ホラー好きには物足りない、怪獣好きにはもっと物足りない。--- 映画「NOPE」 IMAX版 レビュー ネタバレあり
なんとか時間をやりくりしてIMAX版を観ることができました。レイトショーだったのでIMAX特別料金を含んでも2000円。IMAXで2000円ならちょっとお得感がありますね。
で、すいません、今回は酷評です。
まずは公式サイトのあらすじを引用させていただきます。
私はアメリカの地理には詳しくないのですが、物語の舞台となる主人公OJの牧場は南カリフォルニアのロサンゼルス近郊にあるらしいのですが、「ロサンゼルス近郊」って、もうあんな陸の孤島みたいな荒野になってしまうんですね。この広々とした風景に包まれる感覚はIMAXならではの良さだなあと思います。
そこを加味したとしてもNOPE、思ったほど良くなかったです。ジョーダン・ピール監督、こんなモンスタームービーを撮りたい人だったんだ…うーん。
確かに終盤の手前あたりまでは悪くない、というかかなりいい線行ってたと思います。撮影現場での馬のエピソードや、チンパンジーの挿話の緊張感は強烈で、このテンションで話が進むのかと期待が膨らんだのですが、いよいよ怪物が登場するとなると一気に減速。役者さんたちが総じて良かったし、撮影も素晴らしかったのに、なんとも勿体無いです。
よく未知との遭遇やトレマーズとの類似性を語っておられる方もいらっしゃいますが、私がこの作品を観て思い出したのはエボリューション(2001)です。
あの作品もいい線まで行っていながら最後の最後にアイヴァン・ライトマンの悪ノリ(怪物の肛門にフケ取りシャンプー注入!)が悪い方に転んでしまったせいかあまり良い評価を受けていません。最終的な怪物のデザインの悪さとかもなんか被るんですよね。
そのNOPEの怪物ですが、まず馬や猿のほうが何倍も怖い。
興奮状態にある動物と相対する時には、決して目を合わせてはいけない。その前提に立っているからまっすぐこっちを見るチンパンジーに震え上がるわけですが、肝心の怪物からは視線というものがまるで感じられない。狙われてる恐怖が全然伝わってこないのが、作品のテーマから考えても致命的に駄目なんじゃないかと。
そして最後、妹の活躍で怪物をやっつけるわけですが、私はここは笑うべきところなのか見ていて迷ってしまったんですよね。そもそも「アレ」にそれほどの破壊力があるのかも疑問ですが、それ以前に「これ、こっち路線の映画だったの?」という混乱の中で物語が終わった感じです。うまく言えませんが、死霊のはらわたを見に行ったらXYZマーダーズだったみたいな感じです。
せめて「アレ」と怪物の視線が合う瞬間が明示的に示されればそれなりにカタルシスが生まれたと思うのですが、眼がどこにあるかわからない怪物ではそれも叶わず、モンスタームービーの決着の付け方としてはジョーズはおろかトレマーズにも遠く及びません。
やっぱり前2作のイメージが強すぎたんですかねえ。結局劇場で掛かった最終版のひとつ前の予告編(あのほとんど曲しか流れないやつ)が一番良かったと思います。あれで期待値上がっちゃったからなあ。
でもってNOPE、興行成績も苦戦しているようですね。スタンダード版は未見なのでなんとも言えませんが、SNSなどの評判でIMAXで見るべきという声が大きいのに全然IMAXの箱が抑えられていないのが原因の一つではないかと思います。今回たまたまIMAXのレイトショーに上手くスケジュールが合ったから見ることができましたが、IMAXで見れないなら配信まで待ってもいいかな、と私でさえ思ったくらいです。
今後レビューするときにはあんまりIMAX持ち上げないように気をつけないといけないのかもしれませんね。
ちなみにエボリューションですが、私は嫌いじゃありません。明るいデヴィッド・ドゥカヴニーが見れるしジュリアン・ムーアが可愛いし。あのラストが飲み込めるならいい映画だと思います。
久しぶりに見たくなっちゃったな。
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