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最後はハートだよ、熱意なんだよ。

小・中・高と吹奏楽、
そして大学では2年間ジャズ研究会に所属し、
音楽と共にあった私の学生生活。

少しでも上手くなりたくて
コンクールでいい成績を残したくて
何よりいい演奏をして見ている人に喜んで欲しくて
学校の顧問の先生、先輩・プロのプレイヤー
本当にいろんな人に
音楽を教えてもらった。

その14年もの音楽生活の中で、
一番印象に残ってるのが
プロトロンボーンプレーヤー片岡雄三さんから
教えてもらったことだ。

高校の時にアメリカのテーマパークで見た
ストリートライブ。
そこで演奏していたジャズベースに魅了され、
ジャズに憧れを持った。
それまでは吹奏楽をずっとやっていたが、
ジャンルを変えて
大学1年生の時にジャズ研究会に入部した。


私の所属していたジャズ研は、
ビックバンドジャズの王様、
カウントベイシー楽団の楽曲を
演奏するバンドだった。

エアコンもない部室で夏は汗だくになりながら、
冬は寒さに震えながらベースを弾いていた。

大学2年の時には、有難いことに
サークルの中でも上級者で
構成されるバンドに参加することになった。



当時、所属していたバンドでは
学生ビックバンドの甲子園ともいえる大会
「山野ビックバンドジャズコンテスト」に
出場するべく、予選大会に向けて
練習を重ねていた。

少しでも上手くなりたい、
何より予選を勝ち抜いて本戦にいきたいという思いで
プロトロンボーンプレイヤーの
片岡雄三さんにレッスンをお願いすることになった。

片岡さんは 
日本のジャズ界を牽引する
プロトロンボーンプレーヤー

スローテンポの曲では透き通るような音色で
アップテンポのナンバーでは
激しく情熱的な演奏で観客を魅了する。
まるで言葉を喋るように自在に
トロンボーンを奏でる。

最初に演奏を聴いたときに
鳥肌がたったことは今でも忘れない。

何度かレッスンをしていただき、
大会をいよいよ1週間後に控えた最後のレッスン。

私は、いつものレッスン通り
演奏のテクニックのアドバイスがもらえると
思っていた。

だが、その日片岡さんが
ひたすら口にしてた言葉はこれだった。

最後はね、(自分の胸のあたりに手を置きながら)
 ここだよ。ハート。熱意だよ。
 人を動かすのはここなんだよ。

片岡さんはそのあと

「今はどういうことかわからないかもしれない
 けど、いつかわかる日が来るから」

笑いながらそう言った。

正直、当時の私は
どういうことなのかわからなかった。
大会目前、少しでも点数をあげるために、
細かい修正やテクニック、スキル的なことを
教えて欲しいというのが当時の私の本心だった。

迎えた予選大会。結果は予選最下位。
何かが足りなかった。やるせない気持ちだった。

悔しくて、本選大会を見に行った。
そして上位校のバンドを見て、
当時の私に足りてなかったもの、
それは「ハート・熱意」だったということに
気づいた。

もちろん上位校のバンドの楽器演奏のスキルが
高いのは言うまでもないが、
それに加えて上位校の演奏はどれも本人たちの
「賞が取りたい」「お客様にいいものを届けたい」
そして何より
自分たちは音楽が好きで、愛してる!
という想いがこもっていて、熱気を帯びていた。

東京国際フォーラムで聞いていた私は
鳥肌が自然と立っていた。

そして気づいた。
あぁ私はそこまでの気持ちを持って
演奏できていなかったのだなぁ…と。

人の熱意が人の心を動かす。
片岡さんのいう、「最後はハートだよ、熱意だよ」という言葉が突き刺さった時だった。

社会人となり、さまざまな人の前で
プレゼンや発表をする機会をいただく。
その時に思い出すのが、この片岡さんの言葉だ。
たくさんの観客の心を動かす
「熱意を持って届ける」
それはどんな時も共通だと思う。

片岡さん、
大切なことを教えてくれてありがとうございます。

いつかまた再び会えたら、お礼を伝えられますように。

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