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僭越ながら選挙啓発 – weekly ivote #11

こんにちは、学生団体ivoteのtomohiroです。


はじめに

いつも同じことを言っている気がしますが、今回のweekly ivoteもうっかり長くなってしまいました。

専門家でもない、バラバラの専攻の大学生の集まりであるivoteは、学術的な話でもなく、社会問題の解説でもなく、社会での経験でもなく、否そんな話ができるはずもない中で、「選挙」についてずっと伝え続けて今や16年目の団体です。

そんな中にいる私の単なる独りごちではありますが、ご一読いただければ幸いです。そして何か共鳴するところがあればなお。

音羽中にて出前授業

今週、ivoteは文京区立音羽中学校に選挙出前授業で伺いました。
私たちの授業は模擬投票を中心に構成されているのですが、冒頭選挙の意義についてのお話(講話と呼んでいます。)をさせて頂いております。今回私は、そのパートを担当しました。

(ころで文京区の授業では生徒さんたちが開票作業に参加して、機械を操作したりと貴重な体験にすごく盛り上がります。選挙の裏側も知ることができ私たちも勉強になることが多いのですが、その話はまた機会を改めていつか。)

投票用紙を数える計数機

ivoteに所属して2年半ほどが経ち、この間出前授業で何度か講話を担当してきました。
政治って何か、選挙に行く意義って何か、なぜ自分はそれを人に伝えようと思ったのか、ivoteでの活動を通じてずっと逡巡してきました。新たな企画や授業の構成について考える折や、もちろんivoteメンバーでまさにそれらについて話し合う機会もありました。

それでもこの問いが自分の中でいちばん増幅されるのは講話を考えているときです。15分前後と決して長い時間でないにせよ、中高生たちを前に「選挙に行く意義」について直截言葉にすることができる機会というのは私にとってこのうえなく貴重な時間ですから。

さて、授業直後にweekly ivoteの当番がまわってきたのにかこつけて、講話をするなかでの独りごちで残りを埋めることにします。

選挙啓発をするということ

「私は選挙に行く」と「あなたも選挙に行こう」とでは動機が違うと思う。とりわけ私はivoteの看板を借りて学校の授業の場でそういう話をさせて頂いているのだから、その裏に少なくとも自分なりに筋の通った「何故」が必要だと思っている。

以前、「『選挙に行こう』では頷けない誰かへ」と題した記事で、自分にとっての選挙に行く理由を書いた。そこでは、投票へ誘引する具体的な何かを全くと言っていいほど書かなかった。ただ私なりの理由を綴ってあとは丸投げ。

もちろん人々が共有しなければならない投票理由なんてないのだから、人それぞれなのは当たり前といえばその通りだが、いざ出前授業の場で話をしようとなればそういうわけにもいかない。そういう場を借りるからには、何か社会について考える行動へと、投票へと導く道程を示したいものだ。

ところで、私たちの活動は平たく言えば、たぶん「選挙啓発」だ。こう呼ばれる活動の社会的な意義はといえば、それは民主主義の根幹である選挙の意義を広く伝えて、将来にわたって民主主義を廃れさせないで継承していくといったところだろうか。陳腐な言い回しだが、(民主主義)社会をよりよいものとするためとでもいおうか。

それは、民主化を勝ち取った先人の努力の恩恵にあずかりながら現代を生きる我々の使命であり責任であることはいわずもがな。それでは、投票へ人々をかき立てるための道標は、市民としての義務や責任だろうか。

私たちivoteの使命ははたしてそこに見いだされるのだろうか。

「あなたの」社会

ivoteの活動理念では、重ねて「あなた」という言葉を用いている。
私がivoteの活動の中で社会という語を使うとき、それは一人ひとりがそれぞれ中心にいる、視界も解像度も異なる社会だ。この世の森羅万象が80億とおりの社会に等しい見え方で等しい比重で存在していることはない。自分や自分の大切な人の身に降りかかることがきっと各々の関心事であり、それをいちばんに考えるものだろう。

(もっとも一見して自分に関係ないからと切り捨てるのをよしとしているわけでは決してない。接点を見過ごしてしまっていたり、その時点では知らなかったことが実は結びつけることだってある。ただ、知り、向き合う営みの繰り返しの中で解像度にばらつきがあるのは当然ということ。)

