや少年たちは「なかなかいいじゃないか」と日本では大して上手い方でもない私のことを誉めてくれた。「今度から毎週練習しにくればいい」と言うコーチの誘いはさすがに断ったが、実際に自分がプレーしてみることで周囲の反応が変化することや、初対面であっても相手との心の壁が少しばかりは取り除かれることを身をもって感じた。

 気がつくと、コーチの男性が野球場内で練習していた女子ソフトボールチームの選手たちに大声で「おい!!今からこのチナが行くから、練習に入れてやってくれ!!」と叫んでいる。「え!ちょっと待って!」と彼を制止しようとしたが、時すでに遅し―。近くにいるほとんどの人がこちらを見ている。そんなつもりさらさらなかった私は動けるような服装でもなかったが、「早く!走れ!!」と謎にけしかけてくるコーチの声に背中を押され、全力疾走で球場内のソフトボールチームに合流した。半ば強制的に訪れた、この女子ソフトボールチームとの出会い。彼女たちとの出会いがきっかけで、その後のドミニカ生活が一層充実したものになるなんて、この時はまだ思いもしなかった。

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