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「ナショナル ジオグラフィックが見た日本の100年」で近現代史への興味が深まる

さてコロナの影響で仕事がとんだりしているわけですが、CG方面の自主学習が進むなど悪いことばかりではありません(と、前向きに考えるようにしている笑)。

この機会に積読中だった「ナショナル ジオグラフィックが見た 日本の100年」を毎日少しずつ読み進めていますが、わからないことを調べたり、その時代を描いた映画やドラマを思い出したりしてると近現代史をもっと知りたいという欲求が高まって最高です。


ナショナル ジオグラフィックによる過去100年間の日本に関する記事の集大成

ナショナルジオグラフィックは、1888年に創刊された雑誌。なんと130年以上も続いているんですね。非営利団体「ナショナル ジオグラフィック協会」が運営していたものが2015年に21世紀フォックスに売却され、その後フォックスがディズニーに買われたので今はディズニー傘下なんですって。

「ナショナル ジオグラフィックが見た 日本の100年」には、1894年12月号から2012年2月号までの日本に関する記事が収められています。各記事は写真とともに日本の風土や伝統、産業、事件、日本人の気質など、あらゆる事柄に触れていますが、オウム真理教の事件については取り上げられていないなど、歴史に残る出来事を完全網羅しているわけではなく、あくまでもナショジオに掲載された記事のまとめということのようです。

記者の主観も入っているので、史実を客観的に捉えるためにはもっと多くの情報にあたる必要があると思いますが、そのあたりを差し引いても十分に読み応えがあります。外国人の目線で語られているのも興味深いところ。どのように見えているのかって中々わかりませんからね。

古い時代の日本を写真で見るだけでもおもしろいのですが、歴史に名を残す人物が記事を書いていたりして、その文章を読むと好奇心が倍増します。


1896年9月号 三陸地方を襲った津波

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2011年の東日本大震災がまだ記憶に新しいところですが、東北地方の太平洋側は過去に幾度となく津波の災禍に見舞われている地域。

三陸沖では1896年に津波による被害が発生しており、座礁した船や瓦礫の山と化した沿岸部の写真とともに、その時の状況が記されています。とても生々しく、また資料としても貴重。

助かった住民の証言によると、高波が押し寄せる直前に、突然海の水が600メートル近くも沖へ向かって後退したのだそうだ。その後、波が高さ240メートルはあろうかという真っ黒い壁に変身し、打ち付けるように岸に向かって襲いかかってきたそうだ。

記事を書いているのは、エライザ・R・シドモアさん。親日家として、人力車で日本全国を巡って書いた著書「シドモア日本紀行」はKindle本にもなっています。めちゃおもしろそう。速攻で欲しいものリスト入り。

シドモアさんは、他にも非常に興味深い記事を寄稿していらっしゃいます。


1898年12月号 日本の発展・成功を確信

1898年(明治31年)に書かれた、日本の経済発展を予測する記事の中に次のような一節がありました。

日本を訪れて気付いたのは、川が多く、水資源に恵まれているということだ。この豊富な水資源を利用すれば、将来、電気をエネルギー源とした経済の発展が可能だろう。例えば、電気を使って自動車を走らせることが可能になるかもしれない。

ちょっと待って、電気自動車って割と最近の話なのでは?と思って調べたところ、電気自動車って、ガソリン車よりも前にできてたんですね。いまのような先進的なものとは違うんでしょうけど。

水力発電も日本では明治30年が最初だそうで、そういった背景を考えると電気自動車も水力を利用したエネルギーもすでに存在していたことがわかりますが、それにしてもそこから日本の経済発展を予測するのはかなりの彗眼ではないでしょうか。

一体、誰がこんな記事を書いたのだろうと思ったら、なんと電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルでした!ナショナルジオグラフィックの2代目の会長だったそうです。


1930年5月号 タフト米大統領の訪日記

ナショナルジオグラフィックには、アメリカのタフト元大統領も寄稿しています。ウィキペディアによると、タフト元大統領の在任期間は1909〜1913年で、記事が掲載された1930年は退任の十数年後。