それを踏まえて先程の言い回しにあえてパラレルに表現するなら、「あなたがあなたの」社会をよりよいものにすること、を後押しするのがivoteの使命だ。

自分の暮らしがまず真ん中にあって、例えば友人の自分と異なる生い立ちを知れば、それについて解像度が高まるかもしれないし、別の地方で別の国で生まれ育った人と知り合えばその地のことが気にかかるかも。もし子供を持てば、自分が死んだ後の将来もぐっとじぶんごととして重みが増すかもしれない。
そうやって、自分の周りに様々な過程を通じて拡がっていく社会、「あなたの社会」の少し明るい未来を切り開いていくために何ができるだろう。その問いへのひとつの解として政治にアンテナをはって自分なりの意見を持つこと、それを或は選挙での一票として表明すること、を私たちは伝えたいのだ。

「社会のこと」として

音羽中の出前授業で用いたスライドの1枚

はじめて講話を担当した2年前もこの言葉を使った。

自分のこと、自分にとって鮮明に見えること。いいことも悪いことも、全部自分だけのおかげ/せいだろうか。むろん大なり小なりその一端は自分の中にあることが多いのかもしれないが、私たちは必ずどこかに属している以上、その属しているコミュニティの影響を受ける。

ものの好き嫌いには家族の影響が大きいかもしれないし、その好き嫌いのレベルにも国や自治体などスケールの大きなコミュニティがかかわっていることもある。先週のKeitoの話じゃないが、サッカー人気一つとっても国策に左右され得るのだから。

私が上京して東京の大学に進学できたのだって、自分が勉強しなければ、両親の理解がなければ叶わなかったし、それ以上に自分の生まれた街の場所や家庭の経済状況などの条件があってこそだ。そして、それらが条件として働くという事実こそ「社会のこと」だ。私にとって有利に働いたこれらの条件は、真逆の働きをして人一人の進路選択を変えるだけの力をもつ。

逆に言えば、私は私がたどってきた環境の中でいわゆる四年制大学に進学する以外の道を露ほども考えなかったし、それだけ視野を狭められていたのも自分のいたコミュニティゆえといえる部分も大いにあるだろう。

とにもかくにも、私たちの生活のいたるところに、それぞれが属するコミュニティの正負の(或はそのどちらともいえない)影響が浸透している。それは全く悪いことではないし、社会の中で生きている我々人間の生活としてはまっとうな状況だ。

でも「影響下にある」ことは自覚していたいと思う。そして民主主義社会である以上、その影響のしかたには私たち一人ひとりに関与する権利があるということも。

何かを諦めねばならなかったとき、どこかに追いやられてしまったとき、その状況をつくりだした「ルール」や「仕組み」、「常識」は、普遍的な真理だろうか。
社会の中で生きていく以上、ルールを無視して突っ走っていくやり方は褒められたものではないだろう。しかし、そのルールが誰かの決めたものである以上、私たちにもそのルールを変更したり、新たなルールを定めたりするプロセスに参加する権利があるはずだ。そういう選択肢が見えているのはきっと重要なことだ。

むすびに – 何を伝えられるか

「社会のこと」として。こういう言い方に、上に書いたようなもろもろをギュッと凝縮して委ねているのだが、これを伝えるのはなかなか骨の折れることだし、正直に言ってじゅうぶんに思いが伝わったと満足できたためしがないのが実情だ。

いずれにしても、私の講話はいつも概ねそこに向かっている。その先の行動としてひとつの重要な選択肢に選挙があることはもちろん十分な重みをもって伝えるようにしているが、たぶんそこは私にとって重要でない。まして今回のように中学生を相手にするのなら投票できるようになるまで数年の壁があるのだから、投票がゴールでは、有権者でない子どものその声に価値があることが埋没してしまう。

中高生にとって主権者教育の授業なんて退屈なものかもしれない。前に立って講釈を垂れられても面白みがないだろう。見知らぬ大学生の十数分の話で自分の考えがひっくり返るようなことはそうそう期待できない。

でも、静謐な水面に僅かにでも波紋を穿つことが出来れば十分に思う。だから、真剣に向き合っているんだということを態度として(それじたい言葉にすることもあるが)、伝えることが私たちのような団体の活動においては結局大切なんだと思う。

その人の明日の行動を変えられなくとも、どこかで何かに触れたときに、その人を自分を助ける行動へと突き動かす一助としてその人のどこかに潜んでいたら嬉しく思う。

そしてそういう視点を持って社会に生きる人が増えれば、それが私にとってよい社会になっていくと思う。そう思うから、私はこうして活動に身を投じている。


最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
さて、ここで綴った考えはまったく私個人のもので、ivoteという団体じたいは様々なきっかけから「若者と政治のキョリを近づける」という旗印に集った仲間で活動しています。

共感してくださった方、あるいはもっとこんなことを伝えたいなど思いを携えている方、そうでなくともこんな活動に興味がある方がいらっしゃったらHPやSNSからお気軽にお声がけください。
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2023年10月27日
tomohiro



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