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そうして今日もニートを愛する1日が終わる

好きな男がニートだ。

ニートであっても私は彼のことが好きなままだ。


昨年11月。チームから戦力外を告げられたという報道をみてから今日まで、長いようで短かったかもしれない。

高校卒業以来プロの世界で輝き続けていた彼は、きっと人生で初めて「明日どこで何をしているかわからない」という状況になったことだろう。


もちろん毎年動向を追っていたものの、どこか遠い世界に感じていたトライアウト。

昨年の12月に開催されたそのチャンスの舞台で、10年着たユニホームの最後の姿を見せてくれた。

晴天の神宮球場だった。
神宮球場で彼の出番を待つのがすごく好きだったこと、ブルペンとマウンドどちらもよく見える席を模索したこと、懐かしく思った。

おなじみの3塁側ブルペンからマウンドまで走る姿は私の青春だ


そんなトライアウトで「全力を尽くした」と言っていた彼のもとに、NPBからのオファーは来なかった。

トライアウト以来私は、くる日もくる日も彼の名前を検索して、朗報を待った。

同僚の引退だったり、一緒にトライアウトを受けた人の次の進路だったり。いろんな情報が飛び交う中で、彼の情報は一向に上がってこなかった。


彼の様子を知ることができたのは年が明けて、トライアウトから約1ヶ月がたった頃だった。

先輩の自主トレに参加しているという記事が流れた。

野球を続けていることを嬉しく感じるのもあり、進路が決まっていないのを悔しく思うのもあり…。そんな複雑な気持ちであった。

そこから彼は数日に一回くらい記事にしてもらったり、動画が流れたり、トレーナーに呟かれたり。


毎日頑張っている彼をみて、何も変わっていない彼の野球に元気をもらった。幸せになれた。
と同時に、すごく苦しい気持ちにもなった。

私は今、毎日働いている。
好きなことができていて、仲間にも比較的恵まれている。だけど、この先どうしていくか、みたいな悩みがあるのも事実だ。

今働いている私ですら将来のことに悩むのに、彼が悩まないわけがないだろう。

そんな状況にいるのに、笑顔で真剣に野球に取り組んでいる彼をみていると、私は心からあなたのことが好きで、応援している。と伝えたくなる。

「いつテストに呼ばれてもいいように準備する。」「1日でも長くプロにいる、と父親と約束した。」と語る彼の本当の気持ちはどこにあるのだろう。

わからない、ずっとわかることなんてないと思うけど、そう語ってくれるならその言葉を私は応援する。

どんな決断であろうと、あなたが納得したものだったら、あなたが決めたことなら、私たちファンは応援する。


今日もあなたはニートのままだった。

けど、野球に真剣に向き合う姿、誰よりも楽しそうに野球をする姿はプロで野球をしていた時と何ら変わらない。

彼も、私たちも、苦しいのはこれからさらに増えてくるかと思う。
毎日、明日は入団会見しているかも、と思えるくらいポジティブでもあるが、実際はこのままキャンプが始まり、このままシーズンが開幕する可能性だってある。

トライアウトで入団が決まった他の人の入団会見をみていた時だって同じように、彼じゃないんだな、なんて気持ちになってしまうこともあった。


それでも彼が好きだから、彼がどんな決断をしようと、彼の挑戦を、彼のこれからを心から応援する

笑顔で真剣に野球をして、野球で成長している彼が大好きだ。

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