タフト元大統領は5度も来日しており、明治天皇にも謁見されたそうです。文章からは日本への敬意が感じられ、戦争を望んでいなかったことがわかります。

日本は私たちが考える以上に大衆政治の国である。日本の政治家が米国との戦争を望んでいるとは考えられない。
(中略)
私が米国大統領の職にある中、日米政府間の関係が円滑に保たれているのは喜ばしいことだ。菊や桜、美しい風景、勤勉、愛国、勇気、忍耐。日本は偉大な力をもっている。日本はわれわれと信頼関係を保ってきた。われわれも、それに応えなければならない。

クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」でも、日本と米国の高官達が「我々が戦争することになったらどうする?」と談笑する場面がありました。戦前は関係が良好だったときもあったのに…

第二次世界大戦の凄惨さは、Netflixの「WWII最前線:カラーで甦る第二次世界大戦」でも見ることができます。「運命の悪戯」のようなできごともあったことを知りました。現在は軍事大国のアメリカも、当時はいまほどではなかったとか多くを学べます。


1991年11月号 円高日本のアジア進出

戦後の焼け野原から著しい経済成長を遂げて、後にバブル期と呼ばれる時代に入った日本。記事ではワーカホリックの戦後世代とは異なり、高い給料と少ない労働時間、そしてゆとりを求める「新人類」と呼ばれる若い世代について触れられています。当時の新人類も、いまや初老ですよ(涙)

1990年代、日本がアメリカの企業を買収し、経済進出していた時代を描いた「ライジング・サン」というサスペンス映画からは、当時のアメリカが日本に抱いていたであろう脅威や不安を感じられて面白いです。

ちなみにバブル期の日本は「ふるさと創生事業」と称して、全国の市町村に1億円ずつ配ったり、ゴッホのひまわりを50億円以上で落札したり、「エコノミックアニマル」とディスられて、ジャパン・バッシングのパフォーマンスで日本車を破壊されたりしていました。

劇中、日本通のジョン・コナー(ショーン・コネリー)とウェッブ・スミス(ウェズリー・スナイプス)との掛け合いで、後輩のウェズリー・スナイプスが「センパーイ」というのはわかりますが、ショーン・コネリーが「コーハイ(後輩)」と呼んでいて抱腹絶倒(笑)。

いわゆる「変な日本」的な表現があったりしますが、それよりも日本のことを徹底的に調べ上げていたことがよくわかり、なるほどアメリカ人からはこんな風に見えていたのかと勉強になることは多いです(もちろん映画なので誇張も多いと思います)。当時はインターネットなんてないので、情報収集にかけた労力は尋常でなかったことでしょう。

原作はジュラシック・パークの原作者としても有名なマイケル・クライトン。映画は1993年公開で、学生のときに劇場で見て衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。

スティーブン・スピルバーグ監督が映画公開前に情報を一切出していなかったこと、CGが初めて本格的に導入されたこと、原作の面白さなどが相まって驚異的な面白さでした。当時、興行収入1位になったことも納得。音響もよかったと記憶しています。


ナショジオが見た日本の100年は、近現代史に興味を持つきっかけとして最適な一冊

興味・関心があっちゃこっちゃに飛んでしまいましたが、書籍に目を通していると、自分が生まれる前から昨今の話に至るまで、100年の間に色々なことがあったのだなとしみじみ。

最後は東日本大震災の記事で締めくくられていますが、メルトダウンが起きてしまった福島の原発はいまだに事後処理にいつまでかかるのか目処が立っていません。原発を建てた関係者もこの地域の災害の歴史は知っていたことでしょう。1986年には、チェルノブイリ原発事故も発生しており、その恐ろしさも知っていたはずです。

ちなみにチェルノブイリ原発の事故を描いた「Chernobyl」は、いまもっとも見たいドラマです。Netflixに来てくれたら最高なんだけど…(トレイラーには、衝撃的なシーンも含まれるのでご注意ください。)

と、色々なことに思いを馳せながら近現代史を見ていくのは学びもあって、とても面白いので、ぜひお試しください。


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